“New”(新しい)、“Next”(次世代)、“Nippon”(日本)のスマートフォンを目指して登場した富士通のNTTドコモ向け新フラグシップ「ARROWS NX」。その2代目「ARROWS NX F-01F」が、2013年ドコモ冬モデルのおすすめ機種の一つとして登場する。
F-01Fは、先代の「ARROWS NX F-06E」と同様、品質・使い勝手の向上に力を注ぎ、“ストレスフリーな心地よさ”(セールスコピーの一部)を実現するための改良が随所に施された。さらに、ユーザーインタフェースでも新たな試みを実施している。もちろん、ARROWSのフラグシップモデルに相応しいハイスペックさも内包した。
端末サイズは約70(幅)×140(高さ)×10(厚さ)ミリで、重さは約150グラム。F-06Eと比較するとサイズ感はほとんど変わらず、13グラムほど軽くなった。しかし、そのデザインは味付けが異なる。F-06Eは直線的なデザインだったのに対し、F-01Fは端末の持ちやすさを重視したラウンドフォルムになった。同じタイミングで登場したau向けの「ARROWS Z FJL22」やソフトバンクモバイル向けの「ARROWS A 301F」と比較すると、直線的な部分を多く残しているが、F-06Eと並べてみると結構“丸っこく”なったことがよく分かる。実際に持ち比べてみると、持ちやすさでは断然F-01Fの方が優れている。
ただし、何かを改善すると、何かを犠牲にしなければいけないのは世の常である。F-01Fではテレビ用のロッドアンテナを内蔵することができず、イヤフォンマイク端子に取り付ける外付けタイプになってしまった。ボディの持ちやすさを優先した結果と思うが、若干残念である。
ボディの塗装は、F-06Eと同様に、2層塗装の表層側にダイヤモンドを混ぜ、更にその上にフッ素系コーティング剤「ウルトラタフガードplus」を塗布して剥がれにくさと耐久性を向上した「ダイヤモンドタフガード」を採用している。ただし、ツヤ消し塗装だったF-06Eに対し、F-01Fでは光沢付き塗装となった。
側面は、ラウンドフォルムを採用したため、背面側のとつなぎ目が無くなっている。左側面の電源キー・ボリュームキーについては、F-06E同様、リアルマテリアルをあしらっており、デザイン上のアクセントとなっている。右側面には何も配置されていないため、かなりスッキリした印象を受ける。
本体上面には、3.5ミリのイヤフォンマイク端子、赤外線通信ポート、microSIM(ドコモminiUIMカード)とmicroSDのスロットが用意されている。「あれ、赤外線通信ポートなんてどこにも見当たらない」という方もいるだろう。それもそのはず。実は、F-01Fの赤外線通信ポートはスロット類のふたの内側に用意されているのだ。赤外線通信でデータのやりとりを行う場合は、このふたを開けて行うことになる。イヤフォンマイク端子については、引き続きキャップレス防水構造となっている。
本体底面にはモノラルスピーカーとMHL出力を兼ねたMicro USB端子、マイクが用意されている。ここは、待望のキャップレス防水仕様となり、わざわざふたの開け閉めをせずに済むようになった。ただ、心配なのはその耐久性だ。キャップレス防水は、利便性が高くなる反面、耐久性の面で不利とされており、特に充電などで利用する頻度が高いMicro USB端子においては、キャップレス化に消極的な傾向にあった。そこでF-01Fでは、Micro USB端子にフッ素系のコーティングを施すことによって、耐久性を高めた上でキャップレス防水化を図っている。
ここまで見てきて、ボディのどこにも卓上ホルダ用の接点が無いことに気が付いた方もいるだろう。実は、F-01Fでは卓上ホルダが用意されないのだ。では、「おくだけ充電」には対応しているのか、というとそうでもない。F-01Fでは、Micro USB端子を使った充電のみに対応する。その影響で、他キャリア向けのARROWSでは2013年冬のセールスポイントにもなっている10分の充電で1日分利用できる「超急速充電」には対応していない。ただし、ドコモ純正の「ACアダプタ 04」などを利用した「急速充電」には対応しており、10分間充電すれば約60分間通話が可能な分だけ充電できる。
F-01Fは、「WhiteMagic」と呼ばれる液晶パネルにも注目したい。WhiteMagicは、ソニー(現・ジャパンディスプレイ)が開発した液晶だ。通常、色の三原色(RGB)で構成される液晶の画素に白(W)画素を追加し、輝度向上による屋外での視認性改善と省電力化を両立している。従来、国内市場向けスマートフォンでは「らくらくスマートフォン2」や「らくらくスマートフォン プレミアム」で採用実績がある。
F-01Fでは最近量産が始まったばかりの5インチフルHD(1080×1920ピクセル)のパネルを採用した。最大輝度は通常の液晶の1.6倍程度で、直射日光下でも充分視認できるという800カンデラ。最大輝度まで持っていくと、通常の液晶では体感できない“まぶしさ”を感じる。これだけまぶしいと、消費電力が気になるところであるが、白色画素の追加によって、従来液晶と同じ輝度範囲で比較すると約30〜40%省エネ効果がある。
富士通の“お家芸”とも言える「スマート指紋センサー」は従来と同じ機能のものを搭載している。押し込むことでスリープとスリープ解除が可能で、スリープ解除後、そのままなぞればロック解除もできる。別のお家芸でもある「プライバシーモード」との連携も可能だ。センサーそのものの形状は正方形から円形に変更され、色も筐体と同色に揃えられた。
ソフトウェア面で気付くこととしては、ユーザーインタフェース(UI)の“見た目”がずいぶんと変わったことが挙げられる。従来は、Androidの標準UIからあまりいじっていない見た目を貫いていたが、F-01Fを含め、今冬モデルのARROWSからは、本体同様に“柔らめ”のアレンジが施されている。ただし、変わったのはあくまで見た目であって、設定メニューなどの階層は従来モデルとほぼ同じなので、ARROWSからARROWSへの乗り換えであれば、操作に戸惑うことはあまり無いだろう。
ARROWSならではの便利な機能も、機能を改善した上で継続して搭載している。例えば、片手で画面上部を操作する際に便利な「スライドディスプレイ」は、2013年夏モデルから追加されたものだが、操作ボタンが小さいことから、メニューキーやバックキーを誤って押してしまうことが多かった。そこで、ボタンを大型化することで押し間違いを減らした。
一方で、分かりやすさを優先するために“引っ込めた”機能もある。標準ブラウザに搭載されているリンクのプリロード機能は、F-01Fでも継続して搭載されている。しかし、オン/オフの切り替えがブラウザのURL欄横にあるアイコンから、設定メニューの「帯域幅の管理」の中に引っ越した。これは、意図せず機能を有効にしてしまうユーザーが少なくなかったための措置とのことである。
ちなみに、F-01Fの標準ブラウザでは、au向けの「ARROWS Z FJL22」には搭載されているWi-Fi(無線LAN)とLTE/3Gの同時通信機能「マルチコネクション」には対応していない。
ホームアプリについても変更がある。従来、ドコモ向けARROWSでは3種類のホームアプリがプリインストールされてきたが、F-01Fではドコモ提供の「docomo LIVE UX」と、富士通オリジナルの「NX!ホーム」の2種類となり、Android OS標準のホームは削除された。docomo LIVE UXは「docomo Palette UI」を置き換える、ホーム画面を主体に据える新設計のホームアプリだ。出荷時設定では、LIVE UXがホームアプリに指定されている。NX!ホームはARROWSに最適化したホームアプリだ。
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