世界を変える5G

5Gのオフロード用としても存在感を高める「Wi-Fi 6」の最新動向(1/2 ページ)

» 2019年10月04日 11時31分 公開
[山根康宏ITmedia]

 Qualcommは9月25日、26日とサンディエゴにある本社で最新ネットワーク技術動向のイベントを開催。初日に行われた「The Future of 5G Workshop」に続き、2日目はWi-FiやIoTの動向を説明する「Connectivity, Networking & IoT Day」を開催した。

Wi-Fi 6 Connectivity, Networking & IoT Day

5Gのオフロードとして重要になるWi-Fi 6

 今や身の回りにはあらゆる種類の電波が飛びかっている。数年後の家庭の中を見ればスマートホーム化により、家電だけではなくセンサーやスマートスピーカーなどが全てつながっていることが当たり前になる。その数ある無線技術の中で、Wi-Fiの役割がこれから重要な存在になろうとしている。

 Wi-Fiはもともと有線LANを無線に置き換える程度の目的で使われ、やがてPCやスマート家電にも利用されるようになるなど、その応用範囲は大きく広がっている。今では工場のセンサーをつなぐなど、アクセスポイントにつながるWi-Fi機器の数は急増している。スタジアムでは1つのSSIDに多数の端末のアクセスが集中するほどだ。

Wi-Fi 6 数年後の家庭内はあらゆる機器が無線で相互に接続される
Wi-Fi 6 Wi-Fiの登場から20年がたち、接続される機器の数は莫大に増えた

 Wi-Fiも次々と新しい技術進化を遂げてきたが、次世代Wi-Fiとして注目される「Wi-Fi 6」は、5G時代に欠かせない技術として今後の普及が期待されている。Wi-Fi 6は従来のWi-Fiの高速化だけではなく、OFDMA(直交周波数分割多元接続)、MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)などセルラーと共通の技術も採用されている。さらに高周波数帯を利用する60GHz帯のWi-Fiは5Gのミリ波技術と相似点もある。Qualcommは無線技術全般の技術開発を行っており、Wi-Fiに関しても2004年以来長年の研究実績を持っている。

Wi-Fi 6 Qualcommは2004年からWi-Fi関連の研究を行っている
Wi-Fi 6 Wi-Fiは生活になくてはならない技術になっている

 また、4Gで高速通信に慣れた消費者たちは、今後5Gを利用するようになると既存のWi-Fiの遅さを気にするようになるかもしれない。Wi-Fi 6なら5Gと変わらぬ高速環境をシームレスに提供することもできるのだ。5GとWi-Fi 6が相互に補完し合うことがユーザー体験を向上させるのである。例えば5GのCPE(ルーターなどの端末)にWi-Fi 6を搭載すれば、基地局から家庭内でCPEに接続するスマート機器まで高速なデータ環境を提供できる。

 現在もWi-Fiは4Gのオフロードとして使われるが、5G時代の2022年には59%のデータトラフィックがWi-Fiオフロードに流れるという調査結果もある。その2022年にはモバイルデータトラフィックは今の7倍に、中でもビデオ視聴はその半分を占めるまでになるという。高速大容量回線が必須の時代がやってくるのだ。

Wi-Fi 6 5G CPEにWi-Fi 6の搭載は現実的なソリューションだ
Wi-Fi 6 2022年にはデータ量が7倍に、Wi-Fiオフロードは6割に達する

 QualcommはWi-Fi 6対応の「FirstConnect 6200」チップを開発し、Snapdragon 855/855+を採用する250以上のスマートフォンなどに搭載済みだ。また上位モデルの「FirstConnect 6800」も開発している。

 QualcommのWi-Fiチップは8×8のMU-MIMO、1024QAM、5GHzと2.4GHzに同時接続する「デュアルバンド同時接続(DBS)」、Wi-Fi端末のバッテリー寿命を向上させる「ターゲットウェイクタイム」、WPA3セキュリティなどWi-Fi 6で必要とされる機能を搭載し、高速性だけではなく低遅延や接続パフォーマンスの向上、低消費電力などを実現している。さらにはネットワーク機器向けに4つのチップを新たに展開。

 「Qualcomm Networking Pro」シリーズとして4/6/8/12ストリーム(アンテナ)に対応する、「400」「600」「800」「1200」のモデルを提供する。

Wi-Fi 6 Wi-Fi 6対応のFirstConnect 6200は多くのスマートフォンに採用されている
Wi-Fi 6 ネットワーク機器向けにはユースケースに応じた4モデルを展開

 この他のWi-Fi技術として、60GHz Wi-FiやMesh Wi-Fiの紹介も行われた。60GHz Wi-Fiは5Gのミリ波同様に大容量通信や低遅延性に優れている。そのため、VRやゲーム用途に適した技術として期待されている。さらに消費電力が低い点も特徴だ。それに加えWi-Fiの電波をセンサーとして使う「RFセンシング」への応用も考えられている。センサーを別途設置せずとも、Wi-Fiだけで人の動きなどを感知することができるのだ。

 Mesh Wi-Fiは、室内に設置した複数のルーターを同一SSIDで利用できる技術で、既に商用化されている技術だ。Mesh Wi-Fiを利用すれば、広いエリアをあたかも1つのアクセスポイントでカバーしていることになる。米国では販売されているルーターの半数がこのMesh Wi-Fiに対応しており、スマートスピーカー機能を持つものも販売されている。さらにQualcommのMesh Wi-Fiプラットフォームを採用したRFセンシングロボットなども商用化されているとのこと。

Wi-Fi 6 60GHz Wi-Fiの特性。ゲームやVRに向いている
Wi-Fi 6 Mesh Wi-Fiは広いエリアを同一SSIDでカバーできる
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