折りたたみスマートフォンは、本来なら1枚の板であるディスプレイを曲げることから、その開発に各社が苦労している。Samsungはサムスンディスプレイから、Huaweiは中国BOEからフォルダブルディスプレイを調達している。一方、サムスンディスプレイの競合となるLGディスプレイからは、まだフォルダブルディスプレイの商用化の話は出てきていない。LGは折りたたみスマートフォンではなくディスプレイ2枚を組み合わせた「LG WING」を出すなど、ディスプレイそのものをたたむことよりも、複数のディスプレイを組み合わせたスマートフォンをしばらくは投入するようだ。
また、3つ折りタイプの折りたたみスマートフォンのコンセプトを過去に発表していたTCLは、その次のステップとしてローラブルディスプレイの実用化を進めている。2020年9月頭にドイツ・ベルリンで開催されたIFA2020のプレスカンファレンスで、TCLは次世代スマートフォン用のローラブルディスプレイのコンセプトを紹介した。
ローラブルディスプレイを搭載したスマートフォンは、本体を横に引き出すと内部に巻いて収納されていたディスプレイが伸び、タブレットスタイルになる。折りたたみスマートフォンのようにヒンジ部分を開閉する必要がなく、スマートフォンサイズとタブレットサイズの切り替えも手軽にできる。とはいえ、曲げることですら難しいディスプレイを巻き取り、さらに引き出したり収納させたりする構造は容易に開発できるものではない。
それでも、スマートフォンの使い方が今後「動画ファースト」になれば、大きい画面で動画を見たいと考えるユーザーが増えるだろうし、動画を見ながらSNSをチェックするといった具合に、複数のアプリを使うことも当たり前になっていくだろう。Androidスマートフォンは画面分割で2つのアプリを同時に使えるものの、現状のスマートフォンのディスプレイサイズでは使い勝手はいまひとつ。Samsungはアプリの上にポップアップウィンドウで別のアプリを起動できるようにするなど、複数アプリを使いやすく同時利用できるUIを開発しており、スマートフォンでも2つ、3つのアプリを同時に使うことがこれから一般化してくだろう。
折りたたみスマートフォンやローラブルディスプレイ搭載のスマートフォンなら、シングルアプリを使うのは閉じたとき、複数アプリを使うのはタブレットスタイル、という使い分けもできる。また複数アプリを表示したまま外部ディスプレイにミラーリングを行えば、簡易的なPCとしても使えるだろう。
現状のスマートフォンでは、1つのアプリを使っている間は他のアプリが使えない。しかし複数アプリが同時に使えるようになれば、自社コンテンツとサービスを併用してもらえる機会が増える。スマートフォンのさらなる大画面化、複数アプリの同時利用はハードウェアやサービスを提供側も積極的に展開したいと考えているのだ。
ローラブルディスプレイは実はLGも開発を進めているという。LGは既にテレビで巻き取り式ディスプレイの商用化に成功しており、今後はスマートフォンクラスの小型ディスプレイまでそのラインアップを広げようとしているのだろう。もしかするとLGは折りたたみをスキップして一気にローラブルディスプレイを商用化し、Samsungに差をつけようとしているのかもしれない。
5Gの普及が進めばコンテンツはよりリッチになり、大容量のサービスを利用しても通信回線がパンクすることもなくなる。スマートフォンサイズで大画面が利用できるフォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイは、これからのスマートフォンの形状だけではなく、新しいアプリやサービスを生み出してくれるかもしれない。2021年にはさらに多くの折りたたみスマートフォンが登場し、5Gサービスの普及を後押しすることに期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.