郵便局で「IIJmio」を販売する狙いは?――200万契約を目指し、IIJは次のフェーズへMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2016年07月29日 15時52分 公開
[石野純也ITmedia]
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ドコモの禁止行為規制緩和はビジネスチャンス

―― フルMVNOだと選択肢が広がるわけですね。こちらについては、いつごろを目指しているのでしょうか。

佐々木氏 いかんせんガイドラインが出たのが昨年(2015年)の11月で、ドコモさんとの協議もこれから本格化します。ですから、現状、いつと見えているわけではありません。経済性や技術的に何ができるのかは、ドコモさんと協議しないと出てこない状況もあります。今の段階で決まっていることはありませんし、時期も見えません。

 ただ、当然、フルMVNOはMVNOの新しいチャレンジという意識はあります。技術的にできることは何か、海外でフルMVNOはどういうことをしているのか。そういったリサーチのようなことは、急ピッチでやっています。

―― MVNEという観点でも、できることが広がりそうですね。

佐々木氏 フルMVNOになり、自前のSIMを発行できるとなると、パートナーからご要望されているさまざまな付加価値を実現できます。それが決済のような事例になるのか、海外での接続になるのか、柔軟な料金になるのかはまだ分かりませんが。料金の柔軟性という意味では、IoTのようなものでは、機械にSIMが入った瞬間から課金できるようにもなります。ALADIN(ドコモの顧客管理システム)ではできることとできないことがあり、できないことを実現するうえでも、MVNEとしては大きなメリットがあります。

―― そういった中で、ドコモに対する禁止行為規制が緩和されたことについてはどのように見ていますか。

佐々木氏 われわれとしては、1つのビジネスチャンスだと思っています。MVNOの差別化が難しい理由の1つに、ドコモさんが禁止行為規制で画一的な取り扱いしかできなかったことがあります。ここが緩和されたことで、われわれとドコモさんで新しい付加価値を作ることを考えていけます。

 半面、全てがポジティブというわけではありません。われわれと同時に、他社にとってもビジネスチャンスがあるからで、われわれが負けてしまうことも当然ありえます。ここから先は、サービスを企画する力であったり、実装する力であったり、販売していく力であったりと、トータルの力で、いかに新しい付加価値を考えていけるか。そういったフェーズに、競争が移っていくのだと思います。

タッチポイントは広げるが、マニアのユーザーはむげにしない

―― 現実的な話に戻ってしまいますが、お昼の混雑に関してはいかがですか。

佐々木氏 現実的に言うと、難しいですね。われわれも品質を上げていきたいと強く思ってはいるものの、お客さまが極めて短い1時間に集中してしまうので、円滑にトラフィックをさばくのが難しい状況です。

堂前氏 サラリーマンや学生ばかりだと、どうしても昼休みが多くなってしまいます。直接的な解決ではありませんが、それ以外の属性の方が増えれば、トラフィックがならされ、従来よりも昼休みの負荷が軽減されます。私たちにとっては、プロフィルが偏りすぎているのが非常にやりづらいんです。

―― そういうところにも、郵便局での販売が効きそうですね。

堂前氏 恐らくプロフィルは違いますからね。

―― 以前と比べると、属性は変わってきているのでしょうか。

堂前氏 相変わらず、女性が増えてきています。ここには面白い傾向があって、男性の増加は単調というか、徐々にという伸びですが、女性はiPhoneが発売されるとピョンっと伸びます。あくまで発売時期での仮定ですが、去年(2015年)の秋と今年(2016年)の春にピョンと増えていて、ほかに理由が見つかりません。女性を増やすために、iPhoneを扱えればいいのですが(笑)。

 郵便局もそうですが、横に広げようとはしていて、そのためにはタッチポイントを広げるのが一番効果的です。もちろん、今まで支えてきてくれたマニアの方(かた)をむげにするつもりはありませんが。

―― そこは、やはり強調しますか(笑)。

堂前氏 「IIJもチャラくなった」と言われることはありますが、私も含めたマニアが快適になるには、一般の人も増やした方がいいんです。

 ついでに言うと、どこか大口のMVNOが入ったり、大口の販売先が決まったりすると、必ず「あそこが入ったからIIJも終わりだ」と言われることがありますが、それもご安心ください。そこに合わせて当然設備は増強していますからね。

取材を終えて:100万契約を超えて次のフェーズへ

 佐々木氏が指摘していたように、ドコモの禁止行為規制が緩和され、MVNOの競争環境も大きく変わろうとしている。HSS/HLRの開放に向けた協議も始まり、将来的にはフルMVNOになれるMVNOと、そうでないMVNOに分かれてくる可能性もある。IIJの最近の動きは、こうした状況の変化に対応していくための布石ともいえるだろう。

 インタビューからは、100万契約を超えたIIJが、徐々に次のフェーズに移ろうとしている様子もうかがえた。郵便局での販売はその1つ。これが成功すれば、MVNOが取り込めていなかった、地方や高齢者のユーザーに対するアプローチが可能になるかもしれない。

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