向上した機械学習の処理能力は、ポートレートモードに生かされている。さまざまなレンズの効果を学習することで、ボケかたがより自然になり、あたかも一眼レフで撮った写真であるかのように見せているというわけだ。論より証拠として、まずはポートレートモードで撮影した人物写真を見ていただきたい。
拡大してみると分かるが、単純に人物と背景を分けているわけではなく、顔の立体感までよく表現されている。正面から撮った写真は、ピントが鼻先に合いつつ、耳の奥の方に進んでいくとボケが深くなっているのだ。髪の毛と背景の分離も非常にうまくできており、自然な仕上がりになっている。
残念ながらポートレートモードも完璧ではなく、背景と人物を見分けられず、背景だけがボケずに残ってしまうこともあった。また、望遠側のレンズがF2.4と少々暗いこともあって、室内での撮影だとノイズの乗り方は少々気になる。一方で、iPhone X世代と比べたとき、その完成度は高くなったといえる。
処理能力の高さはポートレートライティングにも反映されており、結果がリアルタイムで画面に表示されるようになった。仕上がりを確認しながら撮ることができるようになり、特にセルフィーの撮影はこちらの方がしやすい印象を受ける。
また、これはデュアルカメラを搭載する他の端末でも既に実現しているので詳しくは触れないが、撮影後に被写界深度を変えられるのも便利だ。背景まで写しておきたいときに被写界深度を深くできるため、人物を撮るときは取りあえずポートレートモードにしておいてもいい。その意味では、ポートレートモードの出番が、これまでのiPhone以上に増えることになりそうだ。
機械学習の力だけではないが、センサーとISPの合わせ技で、HDRの機能にも改善が図られている。例えば、以下の写真を見るとその効果がよく分かる。iPhone Xで撮った写真は背景がつぶれてしまっているのに対し、iPhone XS Maxで撮った写真は人物と背景の両方がしっかり描写されている。窓際の逆光気味な環境はカメラの最も苦手とするところだが、Smart HDRはある程度、それを克服している格好だ。
数字的に見ると、以前との違いが分かりづらいカメラだが、プロセッサの力で仕上がりは確実によくなっている。見方にもよるが、コンピュータであるスマートフォンらしい進化の仕方といえそうだ。そして、このA12 Bionicの恩恵を受けられるのは、カメラだけに止まらない。Appleは、「Core ML 2」を通じて、サードパーティーにもニューラルエンジンの力を開放している。
発表会ではバスケットボールのシュートを解析するアプリの「Home Court」が披露され、話題を呼んだが、こうしたアプリがiPhone XS、XS Maxとともに一気に増える可能性がある。裏を返すと、現時点ではその真価がまだ分かりづらい点も否めない。カメラ以外にも、純正アプリでA12 Bionicの力を示す何かが欲しかったというのは率直な感想だ。
とはいえ、2機種とも現時点で最もパワフルなiPhoneであることは間違いない。特に今回はiPhone XS Maxが加わり、画面サイズを選ぶ楽しみも増えている。この性能を体感したいのであれば、より画面が大きいiPhone XS Maxを選ぶのもありだ。全画面デザインになったことで操作もしやすくなっており、これまでPlusサイズのiPhoneを敬遠していた人にもオススメできる1台に仕上がっている。
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