7月22日に開幕した「ワイヤレスジャパン2009」――KDDIブースの一角では、6月25日にβ版を公開した拡張現実(AR)アプリ「実空間透視ケータイ」のコーナーが設けられ、サービスの説明やデモンストレーションが行われていた。
実空間透視ケータイは、端末のGPSや6軸センサーなどを活用し、ケータイをかざした先にあるスポット情報をディスプレイに表示するアプリ。ユーザーが投稿した写真や、交通機関・飲食店などのスポット情報が、ディスプレイ上の仮想空間にマッピングされ、ビルや壁の向こうに何があるのかを“透視”するような体験が楽しめる。
ARアプリとしては、「セカイカメラ」などカメラの映像にコンテンツを重ね合わせるものもあるが、実空間透視ケータイでは3Dグラフィックのマップに情報を表示する。3Dグラフィックではカメラ映像に比べ処理負担が軽減されるほか、「スポットまでの距離を把握しやすいメリットがある」(説明員)という。公開中のβ版は20フレーム/秒での描写を実現し、ユーザーの動きにも機敏に追従。“サクサク”した使い勝手を実現していた。
3Dマップには距離を示すマイルストーンが一定の間隔で設けられ、十字キーの操作によって何キロも先にある情報をクローズアップできる。距離が離れればその分、端末の向き(地磁気センサーの情報)のブレに画面が敏感に反応してしまうはずだが、「遠くのものを表示する場合には、わざとセンサーからの情報に“鈍く”反応するようにした」(説明員)ことで、その問題を解決した。実際に利用してみると、多少動きが不安定にはなるが、数キロ先の情報も端末の向きとリンクして表示されていた。
また、周辺地域のスポット情報の密度に応じて、表示範囲を自動で調節する工夫も盛り込まれている。例えば、都心などスポット情報の多い地域では数十〜数百メートル以内の情報を表示し、スポット情報のあまりない地域では数キロ先の情報も画面に表示する――こうした配慮で、なるべく画面が“うるさくもなく、さびしくもない”状態を作り出している。
au one ラボで公開されているβ版アプリの対応端末は、順次拡大が進んでいるものの、使い勝手のキモともいえる“ケータイをかざした方角と情報がリンクする”端末は、電子コンパスを搭載している「G'zOne W62CA」「G'zOne CA002」の2機種のみ。しかし、「現在、電子コンパスを搭載していなくても端末の向きが分かる技術を開発中。今年のCEATECで披露することを目標にしている」(説明員)とのことだ。また、同アプリはARのプラットフォームとしての提供を目指し、今後はAPIの開示も視野に開発を進めていく。
さらに、セカイカメラをはじめとするほかのARアプリとの間で、情報に相互性を持たせることも検討したいという。「まだまだARの広がりは小さい。ほかのアプリとも手をつないで、ARを広めていければ」(説明員)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.