iOSから独立した「iPadOS」が生まれた理由、「watchOS 6」「iOS 13」の進化点を読み解く石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2019年06月05日 10時58分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

iOSはダークモード対応が目玉、写真やマップアプリも進化

 より独立性を高めたiPadOSとwatchOSだが、それらと比べるとiOSの進化は“順当”に見えるが、アップデートの内容は多岐にわたる。基調講演でフェデリギ氏が最初に紹介したのが、パフォーマンスの改善。Face IDによる認証のスピードが30%向上する他、アプリの起動速度は2倍に向上することが明かされた。また、アプリの容量自体も50%程度、削減されるようだ。2018年に登場した「iOS 12」では、過去の端末でのパフォーマンスを向上させることが大々的にうたわれていたが、その路線は継承する。

WWDC 2019 パフォーマンスの向上も継続。アプリの起動は2倍高速化するという

 新機能として搭載されるのが、「ダークモード」だ。システムレベルで黒を基調にしたデザインにすることで、暗い場所での視認性を上げるというのが、ダークモードの目的だ。iPhoneは、iPhone X以降の端末に有機ELのディスプレイを採用しているが、有機ELはベースが黒になり、表示する部分だけを発光させているため、副次的にはダークモードを利用することで節電効果が高まる可能性もある。とはいえ、これも既にmacOSで実現している機能で、目新しいわけではない。

WWDC 2019
WWDC 2019 ダークモードに対応。システムはもちろん、各種アプリも黒が基調になる

 一方で、搭載されるアプリケーションの数々は、より多機能に、洗練された形になる。その代表例が「マップ」アプリだろう。Apple自身が車を走らせてデータを収集したことで、マップの表示がより詳細になる他、Googleマップのストリートビューに近い「Look Around」も提供される。新マップは2019年末までに全米で展開。その他の国では2020年からスタートする。日本でもAppleのロゴをあしらった測定車の目撃情報は多く、2020年には対応するかもしれない。

WWDC 2019 「マップ」の情報がより詳細になる
WWDC 2019 Apple版ストリートビューともいえる「Look Around」

 また、リマインダーやメッセージアプリも強化される。リマインダーはUIを刷新しており、整理、確認がより容易になる。ユーザーのタグ付けも可能になり、メッセージをやりとりした際にリマインダーが表示される新機能も搭載される。メッセージには、ユーザーの名前や写真、ミー文字などを共有する機能が加わる。サードパーティーのメッセンジャーアプリでは、ある意味当たり前の仕様だが、より利便性が高まることは確かだ。作成したミー文字から、自動でスタンプのような「ステッカーパック」が作られる機能も搭載される。

WWDC 2019 UIを一新し、新機能も加わったリマインダー
WWDC 2019 ミー文字はパーツが増え、ステッカーパックの自動作成に対応。サードパーティーアプリでも利用できる

 写真やスクリーンショットなどの画像を管理する「写真」アプリは、機械学習の応用範囲を広げ、デザインも全面的に刷新する。デバイス上で写真の内容を分析し、メモのために撮ったような記録用写真や、重複した写真を除き、記念写真や作品として撮った写真をフィーチャーするというのが、新機能の主な特徴だ。編集機能も強化され、ビデオの回転やトリミングにも対応する。

WWDC 2019 写真アプリは機械学習を活用し、振り返りたい写真が表示される形に

 AirPodsの新機能にも注目したい。「iOS 13」では、新たにメッセージアプリやSiriKitに対応したアプリに届いたメッセージの読み上げに対応。耳につけっぱなしにしておくだけで、より多くの情報を受信できるようになった。常時耳に装着し、必要な情報を音として受け取るデバイスを指し、「ヒアラブル」と呼ぶことがある。Siriの利用が可能なAirPodsは、このジャンルにくくられるが、ヒアラブル端末として見ると、メッセージの読み上げができない仕様は中途半端ともいえる。iOS 13で、この点が大きく改善された格好だ。

WWDC 2019 AirPodsもメッセージの読み上げに対応

 サイト側の対応も必要になるが、「Sign in with Apple」が提供されるのも、大きなトピックといえる。同機能は、メールアドレスやSNSを使った認証に代わる仕組み。Apple IDを使って、さまざまなWebサービスにログインできる機能だ。プライバシーを重視するAppleらしく、メールアドレスが求められた場合、サービスごとにランダムなものを生成する仕組みも用意される。Face IDやTouch IDでの認証ができるため、入力も簡単。ユーザーにとっては利便性や安全性が高いだけに、対応サービスが広がるかは注目しておきたい。

WWDC 2019 Apple IDで各種サイトへのログインが可能になる「Sign in with Apple」

 各端末向けの新OSは、基調講演終了後にβ版が配信されており、配信は秋を予定する。同時に基調講演では、開発者が利用できる「ARKit」の次期バージョンや、アプリをより簡単に作成するための「Swift UI」なども発表されており、これらを活用したアプリも登場することになる。OSはもちろん、その上に乗るアプリやコンテンツの進化にも期待できそうだ。

(取材協力:アップルジャパン

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年