キャッシュバック戦争にお役所がついにメスを入れるか――青天井のキャッシュバックにキャリア関係者も「誰か止めて」石川温のスマホ業界新聞

» 2014年02月28日 00時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 春商戦真っ盛りの2月中旬、こんなことをささやくメーカー幹部がいた。

 「どうやら、ドコモのMNPが調子いいらしい」

 MNPといえば、「割と気持ちいい」「適切なキャッシュバック」(田中社長)で、KDDIが相変わらず堅調なのだが、NTTドコモが「1月は適切なキャッシュバックにやられている」(加藤社長)ことに反省したのか、キャッシュバック金額を大幅に増額。ドコモオンラインショップでもiPhone5sに5万円のキャッシュバックがつくなど大盤振る舞いの状態だ。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年2月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 また、学割キャンペーンにおいても、他社が学生の家族に対してMNPが3年間、新規が1年間、基本料無料なのに対し、NTTドコモはどちらも3年間を無料化。また学生本人も、2013年6月以降に新規契約した学生であれば、基本料無料の対象にするなど、既存ユーザーにも配慮した内容になっている。

 さらにコンテンツを2つ以上契約した学生ユーザーには「データ量を1GB追加」といった特典も用意するなど、細かな差別化がある。

 NTTドコモ関係者によれば「MNPがプラスに転じ、他社に勝つことはないが、今月のマイナスは相当、改善している」という。KDDI関係者も「今の段階で、3社の差は縮まりつつある」と認めている。

 2月中旬の段階では「KDDIが僅差でリードし、NTTドコモとソフトバンクがマイナス」といった状態であるようだが、2月はまだ1週間弱あり、今週末の結果によっても大きく変わってくることだろう。

 しかし、近所のauショップ店頭を見ていると、1月までのiPhone5sに対する平日のキャッシュバック額が4万円で、週末になると5万円に上がっていたのが、2月に入ると平日でも6万円になり、ソチ取材から帰ってきたら7万円まで上昇していた。もちろん、近隣のソフトバンクショップでも対抗上、7万円のキャッシュバックを打ち出している状態だ。まさに、商品力よりも、キャッシュバックの額で売れるスマホが選ばれているという状況に陥っている。

 このキャッシュバック、2年ごとに契約を換える消費者にとっては喜ばしい限りだが、キャリアにとっては頭の痛い問題だ。

 MNPの数字を見ると毎月、数万契約程度にしか見えないが、その数字は契約者から解約者を引いた数でしかない。そのため、実際のMNP利用者は、公式に発表されている何倍もの数になっていると見られている。

 あるキャリア関係者は「正直、キャッシュバック合戦は辞めたい。もはや消耗戦であり、体力勝負になりつつある」という。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社ではにらみ合いを続けており、「誰が最初に辞めるか」のチキンレース状態に陥っている。

 いま、3キャリアがほのかに期待しているのが、お役所の介入だ。

 「消費者庁がどう動くか。彼らがキャッシュバックに待ったをかけてくれれば、我々も正々堂々、辞めることができる」(キャリア関係者)。

 2007年に総務省が音頭をとったモバイルビジネス研究会によって、通信料金と端末価格を分離するようにメスが入ったが、いまでは「あのころのほうが健全だった」(キャリア関係者)というような状況となっている。

 総務省にとってみれば、いまのキャッシュバック戦争に意見をすれば、自らの施策が失敗であったことを認めることになりかねない。

 総務省でも政策見直しのひとつとしてキャッシュバックについて検討する可能性もありそうだが、消費者庁あたりが出てきてもおかしくないという。

 もはや、キャッシュバック暴走機関車は、キャリア自身も制御できなくなっているだけに、今後、お役所がどのような采配をふるうかが注目と言えるだろう。

 「適切なキャッシュバック」も、そんなに長くないのかも知れない。

© DWANGO Co., Ltd.

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