子どものスマートフォン化の実態(1)小寺信良「ケータイの力学」

» 2013年05月07日 13時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 ちょうど昨年の今ごろ、子どもが持つケータイがスマホ化し始めているという指摘をしたわけだが、あれからほぼ1年が経過し、だんだんその実態が見え始めてきた。

 今回は、今年3月に公開された、内閣府の「平成24年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」を元に、子どもたちのネット利用の変化を探っていきたいと思う。

 本調査の実施は2012年11月なので、まだこの春からの変化は捉えられないが、少なくとも昨年春からの状況は掴めるはずである。

 まず青少年の携帯電話所有率およびその内訳だが、小中高とも平成23年度は所持率に減少傾向が見られたものの、24年度はまた上向いている。特に小学生の伸びが顕著で、間もなく3割に到達する勢いだ。しかもこれまでは確認できなかったスマートフォンの所有が初めて現われた。

photo 青少年の携帯電話の所有率及び所有機種

 スマートフォンに注目すれば、中学で約25%、高校に至っては約56%という数値は、予想以上に高い。2012年7月に、デジタルアーツが携帯所持率を調査しているが、その時は10歳から18歳までの子どもで30.6%がスマートフォンを所持という結果だった。学年別に内訳をとると、こういうバランスであるということだろう。

 青少年のネット利用の内訳を、携帯電話とPCで比較してみる。これから分かるのは、PCの存在意義とはネットを使うことであり、これは年齢とあまり関係がないことが分かる。しかしメールやSNSといったコミュニケーションは、携帯端末が主体となっている。

photo 青少年のネット利用状況、携帯電話とPC

 PCの利用で顕著なのは「調べもの」で、PCでのネットを利用する主たる目的は、これである。一方高校生はスマホ率が高いこともあって、携帯での調べもの率が高まっている。調べものの内訳は資料にないが、主にテキストコンテンツに触れているという理解でいいだろう。

スマートデバイスの所有とネット利用

 ネットに繋がる端末はスマホに限らず、ゲーム機やタブレット製品もある。今回内閣府の調査としては初めて、これらの所持率を調査している。

 資料の所持率は、ゲーム機とタブレットの足し算となっているが、まだタブレットの所有は10%強といったところで、ゲーム機の数とは比較にならない。

 また学年が上がるにつれて、所有はしているが利用していないという傾向が強くなる。

photo 青少年のゲーム機・タブレット型携帯端末の所有留津及び所有機種

 さらにネット利用の内訳を見てみると、ゲーム機では学年が上がるに従って綺麗な階段状でオンライン化の傾向が見られる。国内で主流なゲーム機は、保護者によるネット利用の管理機能が標準で付けられているため、親がきちんと年齢に応じたアクセス管理をしていると言えるだろう。

photo 青少年のゲーム機・タブレット型携帯端末のネット利用

 一方タブレットでは、中高生のネット利用が高く、特に中学生は携帯で行けない代わりにタブレットでネットに行ってるのではないかと思われる節もある。ただこの調査ではタブレット利用者が少ないため、これが一般的な傾向とは言い切れない。

 タブレットに関しては、今のところ教育機関も保護者も、盲点になってきている可能性がある。7インチタブレットが急速に低価格化しており、Googleの「Nexus 7」が1万9800円、Amazonの「Kindle Fire HD」が1万5800円、トイザらスの「MEEP!」が1万4999円で販売されている。また最近トイザらスでは、Kindle Fire HDの店頭販売も始めた。Androidタブレットが“おもちゃ”として買える時代が来ている。

 子どもの野放しなネット利用が懸念されるところではあるが、今後は問題点を理解している保護者が意識的に持たせるケース、あるいは教育機関が教材として導入するケースも増加するものと思われる。一刻も早く、教育が所持実態に追いついていくことを期待したい。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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