世界を変える5G

「LINEMOの契約数は?」「プラチナバンド再割り当てはどう思う?」――ソフトバンク決算説明会一問一答(2021年8月編)(2/3 ページ)

» 2021年08月05日 00時00分 公開
[井上翔ITmedia]

5Gの展開や基地局の整備について

―― 5Gエリアの整備が進んでいると思います。そのことが(業績面で)ポジティブな影響は出てくるのでしょうか。

宮川社長 5G端末が出てきているので、ユーザーもどんどん増えている状況です。5G基地局が1.3万局を少し超えた所です。現在、私たちのLTE基地局は約23万あるので、それからすると、5Gの“明かり”の付くエリアはまだまだ少ない状況です。来年(2022年)の春までに5Gエリアの人口カバー率90%を実現する工事を進めています

 (計画通りに整備できると)基地局は5万局ほどで、そうすると5Gのクオリティーを生かす中でトラフィック(通信量)も自然に増えてくると思います。すると(Y!mobileやLINEMOから)ソフトバンクブランドの大容量プランに“戻ってくる”という動きも出てくると思います。

 5Gは今年からSA(スタンドアロン)化をするので、それに伴い(5G通信に対応する)IoTデバイスが増えると思います。現在、スマホは全体で1億7000万ほど普及したと記憶していますが、5GのSA化が始まると、これを1桁超えるIoTデバイスが入ってきます。課金の仕方やビジネスモデルを間違えなければ、現在のコンシューマー事業に匹敵する売り上げや産業の規模になるのではないかと考えています。

5G展開 ソフトバンクでは、2021年度中にSA(スタンドアロン)構成の5Gネットワークの運用を開始する予定となっている

―― 世界的に半導体不足が叫ばれています。基地局の建設や端末の調達に影響が出るという指摘もありますが、第2四半期以降に見込んでいる影響があれば教えてください。

宮川社長 半導体不足について、基地局については影響を受けていません

 これからの心配事としては、Appleさんが「iPhone(の生産)がこれから苦しい」という会見をしていたことです。iPadも欲しいだけ入ってきていない状況ではあるのですが、秋に向けてiPhoneの供給が間に合うかどうか、心配です。

―― 5G基地局の開設が遅れているとして、6月に総務省から行政指導を受けたと思います。遅れは解消できたのでしょうか。

宮川社長 6月の行政指導はお恥ずかしい話です。私は3月31日まで、その責任者であるCTO(最高技術責任者)をやっていたのですが、「基地局1万局」という計画に関する確認が甘かったということです。

 基地局の開設計画は、地域ごとに設置する計画数を申請する形で、それに基づいてライセンスが付与されます。残念ながら、立ち上げるべきエリアにおいて(計画数に対して)足りないエリアと、逆に多すぎるエリアがあったということです。

 コロナ禍で(基地局建設に関する)調整が全てオンラインでうまく行かなかったという“言い訳”をするつもりはありません。私の確認不足によるものであると考えています。

 おかげさまで、2020年度分の取りこぼしたエリアはリカバーできました。「2022年春までに人口カバー率90%」という高い目標を掲げている所ですが、今の所は順調だと確認できています。現時点では計画を修正する状況にはありません。

―― 総務省で3Gで使われている「プラチナバンド(1GHz未満の周波数帯)」の再割り当てに関する話が出ています。3Gサービスが終了するタイミングでいったん(総務省が)巻き取って、新たに割り当て直すという方向性のようですが、プラチナバンドで相当苦労してきた宮川さんのご意見をお聞かせください。

宮川社長 総務省とはあまりケンカはしたくないのですが……。

 (ソフトバンクの)900MHz帯は6年をかけて頂いた経緯があります。その間、ありとあらゆる勉強をしてきたつもりです。私たちが持っていたのは(旧ボーダフォンが保有していた)2.1GHz帯だけでしたので、「まずは言い訳なしで(2.1GHz帯を)使うだけ使ったら『おかわり』しに来い(新たな周波数帯の開設計画に応募しろ)」とのことだったので、根性論で15万局まで増やしました。最終的に18万局まで増やした上で(900MHz帯の電波を)割り当てていただいたということになります。

 5Gの大量トラフィックの時代になると、当時苦労して立ち上げた基地局が、結果的に私たちのトラフィックをオフロードするための局となっています。「キャパシティのあるソフトバンク」でいられるようになったので、結果的には(総務省に)感謝している所です。

