HTC NIPPONは、フラグシップモデルの「HTC U11」と接続して使う、VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)「LINK」を発表した。販売はキャリアを通じて行われる予定で、ソフトバンクが取り扱いを表明している。価格は未定。HTCのスマートフォン・コネクテッドデバイス部門のプレジデント、チアリン・チャン氏によると、LINKは「プロジェクト段階と考えているもので、1国だけに集中する」とのことで、当面は日本限定での展開となるようだ。
LINKは、HTC U11をケーブルで接続するタイプのヘッドマウントディスプレイ。モバイルVRというと、サムスン電子のGear VRのように、スマートフォン本体をHMDに装着するものが一般的だが、LINKはHMD側にディスプレイを持つ。スマートフォンは、映像を処理するための機器という位置付けだ。PC用のVRに使われるPCを、スマートフォンに置き換えたものと考えれば理解しやすいだろう。
スペックも、シンプルなモバイルVR以上にリッチな体験ができるように仕上げられている。ヘッドトラッキングセンサーは、Gear VRなどで一般的な3DoF(Degrees of Freedom)ではなく、6DoFに対応。これは、HTCが開発した「VIVE」と同じスペックとなる。本体に加えて2つのコントローラーを備え、カーソルを合わせたり、モノをつかんだりといった操作も行える。
また、HMDに外付けで1つ、コントローラーにそれぞれ1つずつLEDライトが搭載されており、この光を位置検出用のユニットが受けることができる。ユーザーの位置をある程度正確に判定できるので、VR空間を自在に動き回れるようになる。いわゆる、「ルームスケールVR」と呼ばれるもので、簡易的なモバイルVRには搭載されていない、LINKならではの売りになる。HTC関係者によると、検知できる範囲は最大で3m程度になるという。
ディスプレイは3.6型のAMOLED(有機EL)が2つあり、解像度はそれぞれ1080×1200ピクセル。両目を合わせると2K相当になり、これもVIVEとスペックは同じだ。HTC U11のディスプレイは液晶なので応答速度を考えるとVRには向かないが、ディスプレイをHMD側に持たせることで、より体験を向上させた格好となる。
HTC本社で行われたHTC U11発表会の後、このLINKを実際に体験することができた。試したのは、VR版のブロック崩しのようなゲームで、ボールをつかみ、目の前にあるブロックに当てていくというシンプルなものになる。ボールが縦横無尽に飛び回るため、体を大きく動かし、それをキャッチしなければならない。これは、従来型の簡易的なモバイルVRだと、難しかった体験だ。
ディスプレイの追従性もよく、高い没入感を得られた。デモでは、サウンドがなかったため、周囲の声が耳に入ってしまい、現実世界に引き戻されてしまったが、イヤフォンなどをつければ、さらに臨場感は高まるかもしれないと感じた。プレイ中はスマートフォンをポケットに入れる必要があるため、Gear VRのような手軽さはないが、PCいらずでこれだけの体験ができるVR用HMDは、確かに他にはないかもしれない。
日本限定の展開で、HTC独自のデバイスということでコンテンツの開発者がどの程度集まるのかは気になるポイントだが、ここには、HTCがVIVEで培ったノウハウやエコシステムを活用していくという。HTC NIPPONの児島全克社長によると、「変換ツールは用意している」という。OSが異なるため、同じコンテンツをそのまま再生することはできないが、ゼロから作り直しにならなければ、開発者の手間やコストは減ることになる。VIVE向けに用意したコンテンツを、LINK向けにコンバートして出すという流れもできるかもしれない。
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