これからは“差別化”が重要に――MVNOが振り返る2017年

» 2017年11月29日 19時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 MNO(大手キャリア)から通信回線を借りて通信事業を営むMVNO(仮想移動体通信事業者)。MNOと比較して格安な月額料金を武器に、順調に成長を続けてきた。

 しかし、MVNOへの転出を防ぐべく、MNOが「格安プラン」や「サブブランド」を駆使して対策を行った結果、MVNOの純増の勢いは鈍化。そのことは、多くのMVNOに回線を貸し出すNTTドコモが純増計画を“下方修正”した要因の1つとなっている。

 そんな動きに前後して、事業からの撤退、あるいは同業他社への事業譲渡を決めるMVNOも現れ始めた。

 そんな2017年を、MVNOの「中の人」たちはどう捉えているのだろうか。「mineo(マイネオ)」を運営するケイ・オプティコム、「BIGLOBEモバイル」を運営するビッグローブ、「イオンモバイル」を運営するイオンリテールの担当者が、MMD研究所(MMDLabo)主催の勉強会で語った。

MVNOの認知ファネル 認知度は高まったものの、利用検討は横ばいに

他人事ではない「事業譲渡」

上田氏 ケイ・オプティコムの上田氏

 9月26日、プラスワン・マーケティングが楽天にMVNO事業の大部分を売却した。このことについて、2017年の振り返る中で「どう思ったか?」とMVNOの担当者に質問が投げかけられた。

 それに対し、ケイ・オプティコムでmineo事業を担当する上田晃穂氏は「お客様にとって、mineoが突然なくなることは悲しいこと。そういうことにならないように、ちゃんとやろうと思った」と語った。この件が気を引き締めるきっかけになったようだ。

 ビッグローブの中野雅昭常務は「言い方の良しあしはさておき『やっぱりなぁ』と思った」という。「業界全体として厳しさのある中で、前を走っていた」がゆえに、このような結果になってしまったと考えているようだ。その上で、「ビッグローブは、お客様に継続的にしっかりとしたサービスを提供することを基本に考えている。これは今後も同じである」とした。

 一方、イオンリテールの井原龍二氏は「FREETELさんの件が一番『あっ』と思った」としたものの、「MNOの格安スマホ対抗意識」も気になったという。

 3人の話を聞く限り、MVNOはプラスワン・マーケティングが取った選択を多かれ少なかれ「自分事」として捉えているようだ。

重要なのは「差別化」

ビッグローブの中野常務

 先述の通り、MVNOの多くは従来、格安な月額料金によってユーザーを獲得してきた。しかし、過剰な価格競争はユーザーサポートや通信速度などに悪影響を及ぼす可能性も否定できない。そのためか、昨今では料金“以外”での差別化が重要であるという声をよく耳にする。

 ケイ・オプティコムの上田氏は、これからのMVNOに必要なのは「ユーザーの印象に残る」「オンリーワン」のサービスであると語る。

 それを踏まえ、同社のmineoではユーザーと意見交換しながらサービスを開発する「共創」と、端末ラインアップと顧客接点を拡大する「安心」の両軸を重点戦略に据えている。今後は「情緒的価値」「社会的価値」を広げるようなサービスの開発にも努めていくという。

mineoの戦略 mineoは「共創」と「安心」を両軸にして純増を維持しつつ契約継続意欲の向上(=解約率の低下)を図る
mineoの今後 今後は「情緒的価値」「社会的価値」につながるサービスの開発にも努めるという

 ビッグローブの中野常務は、「お客様を『マス』として捉えるのではなく、『個々』のペイン(不満点)やウォンツ(要求)に応える」ことが重要だという。

 同社ではリニューアルした「BIGLOBEモバイル」において、「SIM替え」をキーワードに今使っている端末でも月額料金を下げられることを訴求している。ただ、それは他のMVNOでも同じこと。そこで、中野常務は「ネットワーク品質」を差別化要素として挙げる。

 BIGLOBEモバイルでは、特定の動画・音楽配食サービスのデータ通信量をカウントしない「エンタメフリー・オプション」を提供している。そこに高速バッファリング、同時通信数最適化、バースト通信といった技術を活用しつつ「料金だけではない特徴」(中野常務)を出していくという。

トラフィック制御技術 通信を快適にするトラフィック制御技術。動画再生時だけではなく、さまざまな場面で活用することで、通信を快適に感じるように取り組んでいるという
動画のストリーミング最適化 動画のストリーミングも無駄なく読み込めるようにしているという
イオンリテールの井原氏 イオンリテールの井原氏

 イオンリテールの井原氏は、「客層の変化」がこれからのMVNOの課題になりうると語る。

 井原氏は、2019年10月に控える消費増税によって「通信コストがネックになる」と見ている。その上で「その時に格安SIMや格安スマホ(MVNOサービス)がどう見られるか」が重要なポイントだという。要するに、スマートフォン(あるいは携帯電話)に対するリテラシーのより低い人が携帯電話料金を見直す時に、MVNOが選択肢に入るかどうか問題であるということだ。

 その点、井原氏は顧客接点がおおむね全国にあることが同社の強みであるという。「技術はないが人はいる」(井原氏)ことを生かした対面契約・対面サポートにより力を入れることで、「安心して使える格安スマホ」として差別化を図る。

イオンモバイルの取り組み イオンモバイルは対面窓口が多いことが強み。逆に店舗のない地域での展開が直接弱みとなるため、代理店による販売やネット販売にも力を入れるという
イオンモバイルの目指す姿 イオンモバイルは「安心格安スマホNo.1」を目指すという

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