観客が集まるリアルな環境で、ネットワーク構築の知見を蓄積できるのも、ソフトバンクがプレサービスを行うメリットだ。実際に観客が入った状態のスタジアムで、電波の状況を確認でき、起りやすいトラブルなども事前に把握できるのは、ラボなどで行うテストとは違う、実地ならではのノウハウになる。先に挙げた周波数を選定した理由も、プレサービスならではといえる。
担当者によると、「今回は体験スペースを決めていたが、実際はスタジアム全体でつながらないといけない」といった違いはあるものの、「お客さんが前を通ると、電波の状況悪くなることもある。人体ロスも考慮しながら(設計する)という学びがあった」(同)という。4Gよりも、利用する周波数帯が高くなり、直進性が強くなるため、全体をカバーしようとすると、「場所の追加も必要なってくる」(同)。
ただ、ソフトバンクのプレサービスは、免許が与えられた本サービスの周波数とは異なるため、より“本番の環境”に近い実証実験も必要になりそうだ。端末も、現状では固定しており、ユーザーが手に取っているわけではない。本サービスでユーザーが端末を手に持ち、移動まですることを考えると、プレサービスよりも運用の難度はさらに上がる。プレサービスの次のステップにも、注目しておきたいところだ。
また、5Gならではのサービスやコンテンツも、まだリアリティーに欠ける部分がある。率直にいえば、ソフトバンクのプレサービスで見たそれぞれのコンテンツには既視感があり、現実味がどこまであるのかが、いまひとつつかめなかった。過去にさまざまな展示会で見たサービスにも同様のものがあるうえに、ドコモやKDDIも似たような取り組みをしているため、“ソフトバンクらしさ”があまり感じられなかったのも事実だ。
先の野田氏は、ソフトバンクの強みとして、膨大な基地局のサイトを既に保有していることや、Massive MIMOの技術を4Gで先行して採用したことに加え、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資するさまざまな企業のノウハウを持ち込みやすいことを挙げていた。「5G、IoT、ビッグデータを掛け合わせた、全体的なアプローチで取り組める」(同)というだけに、5G時代の、さらに具体的なサービス像を見せてくれることに期待したい。
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