ラジオで放送されている番組が、PCでも同じように聴取できるIPサイマルラジオの実用化試験配信「radiko」は、放送エリア内の聴取環境がよくない場所でも雑音のないクリアな番組が聴けることや、PCからWebサイトを開くだけでかんたんに聴取できることから人気を博している。ラジオと連携してリスナー同士で交流できるようなサービスが生まれたりと、FMやAMの電波だけで放送されていたラジオとは異なる広がりを見せつつある。
そんなradikoに着目し、個人の開発者が「iRadiko」「ラジ朗」「さいまるお」といった、iPhoneでradikoを聴取できるアプリを開発した。しかしradiko側で、4月7日16時からシステムメンテナンスを実施し、「ストリーミングのセキュリティを強化」した結果iRadikoはradikoにアクセスができなくなった。App Store上で検索しても見つからなくなっており、作者が配信を停止したものと思われる。ラジ朗やさいまるおは、本稿執筆時点では東京都内で聴取できているが、聴取できなくなっているケースもあるようだ(その後さいまるおも聴取できなくなり、App Storeでの配信も中止された。ラジ朗は再生できるが3〜4分程度経つと切断される)。
IPサイマルラジオ協議会は、試験配信は都市部を中心とした難聴取の解消を目的としたものであること、実質的な放送エリアに向けた試験配信という枠組みで権利者、広告主など関係者の理解を得ていることなどを理由に、“セキュリティ強化”を行ったという。あくまでも「ラジオの楽しみを広げるためのさまざまなアプリを排除することが目的ではなく、エリア外聴取環境の提供、収益を得るものなどradikoの存続を危うくするサービスに対する措置」だとしている。また協議会は「エリア外の聴取を可能にするサービスが一般化しますと、実用化が困難になる可能性もある」と理解を求めている。
高まりかけたラジオへの関心、そして今までラジオを聞いていなかった人たちにも広まり始めたラジオを楽しむ文化の萌芽が、権利の壁に阻まれ、摘まれてしまうことになったらとても残念なことだ。radikoのWebサイトで公開されているQ&Aでは、iPhoneやAndroidスマートフォンなどでradikoを聴取できるアプリの開発も検討中としており、1日も早い公式アプリの提供が望まれる。
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