LTE上で音声通話を行う「Voice over LTE」(VoLTE)のデモを各社ブースが行っていた。VoLTEは2013年に韓国でスタートしており、日本でも2014年の開始が見込まれている。
VoLTEによって音声通話がIPベースとなることで、これまでの交換機を介する音声通話とは異なりIPサービスとの親和性が高くなる。Ericssonは「Xperia Z1」でビデオ通話を行うデモの中で、通話しながらファイルの送受信を行ったり、地図を通話者同士で共有しながら行き先を教えたりといった利用を提案をしている。さらに、Qualcommと開発中の新しい音声コーデックEVS(Enhanced Voice Services)を体験できるコーナーを設けており、VoLTEにおける音声通話の音質が現在の方式から明らかに改善していることを実感できた。EVSは3GPPで現在策定中で、2014年末に標準化する予定とEricsson関係者は述べている。
韓国でVoLTEを開始した当時、LTEのカバーエリアが3Gと比べて十分でないことから「CSフォールバック」(回線交換フィールバック)技術を利用して、LTEカバーエリア外では3Gなどに切り替えていた。しかし、現在LTEの人口カバー率が100%になったことでCSフォールバックは不要になったという。だが、韓国のようなケースは非常に少ない。
Ericssonの無線部門事業開発・戦略トップのセバスチャン・トルストイ氏によると、「世界の人口カバー率では、2Gが85〜90%、3Gが45%、LTEが10〜15%で、LTEはまだまだ普及していない。VoLTEが音声をリプレースすることは当分はないだろう」という考えを示している。
Huaweiでは、W3CのリアルタイムコミュニケーションAPI「WebRTC」とVoLTEを接続する「WebRTC Gateway」を紹介していた。WebRTCは、Webブラウザ内で音声通話などのコミュニケーションをプラグインなしで実現するAPIで、Firefox Webブラウザなどでもサポートするなど、主要なWebブラウザでの採用が進んでい。
VoLTE上で直接動くアプリの開発には、これまでSIP(Session Initiation Protocol)の知識が必要だが、WebRTC Gatewayを利用するとWebアプリ開発者でもVoLTEを利用するアプリを開発できるようになる。
WebRTC GatewayをVoLTEを活用するサービスやアプリを移動体通信御者に提供することで、これまで(交換機を介する)音声通話サービスで収益の多くを得てきた通信事業者にとっても、VoLTEサービスは「競合ではなくパートナーになることができる」とHuaweiの担当者は説明する。
複数の搬送波を束ねて一本として運用することでスループット改善をはかる「キャリアアグリゲーション」(CA)の展示も多くのブースで行っていた。キャリアアグリゲーションは、下り最大1Gbpsを必要とするLTE-Advancedで必須の要素技術となる。
NSNは、Sprintと共同で開発したTD-LTEで最大2.6Gpsの転送速度を実現するシステムを展示していた。TDDバンドをキャリアアグリゲーションで120MHz帯にし、NSNの基地局「Flexi Multiradio 10 BS」を用いることで、従来の1.6Gbpsを大きく上回る最高記録を発揮したことになる。
2バンドを束ねるキャリアアグリゲーションは、韓国ですでにスタートしているが、MWC 2014では3バンドを使うキャリアアグリゲーションの展示が多かった。Huaweiは、LG Plusと共同で、それぞれ20MHzを割り当てた850MHz帯、2100MHz帯、2600MHz帯の3バンドを束ねてして理論値の転送速度に近い450Mbpsを実現していた。ブースでは、4K解像度のハイビジョン映像を4本同時に配信するデモも紹介していたが、Huaweiでは、固定網が光ケーブルベースでない地域において、キャリアアグリゲーションを利用するLTE-Advancedが4K TVの普及にとって重要なネットワーク技術になるかもしれないと考えている。だがその一方で、現時点で対応する端末がないため、商用化はまだ先になるという。
NSNも20MHz帯域幅を3本束ねて構成した3バンドキャリアアグリゲーションのデモを行っていた、こちらのデモも最大450Mbpsのスループットを実現している。ただ、NSNで事業戦略を統括する小久保卓氏も、2015年にかけてようやく2バンドキャリアアグリゲーションが主流になるだろうとの見通しを示していた。
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