3キャリア対応で“誰でも楽しめる携帯ARアプリ”――「AR3DPlayer」登場

» 2010年08月27日 11時35分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 国内3キャリアのケータイで手軽にAR(拡張現実)を楽しめる環境が、ARアプリ「AR3DPlayer」の登場で近く整いそうだ。8月26日、同アプリを開発したデザイン百貨店と、ARを使ってさまざまなクリエイティブを発表してきたAR三兄弟が発表会を開催。アプリの特徴や今後のロードマップを説明した。

photophotophoto 「AR3DPlayer」の画面。マーカーにカメラをかざすと、派手な演出とともに孫悟空のキャラクターが出現。筋斗雲に乗ったりと、いろいろな動きを見せた

キャリアの垣根を越えた、モバイルARブラウザの到来

 ARとは、ITを駆使して現実環境に情報を重ね合わせ、人間の認識を拡張する技術のこと。二次元マーカーにカメラをかざすと、3Dコンテンツなどがあたかもその場に存在するように表示される“マーカー型AR”や、モバイル端末のGPSや電子コンパスを活用して位置情報付きのコンテンツを空間に配置する“位置情報型AR”など、さまざまなARサービスが登場している。

http://ar3d.jp

 従来のARサービスは、Webカメラを使ったPC向け、あるいはスマートフォン向けがほとんどだった。しかし、今回発表されたAR3DPlayerは、国内3キャリアの携帯電話で利用できるのが大きな特徴。すでにau向けβ版アプリが先行公開されており、専用ケータイサイト(http://ar3d.jp)からダウンロードできる。NTTドコモ、ソフトバンクモバイル向けのアプリも順次リリースする予定だ。アプリの利用料は無料。


photo AR三兄弟の長男こと川田十夢氏

 デザイン百貨店によれば、2008年3月〜2010年8月上旬に発売された携帯電話のうち、ドコモ端末の84.7%、au端末の93.8%、ソフトバンク端末の92.2%で、アプリを利用できるという。「キャリアを越えて使える、共通のARブラウジングソフト」――AR三兄弟の川田十夢氏は同アプリをこう表現する。

 AR3DPlayerは、アニメのキャラクターをはじめ、さまざまな3DのARコンテンツをダウンロードして、専用のARマーカー上に表示させるサービスだ。au向けβ版では、カメラのライブビューに3Dキャラクターが登場し、マーカー上でキャラクターが生き生きと動く様子がデモンストレーションで確認できた。ドコモとソフトバンクの端末では、現状はカメラのライブビューを使ったAR表現ができず、当初は写真撮影による静止画のAR表現になるというが、将来的にはライブビューのARにも対応する予定。

 1分程度の音声データも組み込むことができ、キャラクターをしゃべらせたり、音楽を鳴らしたりもできる。コンテンツには9種類の動きを割り当てることが可能で、ダイヤルキーの1〜9を押すと、異なるアクションが発動する。例えば魔法陣のコンテンツなら、あるキーを押せば炎の魔法の、ほかのキーを押せば水の魔法のアクションが楽しめるといった具合だ。


photophotophoto 魔法陣のARでは、さまざまなエフェクトの魔法がマーカーから飛び出し、面白い。例えばトレーディングカードにこうした機能が付くと楽しそうだ
photo コンテンツを追加して、自分のすきなキャラクターなどをARとしてコレクションできる。どうやら、「ブラック★ロックシューター」のARも用意されているようだ

 マーカー型ARの技術はARToolKitをベースに開発したもの。ケータイのCPUでも軽快に動くように開発されており、Snapdragon搭載機の「REGZA Phone T004」では、18fpsの描写を実現している。動作周波数の低いCPUでも、描写の滑らかさはSnapdragon搭載機に比べ落ちるものの、ライブビューのARが体験できるという。

 アプリには事前に数種類の3Dコンテンツが入っているほか、ケータイサイトからコンテンツを追加ダウンロードできる。一度ダウンロードしたコンテンツは通信エリア外でも閲覧可能。気に入ったARコンテンツをコレクションし、好きな時にARマーカー上に表示して楽しめる。


photo

 ARコンテンツが表示された画面を画像として保存できるほか、Twitterやmixiなど、各種ソーシャルサービスに写真と記事を投稿する機能も備えている。現在のβ版では対応していないが、製品版では複数のソーシャルサービスを選択して、同時に記事を投稿することも可能にするという。

アニメや雑誌のプロモーションに

 生まれたばかりのAR3DPlayerが今後どのように利用されていくのかはまだ未知の部分も多いが、ARコンテンツをコレクションして楽しむというだけでなく、ゲームに利用したり、家具や雑貨のシミュレーションに活用したりと、色々な利用法がありそうだ。3Dコンテンツは、営業利用でなければ誰でも無料で同サービス向けに公開できるようになる予定で、「クリエイターのギャラリーにもなる」と川田氏は期待する。

 デザイン百貨店では、雑誌や映画、アニメなど、さまざまな商品のプロモーションにAR3DPlayerを活用してもらい、収益を得る考え。配信期間や表示期間に合わせて料金プランを用意しており、1カ月間の配信/2カ月間の表示期間の場合を例にすると、費用は38万円となる。すでにいくつかのプロモーション案件が決定しており、有名キャラクターとのコラボレーションがあるという。

photophoto デザイン百貨店が想定する用途(写真=左)と、利用の遷移(写真=右)
photo 公式コンテンツ配信の料金プラン
photo AR3DPlayerのマーカー

 AR3DPlayerのマーカーの中にはQRコードが含まれており、QRコードを介してユーザーにプロモーションのコンテンツをスムーズにダウンロードさせられる。雑誌や商品に印刷されたマーカーをQRコードとしてケータイで読み込めば、専用ケータイサイトに遷移し、そこからプロモーション用のARコンテンツをダウンロードし、ARが楽しめるというわけだ。

 ソーシャルサービスとの連携機能を生かして、プロモーションの内容がソーシャルに波及する工夫も成されている。ソーシャルサービスにユーザーがARコンテンツの写真などを投稿する際には、ARコンテンツの提供者が設定したURLが一緒に投稿され、ユーザーの友人やフォロワーにも、商品サイトなどへの誘導をかけられる。

 デザイン百貨店ではこうした商用コンテンツ配信の販売代理店を募集中しており、現状ではAR三兄弟と電通テックが代理店を務めているという。

スマートフォン、PCにも順次対応し、ARの一大プラットフォーム構築を目指す

 スマートフォンを使ったサービスが話題にのぼりがちなAR業界で、3キャリアのケータイに対応したARアプリが登場したことは、大きなトピックと言える。さらにAR3DPlayerはケータイにとどまらず、12月にはiPhoneやAndroid、2011年3月にはPCへの対応も進めていく方針で、1コンテンツをマルチデバイスで閲覧できるARの一大プラットフォームを構築する考えだ。

 PC向けサービスでは、ARコンテンツと一緒に撮影した静止画写真に写りこむARコンテンツが、元の動くARコンテンツとして閲覧できたりと、PCならではの使い勝手が提供される模様。さらに、コンテンツに関するソーシャルサービス上でのユーザーの反応などが見られたりもするようだ。

 そのほかにも、2011年2月には動画コンテンツのAR表示に対応し、4月には端末のGPSを利用した位置情報型の機能を追加する予定もある。6月にはAPIを使ってコンテンツを外部に公開することも予定されている。

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