ドコモとKDDIが対照的だったのは、タブレットやマルチデバイスへの取り組みについても当てはまる。
KDDIが推し進めてきた「3M戦略」には、複数の端末から同じコンテンツにアクセスできる、マルチデバイスという考え方が含まれている。ただ、以前からこの連載でも指摘しているように、やはり鍵となるタブレットに対する取り組みが一歩遅れた感は否めない。同社はiPad、iPad miniの取り扱いを開始したが、月額590円で動画が見放題になる「ビデオパス」には非対応。「そういうことも考えている。こうご期待」と田中氏は言うが、時期は未定だ。
アプリ取り放題が売りの「auスマートパス」も、残念ながらWebコンテンツのみが利用できる状態で、無料キャンペーンが続いている。キャリアのコントロールが効くAndroidではサービスを利用できるが、最新モデルのラインアップが「AQUOS PAD SHT21」のみで、特にドコモと比べると手薄な印象を受ける。
対するドコモは、あえてWi-Fiのみのタブレットに自社ブランドを冠し、サービスの拡大を目指す。Huawei製の「dtab」がそれで、既存のspモードユーザーが「dビデオ」に6カ月間加入するといった条件はあるが、価格はわずか9975円。秋葉原などで売られている“中華タブレット”も真っ青な値付けだが、同じ中国メーカーとはいえ、Huaweiが開発しているだけに、機能もそれなりに充実している。ディスプレイは10.1インチで1280×800ピクセル、チップセットにはHuaweiの関連会社であるHiSilicon製「K3V2T(クアッドコア、1.2GHz)」が採用されている。
OSはAndroid 4.1だが、UIをカスタマイズし、ドコモの各サービスへの導線を強化した。トップ画面には「dマーケット」の最新情報が並び、これらは自動で更新される。また、画面右には「dマーケット」「dショッピング」「dブック」「dビデオ」などにアクセスするためのメニューが並べられている。もちろん、「各サービスに追加の料金は不要で、Wi-Fi専用なので毎月の通信料も必要ない」(加藤氏)と、すでにドコモのスマートフォンを持っているユーザーなら、非常にリーズナブルだ。これに付随して、家庭用のWi-Fiルーターの無料レンタルも開始する。
通信料収入を得られないdtabだが、あえてドコモが発売するのは、「dマーケットを活性化していければ」(加藤氏)という狙いがあるからだ。会見では、加藤氏がAmazonのKindle Fireと「狙いは同じ」と述べていたが、本来上位レイヤーであるコンテンツを展開するAmazonやGoogleが、あえて専用の端末を出してまでプロモーションするのに似た取り組みと言える。端末購入の割引にも使われているため、多少は割り引いて考えなければいけないが、dマーケットは特にdビデオが好調で、契約者数は1月14日に時点で370万を超えた。楽天やAmazonなどと比べるとまだまだ規模は小さいが、dショッピングもすでに150万のユーザーが訪問している。こうしたサービスを、家庭で気軽に使いたいというニーズには、十分応えられるはずだ。
一方で、そうした目的があるならば、dtabのキャンペーン価格をドコモのspモード利用者に限定しなくてもよかった気がする。dマーケット用のIDやパスワードも、ドコモ回線がないと取得できないため、dtab単体では本来の目的は達成できない。サービスのマルチデバイス化は一歩進んだが、このレイヤーをより強化していくなら、どこかのタイミングで回線とのひもづけはやめ、オープンなサービスを志向するべきだろう。
とは言え、純粋に端末だけで見れば、10.1インチのクアッドコア搭載タブレットが9975円で買えるというのは、非常に魅力的だ。UIのカスタマイズはされているが、Google Playには対応しており、アプリのインストールもできる。既存のドコモユーザーがタブレットを購入する際には、ぜひ選択肢に加えておきたい端末だ。
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