かつて、スマートフォンというと、選択肢がWindows Mobile搭載機しかなく、一部の先進的なユーザーや、自由にカスタマイズできる点に魅力を感じたユーザーが好んで使っていたものの、なかなか広く一般に普及することはなかった。
そんな日本市場にも、アップルの「iPhone 3G」そして「iPhone 3GS」が投入され、好調な販売を続けているほか、“Googleケータイ”とも呼ばれるAndroid OS搭載機「HT-03A」などが登場したこともあって、スマートフォン市場はにわかに活況を呈しつつある。最近では、もっぱらiPhoneとAndroidが話題に上ることが多いが、そんな国内のスマートフォン市場において、もう1つ忘れてはならない存在が、Research In Motionの「BlackBerry」だ。
欧米では、多くのビジネスパーソンがBlackBerryを活用してメールの送受信などをしているシーンをよく見かける。しかし日本では、どうも“ビジネス用”というイメージが強いせいか、これをプライベートでも積極的に活用している、というユーザーを見かける機会は少ないように思う。
そんなBlackBerryだが、改めてその機能に注目してみると、実はとても使い勝手のいいスマートフォンであることが分かる。簡単な設定でPC向けのメールがプッシュ配信で受信できる点などは、個人のユーザーでも十分にその恩恵にあずかれる。秀逸なTwitterクライアントアプリケーションなども提供されており、インターネットを活用しているユーザーなら、1台目の端末としても使えるほどだ。
BlackBerryは、国内ではNTTドコモがFOMAネットワークでサービスを提供している。サービス開始は2006年9月にさかのぼり、当初は法人向け端末として「BlackBerry 8707h」が提供された。BlackBerryはもともと文字メッセージを送受信できる双方向ポケベルのようなサービスから始まったが、現在は音声通話も可能になり、その位置づけはスマートフォンと同等となっている。海外では3000万以上のユーザーが利用しており、最近では米国のバラク・オバマ大統領が愛用していることでも脚光を浴びた。
BlackBerryのサービス形態は一般の音声端末よりはiPhoneに近い。原則として端末の提供元でもあるカナダのRIM(Reserch In Motion)がほとんどのサービスを提供している。このため渡航先でもRIMと提携しているローミング事業者を利用すると、国内とほとんど変わらないネットワークサービスを利用可能であり、携帯電話ネットワークではなくWi-Fi(無線LAN)接続でも、ほとんどのサービスを利用できる。
また多くのサービスがRIMのサーバを経由し、全てのデータ通信をRIMのサーバ経由とする事も可能なことから、企業はRIMのサーバとVPNなどを利用して直接接続することで、高いセキュリティレベルでモバイルシステムを運用できる。海外の企業においてBlackBerryが支持されているのにはこうした理由があるわけだ。
だが最新のBlackBerry端末は、個人利用のスマートフォンとしても十分魅力的だ。ドコモが2009年2月に発売した「BlackBerry Bold」(海外ではBlackBerry Bold 9000と呼ばれる)は、QWERTキーボードと、iPhoneと同じ解像度であるハーフVGA(480×320ピクセル)の液晶ディスプレイを搭載。やや幅はあるものの、厚さ15ミリのスマートなボディは従量も約137グラムに抑えた。
一方でBlackBerry 8707hに対してディスプレイを高解像度化し、マルチメディア機能を一気に拡張。IEEE802.11a/b/g対応の無線LAN、Bluetooth、GPS、2Mピクセルカメラも内蔵し、他のスマートフォンと比較しても見劣りしない機能を備えた。また12月3日には、Blackのみだったボディカラーに新色のWhiteが加わり、個人利用にますます魅力が増した。
BlackBerry Boldを語る上で欠かせないのは、特徴的なメール機能とQWERTYキーボードのコンビネーションだ。メールは機能だけを見ると、POP3/IMAPに対応し、フォルダ機能も備えるものの、フォルダの自動仕分け機能がないなど、一般的な携帯電話とは少し勝手が異なる部分もある。しかしその使い勝手の良さは他に類を見ない部分も多い。
使い勝手がいい理由の1つとして、まずBlackBerryのメールはプッシュメールであることが挙げられる。国内ではサービス契約者に提供される「@docomo.blackberry.com」に加え、Gmailがリアルタイムプッシュ受信できる。ほかのメールアカウントを利用する場合も、長くて数分程度のタイムラグでメールを受信する。これはRIMのサーバが設定したメールアカウントの新着メールを監視し、新着メールがあるときだけ端末にメールを配信する仕組みなので、無駄なパケット通信も発生しない。これは、通信料金が発生しないだけでなく、バッテリーを無駄にしないというメリットにもつながっている。
メールの一覧は、アカウントごとに表示することも、設定したすべてのメールアカウントのメールを一括表示することもできる。複数のメールアカウントを設定している場合でも、一括で一覧できれば当然見逃しを防ぎやすく、余分な操作も減らせる。モバイルで利用するメール端末として実は重要なポイントだ。
QWERTYキーを徹底活用できる操作性も優秀だ。トラックボールで画面を自在にスクロールできることはもちろん、直感的な操作ができるショートカットで自在にメールを閲覧出来る。その一部を列挙すると以下のようになる。
キー | 割り当てられた機能 |
---|---|
Space | ページスクロール |
Shift+Space | 逆ページスクロール |
U(Unread) | 次の未読(最初はもっとも古い未読) |
R(Replay) | 返信 |
F(Forword) | 転送 |
J(Join) | スレッド内次メッセージ |
K | スレッド内前メッセージ |
alt+U | 未読/既読切替 |
キー | 割り当てられた機能 |
---|---|
N(Next) | 翌日の先頭 |
P(Previous) | 前日の先頭 |
T(Top) | 一覧の先頭 |
B(Bottom) | 一覧の末尾 |
キー | 割り当てられた機能 |
---|---|
N(Next) | 次のメール |
P(Previous) | 前のメール |
T(Top) | 先頭行 |
B(Bottom) | 最終行 |
ショートカットは意味のある文字に割り当てられており、案外覚えやすい。一覧表示時には、日付単位での移動ができるので、例えばどのメールアカウントで受信したのか忘れたけど、一昨日届いたメールでまだ返信していない用件があったはず――、なんて場合にも、すべてのメールの一覧と組合せるとさっと探し出す事ができる。もちろん本文を含む全文検索も可能な強力な検索機能も備えており、検索結果が一覧表示され、見たいメールだけ参照できる点も便利だ。スレッド操作に対応していて、メールのやりとりも参照できるし、一覧からはワンタッチで送信元やタイトルでの検索もできる。先に自動フォルダ分け機能がないことに触れたが、この検索機能があるので、むしろ必要がないといった方が正しいと思える。
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