―― 先日の台風15号と19号で(基地局などに)被害を受けたと思います。業績に影響はあるのでしょうか。
吉澤社長 特に台風15号では、基地局の断(サービスの中断)が多く発生しました。千葉県では約半分の基地局が中断してしまいました。
しっかりと復旧をしましたし、それに伴い(復旧のための)人員も多く投入しましたが「ものすごくコストがかかったか」と言われれば、それほどではありません。
台風19号は広い範囲で水害が発生して、現在はほぼ復旧を終えたという状況ですが、災害救助法の適用に伴う「災害時データ無制限モード」(※)によって、10月や11月に本来得られるべき収入が少し減ってしまう程度です。
※ 災害救助法適用地域におけるデータ通信速度の制限解除措置に名称を付けたもの(ドコモの商標)
―― ということは、数字にするとそれほど(の減収)ではないということでしょうか
吉澤社長 数十億円程度でしょうか。
―― 基地局の予備電源について、総務省から強化を進める旨の話が出ていますが、今後の方針について、決まっていることがあれば教えてください。
吉澤社長 バッテリーの持ち時間について、中ゾーン基地局の約半分は(電源断から)72時間以上の稼働に対応していて、残りも24時間以上の稼働時間を確保しています。バッテリーを置く場所の問題もあり、72時間化をどこまで進められるか検討を進めている所です。
その他の基地局も含めて、全ての基地局で24時間超(稼働できる予備電源)を実現するのは現実的に非常に難しい所があり、まずは全ての基地局で6時間以上(の予備電源)を目標にしています。今後、(総務省が)検討会を開くと聞いていますので、その動向も注視したいと思います。
―― (全基地局の予備電源を24時間以上にするのは)経済効率の面で厳しいのでしょうか。
吉澤社長 それもありますが、特に都市部ではビルの屋上などいろいろな場所に(基地局を)置いていて、24時間以上稼働できるようなバッテリーを置くスペースがないことが多いわけです。停電の確率や時間、経済的な効率性を考慮に入れつつ検討していきたいと思っています。
―― 楽天モバイルが10月1日にMNOサービスを開始しましたが、「無料サポータープログラム」という形です。このことについてどうお考えでしょうか。
吉澤社長 私自身は(楽天モバイルのMNOサービスを)体験をしてはいないのですが、いろいろなメディアでの報道などを見る限りは、エリア構築が十分ではないのかなという印象を受けます。
(MNOとしての)基本中の基本は「つながる」ということだと思います。サービスが本格的に立ち上がる時期がいつになるか分かりませんが、本格スタートに向けて立ち上がってくる(エリアを整備していく)と考えています。
―― 以前、吉澤社長は楽天モバイルがMVNOを続けることについて否定的な見解を示していたと思います。同社はMNOサービスを始めた訳ですが、今後「回線を返してください」という話になるのでしょうか。
吉澤社長 (楽天モバイルは)無料ではありますが(MNO)サービスを開始しました。電波という「資源」を配分され、それを使って自分たちがネットワークを作っていく訳です。
基本的には(MNOは)配分された周波数を有効に使い、そこにお客さまを収容するべきだと考えています。ネットワークの構築や周波数を有効利用する技術の導入に向けた努力をしないで、MVNO(サービス)を提供し続けるのはいかがなものかと、いうことです。
そうは言いつつも、MNOとしてやっていくからには、いつかはMVNOとしての立場を解消するべきだと思っています。今後、MVNOサービスどうしていくのか、(楽天モバイルと)話し合いを進めるつもりです。
―― いつから話し合うお考えですか。
吉澤社長 これから、ということになると思いますが、「(MNOがMVNOを手がけることについて)どうするべきか?」という問いかけは総務省にも投げています。
これは楽天モバイルに限ったことではありません。KDDIの完全子会社であるビッグローブや、ソフトバンクの子会社であるLINEモバイルはドコモ回線を使ったMVNOサービスを今でも提供しています。これらの事例も含めて「どうするべきか?」ということです。
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