モバイル業界では、間もなく発表されるとみられる次期iPhoneが注目を集めているが、中古業界では、いまだに「iPhone 8」や「iPhone 7」が売れ筋となっている。中古業者が発表するスマートフォンの販売ランキングを見ると、iPhone 8やiPhone 7が上位を独占している。iPhone 8は2017年、iPhone 7は2016年に発売されたモデル。4〜5年も前に発売されたモデルが、中古とはいえいまだに売れていることは驚きだ。
今回、中古スマートフォンを扱うゲオホールディングス(以下、ゲオ)と、中古iPhoneをメインに扱う「にこスマ」を展開しているBelongの2社に、中古iPhoneの売れ筋トレンドを聞いた。
まず、ゲオが強調するのが「コストパフォーマンスの高さ」だ。今、最新のiPhoneを新品で買おうとすると、最も安い「iPhone 12 mini」の64GBでも、Apple直販では8万2280円(税込み、以下同)となる。安価な「iPhone SE(第2世代)」でさえ64GBはApple直販で4万9280円だ。一方、ゲオだと良品でもiPhone 7は1万円台、iPhone 8は2万円台が中心となっており、新品の最新モデルよりも遙かに安く購入できる。「1万〜2万円台の割に、サクサク動作、高精細カメラ、Suica(Apple Pay)、防水と十分にニーズを満たすスペックであることに加え、長期で同じ端末を使い続ける傾向が高まっていることも一因だと考えています」(ゲオ)
Belongは、中古スマホ全般のトレンドを指摘する。「中古スマホは新品発売時から3年〜4年ほど経過したタイミングで、中古市場での取引数量が増える傾向があるため、現在はiPhone 7やiPhone 8が取引の中心になっています。また、市場での取引状況をみると、2020年はiPhone 7が最も多い状況でしたが、2021年はiPhone 8が最も取引されています」(同社)
にこスマでの価格は、iPhone 8(64GB、Aグレード)が2万3500円〜2万5000円、iPhone 7(32GB、Aグレード)が2万500円〜2万1500円だが、Bグレードなら最安値は1万7000円まで下がる。こうした価格の安さが人気を後押ししているのはゲオと同様だろう。
もう1つ大きいのが「Touch ID」の存在だ。iPhone 8までのiPhoneは、ディスプレイ下のホームボタンが象徴となっており、iPhone 5s以降はここに指紋センサーを搭載していた。一方、現行の「iPhone 12」や「iPhone 11」はTouch IDを採用しておらず、生体認証はFace IDを用いた顔認証を採用している。しかしコロナ禍でマスク生活を余儀なくされる中、Face IDはマスクを着用したままでは利用できない。Touch IDならマスク着用に関係なく使えるので、あらためて脚光を浴びている。
「iPhone 7、iPhone 8には物理ボタンがあり、指紋認証でストレスなく起動ができ、かつセキュリティも高いといった点で、再評価されました」(ゲオ)
「お客さまからは『顔認証ではなく指紋認証の機種にしたかった』という声も聞かれました。ロックを解除するときにいちいちマスクを外す煩わしさがあるFace ID端末より、Touch ID端末を選択するユーザーが増えているように思います」(Belong)
Touch IDモデルのニーズが増える中、にこスマでは2016年に発売された「iPhone SE(第1世代)」の人気もいまだ高く、7月の販売ランキングではiPhone 7を抑えて3位につけている。iPhone SE(第1世代)ならAグレードの価格は1万1000円〜1万2000円とさらに安い。
iPhone 8/7はまだまだ現役で使えるとはいえ、長く使うモデルほどバッテリーの劣化が気になるもの。中古iPhoneをせっかく安価に購入したものの、バッテリーがすぐに尽きてしまっては意味がない。販売する中古スマホは高品質の「三つ星スマホ」に特化しているにこスマでは、バッテリーの容量が80%以上のものしか販売しておらず、製品ごとにバッテリー容量を明記している。中には100%の製品もあるので、新品同様に利用できるはずだ。ゲオでもバッテリーの状態を店頭で明記することは検討しているとのこと。
また、iPhone 8/7は今秋リリースされるiOS 15は対応するが、今後の最新OSにどこまで対応するのかは未知数だ。それでも、少なくとも2022年の次期OSまではサポートするので、後1年は最新OSを利用できる。iPhone 8/7がいつまで売れるかは、最新OSのサポート状況にもかかっているといえる。一方、ゲオは「サポートが終了したモデルが全く売れなくなったということはありません。急な故障の代替機としての利用やWi-Fiとしての利用、カメラ、音楽、ゲームの専用機、子どものおもちゃなど、新たな活用方法が生まれています」ともコメント。OSサポートが終了した端末でも、中古市場では一定のニーズがあるようだ。
ホームボタンのない「iPhone X」以降のモデルはどうなのか。ゲオの場合、2021年度の第1四半期と前年を比較すると、「iPhone 8は120%に対し、次世代の『iPhone XR』は128%となっており、徐々に世代交代が始まりつつあると認識しています」とのこと。にこスマでは、iPhone X以降では「iPhone XS」が人気だという。9月時点での価格はCグレードで3万7000円〜、Aグレードでは4万4500円〜。「新品発売からもうすぐ3年たつこともあって価格もこなれてきており、『予算はもう少し出せるので、iPhone 8よりもう少し新しい機種が欲しい』というお客さまに選択いただくことが多いように思います」(Belong)
iPhone XRとiPhone XSはいずれも2018年に発売されたモデル。これらの製品が今のiPhone 8/7並みに安くなり、コロナが収束してマスク生活から解放されたら、iPhone 8/7と同等に売れることが期待される。一方、Belongが注目するのは「iPhone SE(第2世代)」。こちらはTouch IDも搭載しており、新品はいまだに売れている。「iPhone SE(第2世代)の取引価格がもう少し下がってくると、こちらも人気機種になってくるのでは」と期待を寄せる。
コロナの状況にもよるだろうが、中古業界ではまだまだTouch ID搭載のiPhoneが覇権を握ることになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.