低価格競争に一石 ソースネクストが格安スマホ向け「アプリ取り放題」を開始

» 2014年10月29日 23時43分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 ソースネクストは10月29日、定額料金制のアプリダウンロードサービス「アプリ超ホーダイ」を開始した。月額料金は360円(税別)で、イオンやビッグローブの格安スマートフォンとセット販売するほか、それ以外のユーザーにもソースネクストが直接提供する。

photo 「アプリ超ホーダイ」の発表会見で握手する、イオンリテールの橋本氏、ソースネクストの松田氏、ビッグローブの古関氏
photophoto アプリ超ホーダイは月額360円で、イオンスマホなどの格安スマホとセットで販売する

 ソースネクストは6月、120本以上のPC用ソフトを定額で使えるサービス「超ホーダイ」を開始しており、今度はスマートフォン向けにサービスを開始する。また法人向けにPCソフトを定額で提供する「超ホーダイBusiness」を同時に発表した。

 アプリ超ホーダイのスタート時点でダウンロードできるのは、セキュリティやゲームなどのAndroidアプリ約50本。ソースネクスト以外のコンテンツプロバイダーが提供するアプリもラインアップした。タイトルは順次追加し、年度内に100本まで拡大する予定だ。

photophotophoto ラインアップの一部
photophoto ビジネス向けやゲームもそろえる

 アプリやWebサービスを定額料金で提供するサービスは、KDDIの「auスマートパス」やNTTドコモの「スゴ得コンテンツ」、ソフトバンクモバイルの「Smart Pass」など、大手キャリアが自社ユーザー向けに提供している。しかし昨今増加している格安SIMや格安スマホではこれらのサービスが使えないことから、ソースネクストがMVNO向けに新たな付加価値サービスとして提供する。

 同社の松田憲幸社長は、「日本のスマートフォン普及率は欧米に比べて低く、その理由は料金の高さ。大手キャリアのスマホと格安スマホの間には平均4600円もの差があり、3人家族なら2年間で30万円近くの違いになる。これが格安スマホによって、2018年度には普及率が70%まで上昇するだろう」と、格安スマホの伸びに期待する。

photophotophoto スマホの料金が高い日本では、スマホの普及率が低く、アプリの活用も進んでいないという

 そしてスマホ活用に欠かせないのがコンテンツ(アプリ)であるとし、「スマホでは通話やメール、データ通信などのいろんなものが無料になり、さらにアプリを組み合わせることで生活が豊かになる。そこで、さまざまな生活シーンで活躍するアプリを厳選して使ってもらえるのが『アプリ超ホーダイ』だ」と説明した。

photophotophoto 定額制のアプリサービスを格安スマホに提供することで、アプリ活用の裾野を広げるのが狙いだ

イオンスマホが誕生した理由と、アプリ取り放題をセットする理由

 格安スマホとセットでアプリ超ホーダイを販売するイオンリテール。同社の橋本昌一デジタル事業開発部長は、「イオンは大手キャリアの携帯電話を200以上の店舗で、20年以上販売してきた。販売の中心がスマホになった昨今、売り場には“料金が分かりにくい”“月額料金が高くなった”“解約料を支払いたくない”という声が多数寄せられるようになった。これは今までにないことで、こうした要望に応える形で4月に『イオンスマホ』を発売した」と、オリジナル格安スマホ誕生の経緯を振り返った。

 安くシンプルな料金体系が人気となったイオンスマホは、現在第3弾を販売している。シリーズを通してのユーザー層は、シニアが多いという。

 「イオンで携帯電話を購入するユーザーのうち、50歳以上の比率は大手キャリアが15.1%だが、イオンスマホは51.7%。実に3倍以上の支持を得ている。さらに70歳以上になると、大手キャリアは0.6%、イオンスマホは4.5%。イオンでは55歳以上を“GG世代”と呼んでいるが、GG世代はスマホにチャレンジしたいと思っても、料金や分かりにくさがネックになり、フィーチャーフォンを使い続けていた。こうした層にスマホを使ってもらい、満足を提供できたことはうれしい」(橋本氏)

