ラインアップの中でもう1機種、異彩を放っている端末がある。LGエレクトロニクス製のG8X ThinQが、それだ。G8X ThinQは、9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAで発表された端末。最大の特徴は、デュアルスクリーン化できるケースを用意しているところにある。LGは、デュアルスクリーン対応モデルとして、5Gスマートフォンの「LG V50 ThinQ 5G」を販売しており、ドコモがプレサービス用の端末として導入。G8X ThinQは、その4G版にあたる。ソフトバンクで販売するG8X ThinQにはケースも付属し、「2画面スマホ」として打ち出していく予定だ。
ソフトバンクがG8X ThinQを導入したのは、「5Gを意識しているところが大きい」(郷司氏)という。5Gでは、通信が高速・大容量化し、マルチアングルの動画などもモバイル通信で配信できるようになる。G8X ThinQ自体は4Gにしか対応しおらず、5Gがサービスインしてもそのネットワークには接続できないが、「5G時代の感覚をユーザーに体験してもらえるよう、導入した」(同)。
これは、auが5Gを先取りする端末として、サムスン電子のフォルダブルスマートフォン「Galaxy Fold」を採用した理由に近い。ソフトバンクでは、G8X ThinQの発売に合わせ、「2画面であることを生かせるサービスを準備している」(同)という。
近未来感はディスプレイをそのまま折りたためるGalaxy Foldに軍配が上がる一方で、デュアルスクリーンケースを装着したG8X ThinQは実用度が高い。2つの画面をつなげて動画などを大画面で再生できないのは残念だが、「重いと思ったら、最悪、ケースを外して使っていただくこともできる」(同)のはメリットといえる。また、「2つの画面が両方アクティブになるのも特徴」(同)。
マップを見ながら位置情報を活用したゲームを遊んだり、ゲーム2つを起動させたりすることもできるという。価格は未発表ながら「税込みで10万円を下回る予定」(同)で、先進技術を惜しみなく投入したGalaxy Foldに対し、G8X ThinQはマルチスクリーンの現実的な解を示した格好だ。
Pixel 4シリーズも含めた秋冬モデル全体を見渡すと、ソフトバンクの導入するスマートフォンは、ハイエンドモデルの比重が高い。Pixel 4、4 XLやG8X ThinQが目立っているが、Xperia 5やAQUOS zero2も、パフォーマンスの要求されるゲームを快適に動かせることを売りにするほど、スペックの高いスマートフォンだ。対するミドルレンジモデルは「AQUOS R Comactシリーズの代わりに導入した」(郷司氏)というAQUOS sense3 plusのみで、電気通信事業法の改正に合わせてこの層の端末を拡充したドコモやauとは一線を画す。
あえてミドルレンジ端末を大幅に増やさなかったのは、「上期のモデルと合わせてポートフォリオを組むことに主眼を置いた」(郷司氏)からだ。夏モデルとして導入した「arrows U」や、「LG K50」を継続販売することで、ニーズに応えていくというわけだ。ただし、夏モデルと合わせて年間のラインアップを組むのはドコモやauも同じ。ソフトバンク固有の事情としては、「Y!mobileも意識している」(同)ことが大きい。
Y!mobileはサブブランドとして、安価な料金と、ミドルレンジ以下の端末を主力にしている。「そことはあまりバッティングしない形にした」(同)結果、必然的にハイエンドモデルの比率が高くなった格好だ。「10月以降、ユーザーがどう動くか分からなかったが、ローのゾーンはほぼ一定」(同)というように、メインブランドのソフトバンクでは、iPhoneやPixelを含めたハイエンドモデルが好まれる傾向が変わっていないことがうかがえる。
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