“泣ける恋愛”から“ファンタジー”へ――スマホ時代のケータイ小説事情(2/2 ページ)

» 2013年06月27日 11時15分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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ホラー/ファンタジー系作品が増加するなど新しい流れも

photo 第6回iらんど大賞で最優秀賞を獲得した「出会い系サイトの彼女」(著:かよちゃん、アスキー・メディアワークス刊)は、恋愛をベースとしたホラー系の作品

 女性にとって興味の高い恋愛ストーリーが、ケータイ小説の王道であることに変わりはないが、一方でそれとは異なるジャンルの小説が人気を博す傾向も見られる。

 1つはホラー・サスペンス系のジャンルだ。こうしたジャンルは恋愛ストーリーの延長線上に展開されることも多く、比較的古い時期から人気作が生まれている。例えばE★エブリスタで執筆された「王様ゲーム」シリーズは、コミック化や映画化など幅広くメディアミックスされて話題となった。また今年3月に発表された「第6回魔法のiらんど大賞」では、ホラー系の「出会い系サイトの彼女。」という作品が最優秀賞を獲得している。

 そしてもう1つ、最近の新しい潮流となっているのが“ファンタジー”だ。恋愛・ホラーいずれのジャンルも、基本的に舞台設定は学園など現代社会に近いが、最近は、恋愛要素を含みながらも、別の時代や別の世界へ迷い込むものや、舞台設定自体がファンタジー世界のものが増え、そうした作品が人気を得ている。

photo ファンタジー系の作品も増加傾向にある。5月に発売された「六花の翼」(著:真彩-mahya-、スターツ出版刊)は、「野いちご」から出版されたファンタジー小説の第1弾だ

 恋愛以外のジャンルの人気が台頭してきたことで業界にも動きが出てきた。例えばスターツ出版は、ケータイ小説を書籍化した文庫本レーベル「ケータイ小説文庫」に、ラブコメ系の“ピンクレーベル”と泣ける恋愛系の“ブルーレーベル”に加え、ホラー系の“ブラックレーベル”と、ファンタジー系の“パープルレーベル”を新たに追加した。

 装丁、つまり書籍カバーにも傾向の変化が見られる。従来のケータイ小説のカバーといえば、抽象的な風景やオブジェと文字を主体としたデザインが主流であった。だがジャンルの多様化の影響で、ライトノベルのようにイラストを主体としたものが増えてきているようだ。また文庫本作品では、10代女性の憧れとなるモデルを起用した、実写ベースのカバーも多く見られるようになっている。

 各社が主催するケータイ小説のコンテストにも、ジャンルの多様化という波が及んでいる。アスキー・メディアワークスが主催する「iらんど大賞」では、第5回から“歴史部門”、第6回からは“ホラー部門”が追加された。また毎日新聞社とスターツ出版が主催する「日本ケータイ小説大賞」も、7月から開催される第8回にファンタジーとホラージャンルの賞を設けるとしている。

スマートフォンの広まりが変化をもたらしつつある

 そしてもう1つ、ケータイ小説に変化を与えつつあるのがスマートフォンの存在だ。各サービスとも、すでに読者の半数以上がスマートフォンを手にしている状況にあり、従来のケータイ小説から表現方法が変化してきている。

過去のケータイ小説関連コンテストより。スマートフォンで垣根が低くなった今後、ケータイ小説系CGMサービスが、女性を中心とした小説クリエイターの登竜門となる可能性は高い

 従来のケータイ小説は、携帯電話のディスプレイサイズに合わせて文章を短く切ったり、改行を多く入れたりするなどして、小さい画面でも見やすく、インパクトある表現を多く取り入れてきた。それがケータイ小説ならではの、独特な印象を与える要素でもあった。

 だがスマートフォンはディスプレイサイズが大きくなり、文字の拡大・縮小も容易に行える。そのため執筆時に画面サイズを強く意識する必要がなくなり、従来より1行の文章が長くなったり、1ページの文字数が多くなるなど、どちらかというと一般的な小説の表現に近づきつつある印象だ。またスマートフォンの大きな画面を生かすため、イラストなどで演出効果をもたらすケースが増えているのも、大きな変化といえるだろう。

 さらに、自作の小説を宣伝する方法にも変化が見られるようになった。フィーチャーフォン時代にはCGMサービス内での宣伝が主体だったが、現在はブログやTwitterなど、スマホユーザーが多い各種ソーシャルメディアを活用した宣伝も積極的に行われている。

 当初は、従来の小説とは異なる表現や内容で広く注目を集めたケータイ小説。だがその後も若年女性からの確固たる支持を得て根強い人気を維持しつつ、ブームの影響により新たな執筆者が流入したことで、徐々に形を変えながらも支持層を広げている。スマートフォンユーザーの広がりと同時に、女性を中心としたクリエイターを育てるプラットフォームとして、より大きな存在感を発揮していくといえそうだ。

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