第20回 “待受画面争奪戦”の行方コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく(1/3 ページ)

» 2009年08月21日 09時30分 公開
[トミヤマリュウタ,ITmedia]

 またまたずいぶん間隔が開いてしまいました。ご無沙汰しております。前回は、待受Flash制作に関する愚痴から始まり、iコンシェルau one ガジェットモバイルウィジェットといった待受画面上で展開されている各種サービスについて、「ユーザーの皆さんはどれくらい前向きなんだろう?」と疑問を投げかけてみました。ただ……。

 原稿をまとめたのは1月の末だったりしたのですが、大人の事情で掲載が4月20日にずれ込みまして、結果的に「iコンシェル」契約数、4月11日に100万件を突破というポジティブニュースの直後に、疑問を投げかけるという、なんとも空気の読めない状態になりました。いやはや、何が言いたいのかといえば単なる言い訳なんですけども。

 もう1つ言い訳を。今回、話がいつも以上にこんがらがります。その理由は、ドコモのiコンシェルやauのケータイパートナー(β版)といった“行動支援サービス”と、auのau oneガジェット、ソフトバンクのモバイルウィジェットといった“ウィジェット・ガジェットサービス”という異なるものを、「ケータイの待受画面上で展開されるサービス」として、ひとまとめにお話しするためです(なのでドコモのiウィジェットは別扱いにします)。

 「まとめきれるのか」という己の力量に対する疑惑を抱きつつも、そろそろこの“待受大洪水”“待受画面争奪ウォーズ”を自分なりに整理してみたいという思いが強くあり、力不足ですが書かせていただく次第です。というわけで本題に入ります。

とあるマンガの著者近況で見かけた“iコンシェル評”

 言い訳しておいてなんなのですが、このiコンシェル100万件突破というポジティブニュースを聞いてもなお、「で、みなさん使ってみて(契約してみて)どうですか?」という気持ちは残っています。

 ケータイはとことんパーソナルなツールであるというか、がちがちにプライベートなものであるという印象が、個人的には強いからです。ですから、そこにパブリックな情報をプッシュで表示するという、こうした待受上での情報表示サービスを広く一般に定着・普及させていくのは、とてつもなく難しいことなのではないかと思っていまして、やはりその反応が気になる次第。

 で、です。

 突然ですが、自分は「さよなら絶望先生」(久米田康治作/講談社刊)というマンガを読んでおります。このマンガの単行本には、巻末に“紙ブログ”という著者の近況報告コーナーがあるのですけど、今年の2月に発売された第16集には、なんとiコンシェルの感想が載っておりました。以下、「さよなら絶望先生 第16集」より引用します。

(前文略)携帯を買い換えましたところ、“iコンシェル”なる便利な機能がついていました。早朝から働いてくれる、優秀な執事です。

「おはようございますご主人様。○○線で人身事故でございます。」

毎日のように人身事故を報せてきてくれます。

まぁ通勤している方にとっては有益な情報なのかもしれませんが、電車に滅多に乗らない漫画家にとって人身事故ばかり知らされるのは、たまったもんじゃありません。ブラック執事です。こんなところからも不況の暗い影が見て取れます。(以下略)

Photo 遅延情報攻め(主に人身事故)のiコンシェル画面。冗談抜きで、「ぜ、絶望した!」です

 ……実は我が社の執事も、まったく同じ状況でして、主に中央線なのですが、毎日のように執事さんから人身事故の報告が届けられています。いや、毎日どころか、1日に2回とか3回とか……。

 久米田先生、ケータイ業界関係者以外の方のiコンシェル評として、大変参考になるご意見でした。


ケータイという1つの機械の中で“公私”が感覚的に使い分けられている?

 ケータイにもプライベートエリアとパブリックエリアのようなもの、いわば公と私があると、自分は考えています。普段強く意識しているわけではありませんけど、例えば自分にとって通話機能は、パブリックなものという印象を受けています。友人や家族との通話よりも、圧倒的に仕事での通話が多いからでしょう。発着信履歴はほぼ仕事の連絡で埋められていますから、たまに実家の番号が挟まっていたりすると、ちょっと違和感を覚えます。一方でメールはプライベートなものです。送受信履歴はほぼ友人(しかもごく親しい友人)との連絡で埋められています。

 知らず知らずではありますが、そうした公私の使い分けが、ケータイという1つの機械の中では、日々めまぐるしく行われているんじゃないでしょうか。ブックマークやアドレス帳のデータを、きっちりと公私でフォルダ整理しているという人には、なんとなく理解してもらえるものと思います。

 そう考えたとき、第19回でも書きましたが、待受画面というのは、皆さんにとってプライベートエリアでしょうか、パブリックエリアでしょうか? 僕にとって、待受画面はプライベートエリアに属しています。iチャネル、EZニュースフラッシュ、S!速報ニュースのテロップが流れて、パブリックな情報も表示されているとはいえ、それでもなお、待受画面はプライベートエリアだと感じているのです。そこに表示されている主たるものは、個人的な思い入れたっぷりの写真であったり壁紙だったりするのが普通……という感覚値です。

 そのプライベートエリアで展開されている、iコンシェルやau oneガジェット、モバイルウィジェットといった「待受系サービス」(とここではくくります)は、プライベートエリアに私的な情報だけでなく、公的な情報も送り込んでいますよね。

PhotoPhotoPhoto 左からドコモのiコンシェル(P-01A)、auのau one ガジェット(W63CA)、ソフトバンクのモバイルウィジェット(931SH)の画面。ユーザーインタフェースは三者三様です

 例えば、先ほどご紹介したiコンシェルによる電車の遅延情報。愛する我が子の写真を待受にしている方にとって、「JR中央線快速電車 一部運休」というパブリックな情報が、その写真に覆いかぶさるような形で表示されるのって、違和感ありませんか? しかも運休の原因が人身事故であったりしたら……。

 いや、違和感がなければOKなんです。あったら怖いなという自分の懸念が、思い過ごしであればいい。でももし懸念が当たっていて、受信メールボックスに紛れ込んだ迷惑メールのような“異物感”をそこに感じていたら──。これは困った話になるなぁと思うのです。

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