Worldwide Developers Conference 2009(WWDC 2009)の基調講演で最大の目玉といえば、カメラ機能の強化と大幅なスピードアップを実現した新型iPhone「iPhone 3G S」だ。もっとも、このiPhone 3G S、フィル・シラー上級副社長による基調講演中も、スライドには表示されたものの、実機が出てくることはなかった。アメリカでは約10日後に発売されるというのに、本当にきちんと動いているのだろうか。
この疑問は、WWDC 2009基調講演の直後に行われたグループインタビューセッションで氷解した――筆者は幸運にもグループの中で、ただ1人、このiPhone 3G Sを音声操作する幸運に恵まれた。そのときの模様をお伝えしよう。なお、インタビュー中の写真撮影は一切禁止されていたので、写真は基調講演のものを使っている。
「iPhone 3G Sの音声コントロール機能は日本語にも対応しているのでしょうか?」――ほかの記者から飛んだ質問に、アップルの担当者は「Yes」と答えた。しかし、そうはいっても疑わしい。果たして本当に満足な速度で動くのだろうか。
筆者が「実際に動いているところを見せてもらっていいですか?」と聞いてみたところ、アップルのiPhone担当者は「実は音声コントロールでは、メニューなどの表示言語とは別に、好きな言語を選んで設定できるようになっています」と設定画面を見せてくれた。そして「私は日本語が話せないので」とiPhone 3G Sを手渡してくれた。
そこで筆者がホームボタンをしばらく長押ししていると、基調講演でも見た青バックの画面で、その後ろに「電話」など、音声操作できる命令が右から左に流れながら表示される。画面はMacに標準搭載のスクリーンセーバー「Word of the Day」に少し似ている。いくつか長い命令があったが、慌てていたので、すぐに目についたこともあり「電話!」と普通の大きさの声で言ってみた。
すると、ポポパっという音がした後、iPod shuffleでも聞き覚えのある声で「次の項目に一致します:愛 佐藤または……」と別の名前を読み上げようとしていたが、慌てていたので、即座に「愛 佐藤」とiPhoneに話し掛けてみると、またポポパっという軽快な音の後に「愛 佐藤。勤務先または携帯…」と返してきた。
部屋は静かで音声認識向きの環境だったとはいえ、あまりにもスムーズな反応に、部屋にいた日本人のプレスもアップルのスタッフも、思わず歓喜の声をあげてしまった。
どうやらiPhone 3G Sは、本体をポケットに入れたままでも(マイク付きヘッドフォンを装着していれば)電話をかけることができるようだ。
iPhoneは、実はマイク及びスピーカー品質が高いため、スピーカーフォンとしても活用しやすく、最大6人までの人とグループ通話ができるなど、電話としての基本機能もすばらしかったが、このiPhone 3G Sからはさらに便利になりそうだ。
ちなみに、この音声合成は、iPod shuffleなどのように、PC上で合成した音声を同期しているのではなく、iPhone 3G SのCPUがリアルタイムで処理して、合成している声らしい。この高速処理にはiPhone 3G Sの高速CPUが必要なことから、「音声コントロール」機能は、旧モデルのiPhone 3Gでは提供できなかったそうだ。
iPhone 3G Sの外観は、iPhone 3Gにそっくりだ。「外観上の違いは?」と聞いてみると「ただ1つだけある」と本体をひっくり返された。
iPhone 3Gの背面では、クロム仕上げのアップルロゴマークが鏡のような光沢を放ち、その下にある「iPhone」などの文字はグレーの目立たない色で描かれていたが、「iPhone 3G S」では、この製品名や容量、そのほかの文字表示も、ロゴと同じクロム仕上げになっているのだ。ちなみにこれは「iPhone 3G」でもそうだったが、「iPhone 3G S」といった正式な名称は書かれておらず、単にシリーズ名の「iPhone」とだけ書かれていた。
アップルは「iPhone 3G S」で本体の外観、厚み、重さなどをほとんど変えずに、これだけの高速化、高機能化そしてバッテリー駆動時間の延長を同時に実現したことになる。
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