 プラチナバンドの再編成については、我々を含む3キャリアには既にお客さまがいるということもあり、巻き取りにはお客さまとの会話が必要となります。(総務省には)ぜひ丁寧に話を進めていただきたいと申し上げているところです。

 基地局は「タワー(鉄塔)を建てて、無線機を設置して、電波を出したら終わり」というものではありません。毎年ソフトウェアのアップデートを、多い場合は年に2〜3回のペースで実施しないと新サービスに付いていけない環境にあります。ソフトウェアの代金も、数十億円に上るケースも出てきています。

 お客さまのサービスをより良くするために更新を行っている所ではありますが、(免許期間が)あまりに短いような割り当て方針を取ると、ソフトウェアの更新ですら滞って、サービスの劣化につながるということも総務省には申し上げています。

 ただ、今(総務省が)示している方針は、周波数がいったんキャリアに渡ると「既得権益」みたいなことになり、5年ごとに免許を常に更新し続けるという今までのやり方ではなく、どこかのタイミングで次の人たち(新規事業者)にもある程度周波数を使えるチャンスを与えようというものです。現状は、そのことを理解した上で、どうすれば実現できるのか議論している所です。

 プラチナバンドが欲しいという方の気持ちは、私もそうでしたからよく分かります。一方で、それを使えるようにするために、私たちはいろいろと“汗”を流してきましたから、「ないから欲しい」では議論にならないだろうというのが、正直な気持ちです。

店舗の運営に関する質問

―― 2020年度第1四半期と比べると端末販売が伸びたそうですが、これはリアル店舗の貢献もあるかと思います。昨今オンラインでの販売やサポートにも注力しているかと思うのですが、今後リアルとオンラインをどう使い分けていくのでしょうか。

宮川社長 リアルとオンラインの端末販売は、全く客層が違うと感じています。米国でも(携帯電話の)オンライン販売が伸びつつあると理解していて、私たちも「オンラインでできることはオンラインで」と強化を進めています。

 しかしながら、店舗で話をした上で契約したい、端末を買いたいという声も多いです。「携帯電話はデジタルの端末だが、使うのはアナログの人間」という視点から、コストは掛かりますが、リアルな店舗は維持し続けたいと考えています。バランスはオンラインが増えていくと思っていますし(会社としても)希望はしていますが、店舗がゼロになるということは現時点では想像できない状況です。

―― 宮崎県えびの市で3キャリアが持ち回りで臨時ショップを設置する取り組みが始まります。地方において店舗網を維持することについて、どのような問題意識をお持ちでしょうか。

宮川社長 地方での店舗の維持は、コストをペイできるだけの「費用対効果」があるかどうかに尽きます。

 「地方創生」という観点で「いろいろなデジタル化を進めてほしい」という声を頂戴して、私たちのDX(デジタルトランスフォーメーション)チームがいろいろな地方に出向いています。地方創生におけるデジタル化において、最後の最後につまずく要素としてスマホの普及率の低さがあります。これをどうにかしたいと思い、あらゆる手を使う中で、今回の(3キャリアによる)共同店舗につながったわけです。

 自治体をデジタル化したい。でも、その恩恵を受けるためには、住民がデジタルと触れ合うための窓口としてのスマホが必要です。片方のインタフェース(住民側)がアナログのままでは、自治体をデジタル化しても意味がありません。私たちのプロジェクトも、あらゆる場面でこの“壁”にぶつかっています。

 これを解決する手法として、地方で「スマホ教室」も一生懸命やっている所です。その中で出た“答え”が、先ほどの話ではありませんが「店舗を残してくれ」という声です。共同店舗は、それを実現するための手段でもあります。

えびの市 宮崎県えびの市に開設される「携帯電話臨時ショップ」は、住民側のデジタル化を進めることで自治体のDXも推進するという目的をもって開設されるという(参考リンク

―― 総務省や公正取引委員会から、販売店の評価制度や在り方を見直すような提言か相次いでいるように思います(参考記事その1その2)。それに対する受け止めを聞かせてください。

宮川社長 正直にいうと、店舗において、例えば「ソフトバンク」と「Y!mobile」のどちらを売ったかによって点数(評価)に差があったということは事実です。これは全て是正させていただき、(ブランド間の)壁がないように体制は整えたつもりです。

 ご指摘は真摯(しんし)に受け止めながら常に改善していくという方向です。現状が100点満点とは思っていません。指摘があったことはどんどん改善していきます。

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