ただ、ネットワーク規制を解除した後の発表の仕方には、課題も残る。ドコモは14日19時57分の規制解除を受け、「一部復旧」のお知らせを同日21時5分に掲載した。TwitterなどのSNSでも、同様の発信を行っている。また、一部メディアがこのお知らせに先立つ形で20時ごろにネットワークが復旧したことを報じていた。中には「完全復旧」をうたっていた記事も見受けられた。ただ、大々的に復旧した情報が広がったことで、それを知ったユーザーがスマートフォンを使い始め、ネットワークの混雑を助長してしまった恐れがある。
実際には、ネットワーク制限を解除しただけで混雑自体は解消されていなかったため、その後も使いづらい状態が続いてしまった。混雑自体が解消されていないことは、「一部回復」の「一部」に込められていたようだが、この表現では、通信が全て元通りになったという誤解を与えやすい。技術的には確かに別の事象ではあるものの、ユーザー側には、普段通りに通信ができるようになったと捉えられかねないというわけだ。
ネットワークの輻輳に関してはユーザーの発生させたトラフィックより「IoT端末の(切り戻し)の影響の方が大きかった」(引馬氏)というが、であればこそ、輻輳が継続している事実は、より分かりやすく告知すべきだったのではないか。通信障害発生時には、現場が混乱しているため、適切なアナウンスをするのは難しいかもしれないが、「なるべく分かりやすく、トラフィックが増えて輻輳してしまわないようにするのも検討課題」(代表取締役副社長 田村穂積氏)といえる。
告知に関しては、ドコモのネットワークを使うMVNOへの伝達がスムーズだったのかも検証が求められそうだ。例えば、IIJが通信障害をTwitterで報告したのは18時35分で、ドコモより30分近い遅れがある。ネットワーク規制の解除に伴うお知らせも21時50分で、時間差が大きい。対応には温度差もあり、お知らせすら出していないMVNOもあった。ドコモ回線を使うMVNOのユーザー数を考えれば、通信障害時に一斉に発表するような仕組みがあってもいいはずだ。
また、今回はスマートフォンや携帯電話を使うコンシューマーを巻き込む形で起こってしまった通信障害だが、ネットワーク規制をIoT端末だけに絞り込めていれば、ここまで大きな規模にはならなかった。引馬氏によると、「現状のロジックではIoTだけ、スマートフォンだけというような利用形態に応じた規制をかける機能が具備されていない。一律にかけざるを得なかった」との理由で、ドコモのネットワークにつながる全端末の規制に踏み切ったという。5G時代には、より膨大な数の端末がネットワークにつながることが想定されているだけに、トラブルの発生原因も増える可能性がある。将来的には、こうした機能の実装も必要になりそうだ。
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