契約純増数と端末販売数が対照的なドコモとKDDI――その理由は?石野純也のMobile Eye(10月24日〜11月4日)(2/3 ページ)

» 2016年11月05日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

MVNOへの流出が続き、端末販売数もガイドラインで減少

 ただし、この数字をもってしても、順風満帆といえないのが今のKDDIの悩みだ。ARPAについては継続的に伸びているが、「そこに掛け算する(ことで収益が求められる)契約者数については、MVNOへの流出が起こっていて、現実的にはマイナス傾向」(田中氏)だ。KDDIの純増数は、第2四半期でちょうど10万。第1四半期の22万1000よりも、さらに成長が鈍化している。純増数には、UQ mobileやmineoなど、auのネットワークを使うMVNOの増分が含まれていることを考えると、田中氏が言うようにマイナス傾向が鮮明になってきたと見ていいだろう。

photo 契約者数は伸びているものの、純増数はマイナス傾向に転じてしまった

 田中氏は「何とか顧客満足度を高め、auに残っていただきたいと思っている」と言うが、対策がどこまで功を奏するかは未知数だ。さらに、端末販売数も「当初の想定通りになっていない」(同)として、前年同期比でもマイナス傾向になっている。実数を見てみると分かるが、KDDIの端末販売台数は第2四半期で208万台。前年度は230万台だったことから、差し引きで22万台の減少。第1四半期も同様で、193万台と前年同期比で12万台減っている。

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photo au STARやタッチポイントの拡大を通じて、ユーザーの満足度向上をもくろむ
photo 端末販売台数も、前年対比で減少傾向にある

 背景には、総務省のガイドラインがある。4月施行されたガイドラインで、実質0円(以下)での端末販売が禁止され、ユーザーの買い控えが起こってしまった。これを打開するためには、「魅力的な端末やサービスを増やすしかない」(田中氏)というが、決定打になるような端末が出せていないのが現状だ。秋冬モデルに関しては、「Xperia XZ」や「isai Beat」を発表しており、追加モデルも用意しているものの、「こぢんまりとした発表会になる」(同)見通し。目玉として用意していた「Galaxy Note7」が海外で発火したことを受け、ドコモに続き、KDDIも販売を見送ったようだ。

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photo 秋冬モデルとして、「Xperia XZ」や「isai Beat」を発売するが、「Galaxy Note7」の販売が見送りになり、「計画が狂った」(田中氏)

 契約者数が伸び悩み、端末も売れないとなると、収益への影響がボディーブローのように出てくる。既存ユーザーがいる上に、ARPAも上がっているため、すぐに減収減益という事態にはならないが、予断を許さない状況だ。MVNOの台頭や端末販売数の減少に対して、早急な対策が求められるようになりそうだ。

 一方で、傘下のUQコミュニケーションズによるMVNOのUQ mobileが急速にユーザーを増やしており、秋冬モデルとして端末のラインアップも強化。リアルなタッチポイントも増やし、テレビCMの放映も開始した。MVNOはドコモのネットワークを使う会社がほとんどで、KDDIが何も手を打たないとユーザーが流出するだけになってしまう。最低限、自社のネットワークを使ったサブブランド的なMVNOに移ってもらうことで、ARPAは下げつつも、契約者数は維持するというのがKDDIの方針となる。

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photo UQ mobileは端末ラインアップを一気に拡充し、契約者数も順調に増やしている

 MVNOの影響に関しては、ドコモにも出ている。吉澤氏も「ガイドライン施行後に、Y!mobileやMVNOに対するポートアウトの影響がある」と認める。ただしドコモの場合、自社のネットワークを利用するMVNOが多いため、純増数にはむしろプラスの影響が出ている。数字で見ると、第2四半期の純増数が133万、第1四半期も65万と高水準でユーザーが増えていることが分かる。

 ユーザーがMVNOに移っても、MVNOがドコモに支払う「接続料」という形で間接的に収入を得られるため、KDDIよりはその影響も少ない。結果として、サブブランドのMVNOを作ることは「考えていない」(吉澤氏)という。とはいえ、流出が続けば、収益性が下がるのはドコモも同じだ。そのため、「いろいろなお客さまがいるため、それに合ったものを出していく」(同)という対策を取る。端末に関しては「フラグシップがあり、ミドルがあり、ローがある。場合によっては、料金も考える」(同)として、バリエーションを広げていく方針だ。

 ドコモは、冬春モデルとして、一括648円のミッドレンジ端末「MONO」を発表。LTEを搭載したAndroidベースのフィーチャーフォンも3機種ラインアップしており、発表会では「MORE variety」をテーマに掲げていた。LTE対応フィーチャーフォン向けに、カケホーダイライトの料金も改定している。こうした製品やサービスを通じて、間接的にMVNOへの流出を減らしていくというのがドコモの戦略といえるだろう。

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photo ドコモは「MORE variety」を掲げ、冬春モデルではラインアップの幅を広げた

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