ガラケー(フィーチャーフォン)全盛期には、LINEのようなメッセンジャーは携帯電話では普及していません。また、SMSは異なるキャリアの契約者間ではやりとりができず、同一キャリア内でしか利用できないという時代が長く続いたため、携帯電話間の連絡手段としてはほとんど利用されていませんでした。その結果、キャリアメールが携帯電話同士の連絡手段として非常に大きな位置を占めることとなります。
しかし、その一方で、キャリアメール宛てに大量の迷惑メールが送信されるようになり、多くの方が「迷惑メールフィルター」を利用せざるを得ない状態になりました。
この迷惑メールフィルターでは「携帯電話からのメールは受信許可」「それ以外のメールは個別に受信したいものを選択する」といった設定にされることが非常に多いようです。これは、迷惑メールのほとんどが携帯電話以外のメールアドレスから送信されているため、携帯電話以外のメールを拒否するだけで迷惑メールの大半を防ぐことができるためです。
また、ガラケーからサービスを引き継いだスマートフォン向けのキャリアメールでも、同様の迷惑メールフィルターが用意されています。
これらの迷惑メールフィルターの設定画面では「携帯電話からのメール」だけが他のメールと違って特別扱いされています。この「携帯電話からのメール」とは、キャリアメールを指しています。
このような設定をしているガラケー・スマートフォンの利用者と連絡を取るためには、メールを送信する側がキャリアメールを使うのが最もリーズナブルです。キャリアメール以外のメールを受信してもらうために、いちいち個別に「受信許可」の設定をしてもらうのはとてもハードルが高いためです。
ガラケー向け、スマートフォン向けを問わず、コンテンツサービスの中には会員登録時にキャリアメールの登録を必須としているものが散見されます。このようなサービスを利用したいため、キャリアメールが使いたい、というのもよく伺うご要望です。
そもそもなぜ、コンテンツサービスでキャリアメールの登録を必須としているのでしょうか。それには、コンテンツサービスを提供する事業者側の立場で考える必要があります。
コンテンツサービスの提供者にとって、サービス利用者への連絡手段を確保するのは重要です。キャリアメールにはプッシュ通知の機能がありますので、その他のメールサービスと異なり、メールの着信後、速やかに読まれることが多く、サービス提供者にとって都合が良いというのも理由の1つです。
また、それ以外にも1人の利用者がむやみに多数の会員登録を行うことを防止するという目的がある場合もあります。無料で利用できるフリーメールはもちろん、PC向けのメールサービスなどでは安価に多数のアドレスを持てます。
それと比べると、キャリアメールは携帯電話の契約ごとに原則としてアドレス1つだけが提供されるため、複数のアドレスを持つためのコストが高くなります。お金に糸目をつけなければ複数のアドレスを持つことも不可能ではありませんが、フリーメールなどを使ってカジュアルに大量登録されるようなことは防げますので、ある程度の効果があると考えられていました。
また、SNSなどのサービスではサイト上でのやりとりに関連して事件などが発生することがあります。こうした事態に備え、サービス提供者は利用者の身元を確認することが求められる場合もあります。誰でも登録できるフリーメールと異なり、キャリアメールは携帯電話の契約に基づいて発行されるため、それを身元確認の代わりとして使用するケースもあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.