春モデル発表――ドコモとKDDIで対照的なスマホ/タブレット戦略石野純也のMobile Eye(1月21日〜2月1日)(2/3 ページ)

» 2013年02月02日 02時20分 公開
[石野純也,ITmedia]

auが2013年に目指す方向を予感させる「INFOBAR A02」

 春モデルとして8機種のスマートフォンを取りそろえたドコモとは対照的だったのが、KDDIだ。同社はINFOBARシリーズの最新モデルにあたる「INFOBAR A02」を1月24日に発表。1機種だけの発表となったが、「今年目指したい雰囲気を、ティザーと言う形で感じていただければ」(KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏)というように、auの目指す世界観を詰め込んだ端末に仕上がっている。

photophotophoto UIを強化したINFOBAR A02を発表したKDDI。クアッドコアCPU搭載で、RAMも1Gバイトと、INFOBARの中では過去最高のスペックを誇る。カラーはNISHIKIGOI、ICE GRAY、AOAOの3色。会見には代表取締役社長の田中孝司氏も登壇し、INFOBAR A02で目指した世界観を語った

 スマートフォンとして生まれ変わったINFOBARは、縦スクロールで、大きなタイルを美しく配置した「iida UI」が特徴だった。このiida UIは、初代「INFOBAR A01」のほか、テンキーを搭載した「INFOBAR C01」にも搭載されている。新たに発表したA02に搭載されたiida UIは、基本の縦スクロールやタイルは踏襲しつつ、スクロール時の動きの小気味よさや、ウィジェットとして使える「パネル」の機能が大幅に進化した。A01、C01のときはシャープが開発していたINFOBARだが、A02を新たに担当したのはHTCだ。

photophoto ゼリーのようにポヨンと動くUIで、気持ちよく操作できる。写真のパネルがオンラインストレージに対応するなど、クラウドとの親和性も高くなった
photo デザインを担当した深澤直人氏(左)。UIは、中村勇吾氏(右)によるものだ。深澤氏は、INFOBARをハードとソフトを一体となって開発した「ようかん」に例える

 UI(ユーザーインタフェース)は、A01と同じ中村勇吾氏が手掛けている。ゼリーのようにプルプルとした動きは、「表面的なテクスチャーではなく、背後にあるアルゴリズムで質感や違ったたたずまいを持たせようとした」(同)という意図に基づいて開発された。以前のINFOBARよりも、ハードとソフトの一体化を意識したといい、INFOBARシリーズを代々手がけてきた深澤直人氏によると、「中身の味や感触まで、すべて一体にデザインしようと、中村勇吾さんと一緒に、力強くパートナーを組んでやろうとした」という。

 田中氏が「今はクラウドの時代。情報との向かい合い方までデザインしなければいけないのではないか」と語ったように、A02はiida UIを構成する重要な要素だったパネル(ウィジェット)の機能も強化されている。例えば、Facebookパネルは、単に通知の件数が分かるだけでなく、直接写真を表示したり、「いいね!」をつけたりといった、能動的な操作が可能になっている。また、「クラウドに触っている感覚があるのではないか」(同)というように、写真パネルも「au Cloud」や「Picasa」などのオンラインストレージに対応した。

 冒頭で、ドコモと対照的と指摘したように、当面、KDDIはこの1機種に、昨年発売した冬モデルで春商戦を戦っていく。田中氏も「本当に感覚が研ぎ澄まされた人のために、次のコンセプトを提案する時期なんじゃないかという思いがあり、1機種で発表させていただいた。現時点では、去年の10機種と一緒に、この春をやっていきたい」と述べている。ドコモが行う端末の選択と集中を、先取りしているとも言えるだろう。もちろん、この背景には、ドコモにはないiPhoneを取り扱っているという事情もありそうだ。

 2012年9月に発売したiPhone 5は、「発売当初は我々の割合で6割近くを占めていた」(田中氏)とのことで、KDDIが販売する端末の過半数を超えていた。発売から時間が経ち、「今、半分は行っていない」(同)と徐々に比率は下がっているが、それでもKDDIの取り扱う端末の中では、最も台数が多いことに変わりはない。特に日本は「海外と比べてもiOS、Apple製品をお客さんが好きな国。ほかの国と比べても多いのではないか」(同)という市場のため、ここにAndroid端末を大量投入するのは得策ではない。

 とは言え、iPhoneの比率が50%以下ということは、Androidに手を抜くわけにはいかない。同社の基盤バンドである800MHz帯、1.5GHz帯のLTEに対応しているのがAndroidだけという事情を考えても、魅力的な端末は不可欠だ。HTC J butterflyやINFOBAR A02のように、同じHTCが開発した端末でも、それぞれの特色をはっきり出す必要がある。思惑通りにはいかないところもあり、冬モデルの売れ行きを見ても波はあるが、少なくともドコモよりは厳選されたラインアップと言えるだろう。

 もっとも、厳選されているとは言え、やはりドコモのラインアップと比べると、Androidのバリエーションでは少々見劣りすることも事実。INFOBARは目玉だが、もう1、2機種、グローバルでもトレンドになりつつあるフルHDディスプレイ搭載端末があれば、より「選べる自由」というキーワードにも説得力が出ただろう。一方で、KDDIにはまだ隠し玉が残されているのかもしれない。田中氏も「春にはいろいろなものを発表したい。スマートパスポート構想の第1弾を去年1月に発表したが、それ(の新しい展開)とあわせて、今年の取り組みを見せることもやっていきたい」と述べており、“遅めの春”に何らかの端末やサービスが登場する可能性を示唆している。スマートパスポート構想の次にも、期待したいところだ。

photophoto 端末とセットにした強制がないわけではないが、auスマートパスは、新規契約者の83%が加入するサービスに成長した。次の展開にも注目が集まる

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