 そのイオンスマホにアプリ超ホーダイをオプション提供する狙いについて橋本氏は、「スマホユーザーが増えると、アプリをいろいろ試してみたいという声も増えてくる。それにはアプリ選びが重要で、分かりやすさがポイント」とした。

 Google Playには無料・有料のアプリが多数あるが、その中から自分に必要なアプリを探すのは容易ではない。定番アプリや人気アプリをあらかじめ用意することで、ユーザーに新たな付加価値を提供したいと意気込む。また料金が定額制で、通信料と同時に決済されるというシンプルさも重要だという。

通信容量アップでアプリ活用を後押しするビッグローブ

 自らも格安スマホを販売し、またイオンにモバイル回線を提供するビッグローブも、アプリ超ホーダイをセット販売する1社だ。ビッグローブの古関義幸社長もシニア層への格安スマホ普及に手応えを感じているといい、同時にアプリの活用が課題という考えを示した。

 「LINEで孫の顔を見たいが、“分からない”“怖い”“高そう”という声が多い。無料ならともなく、有料のアプリをいくつも試してもらうには、定額制のサービスが便利。ともにPC向けソフトの定額販売をしているソースネクストが厳選したアプリなら安心だ」(古関氏)。

 また10月23日に発表した通信容量の増量について触れ、「『格安スマホ』というと安いなりの理由があると思われがちだが、11月から料金はそのままでフルスピードの通信容量を増量した。これまではアプリをダウンロードするごとに通信料を気にすることがあったが、従来の2Gバイトのプランは5Gバイトに増やしている。もう、ほとんど心配いただくことはない。これもアプリ取り放題の利用を後押しできるだろう」と自身を見せた。

※初出時に、小見出しに「通信料アップでアプリ活用を後押し」とありましたが、正しくは「通信容量アップでアプリ活用を後押し」です。おわびして訂正します。(10/30 9:57)

コンテンツプロバイダーも期待する定額制サービス

 超ホーダイサービスに注目しているのは、格安スマホを提供する企業だけではない。アプリやサービスを開発するコンテンツプロバイダーやアプリベンダーにとっても、新しいユーザーを増やすチャンスになるという。

 アプリ超ホーダイ/超ホーダイ/超ホーダイBusinessを通じてサービスを提供しているマネーフォワードの辻庸介CEOも、「安定した販売チャンネルを確保できるため、今まで以上に開発に注力できる」と歓迎する。

 また自身もソフトを開発しているソースネクストも、他社の製品を扱うメリットがあるという。「アプリに限らずPCのパッケージもそうだが、ソースネクストは自社と他社の製品をバランスよく扱っている。自社で開発することで、世界中にある良質なソフトの目利きができる。片方だけではだめで、そのためにシリコンバレーに拠点を設けて、アンテナを張っている」(ソースネクスト松田社長)

格安スマホも付加価値で勝負の時代 キャリアとの競争力は未知数

 さまざまなアプリをインストールすることで、新しい機能を追加できるスマートフォン。Google Playなどのマーケットには、それこそ星の数ほどのアプリがあり、その中から目的に合った1本を探すのは誰にとっても難しい。

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 シニアやファミリー層が多い格安スマホユーザーにターゲットを絞り、その中で厳選した定番アプリを定額で提供するアプリ超ホーダイ。ユーザーはアプリ探しかける手間が減り、コンテンツプロバイダーも新しいユーザーに使ってもらえるチャンスが増える。そして格安スマホを提供するMVNOにとっては、低コスト競争に続く付加価値競争に備えた新たな武器になるだろう。まさに“三方良し”の取り組みといえる。

 しかし大手キャリアの展開する定額制サービスに対し、どこまで競争力を持つかは未知数だ。松田社長は「最後発のためタイトル数は少ないが、その分コストは安い」と違いをアピールするが、各キャリアはアプリだけでなくクーポンを配布するなど、サービス料金以上の“お得感”も演出している。そして細かなニーズに応えるためには、提供アプリの規模をもっと増やす必要もある。

 またPCソフトと違い、スマホアプリは広告モデルの採用による無料提供が当たり前になっている。「スマートフォンアプリは無料」という常識をどう覆していくのか。コストにシビアな格安スマホユーザーに加入してもらうためには、もっと強力なメリットを訴求することが課題ではないだろうか。

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