Xperiaが国内Androidシェア1位に躍進した理由 「ミッドレンジが好調」だけにあらず(2/2 ページ)

» 2021年11月24日 17時28分 公開
[田中聡ITmedia]
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フラグシップモデルも高い評価、Xperiaユーザーの再購入も

 さらに、7月に発売されたフラグシップモデルの「Xperia 1 III」も、「高付加価値機種を望む層に非常に高く評価いただき、Xperiaユーザーの再購入や、他社からの買い替えを促進できている」とソニーはみる。ミッドレンジだけでなく、ハイエンドとミッドレンジモデルの両軸でシェアを改善できているというわけだ。

Xperia 2021年のフラグシップモデル「Xperia 1 III」

 Xperiaは2019年にシリーズを一新してフラグシップモデルの「Xperia 1」を発表。当時は斬新だった21:9の4K有機ELディスプレイを搭載し、カメラも3眼に対応して「瞳AF」を搭載するなど、意欲的なモデルとして注目を集めた。このXperia 1の2世代後のモデルとなるXperia 1 IIIは、ソニーのデジタル一眼カメラ「α」の技術をつぎ込み、被写体のリアルタイムトラッキングやリアルタイム瞳AFに対応、可変式望遠カメラも搭載した。

 スマホ事業で苦戦していた2017年〜2018年に投入していた「Xperia XZ」シリーズは、デザインや機能で迷走していた部分があり、後継機の「Xperia XZ2」より「Xperia XZ1」の方が売れるという逆転現象も起きていた。半年に1回という新製品登場のサイクルにも無理があったように思える。

Xperia Xperia 1シリーズ以前のフラグシップモデルである「Xperia XZ2」(左)と「Xperia XZ1」(右)

 現在のフラグシップモデルは春に正統進化した「1」シリーズ、秋にコンパクト版の「5」シリーズを投入するサイクルに落ち着いている。さらにソニーはその合間に、よりとがったフラグシップモデルとして、5G通信性能を強化した「Xperia PRO」や、α譲りの1型センサーカメラを搭載した「Xperia PRO-I」も投入。ソニーはXperia 1以降、「好きを極める」というコンセプトを打ち出し、同社が得意とするカメラ、オーディオ、ディスプレイ、ゲームなどの機能を突き詰めた。その結果、製品開発にブレがなくなり、ソニーにしか作れないスマートフォンが出来上がったと感じる。こうした開発思想が支持されたことも、シェア回復の一因といえる。

楽天モバイルやオープン市場に販路が拡大

 販路が広がったことにも注目したい。ソニーは2020年に「Xperia 1」「Xperia 5」「Xperia 1 II」のSIMロックフリーモデルをソニーストアや家電量販店で販売開始し、2021年は「Xperia 5 II」と「Xperia 1 III」もSIMロックフリーのラインアップに加わった。同社は「Xperia 5 IIをSIMロックフリーモデルとして販売開始したことに加え、通信キャリア様でのXperia商品のお取り扱いが拡充したことで、通信キャリアの利用者様に応じた商品ラインアップのご提案が届きやすくなってきたことも要因と考えています」と説明する。

 具体的には、Xperia 1 IIIは大手3キャリアが扱い、楽天モバイルもXperia 10 III Liteを扱っている。オープン市場ではMVNOの取り扱いも増えている。こうした販路の拡大も、スマホ事業が低迷していた頃とは大きく異なる点の1つだ。


 「ミッドレンジモデルのヒット」「フラグシップモデルの復権」「販路の拡大」――これら3つが、ソニーがスマートフォンでシェアを回復できた要因といえる。ミッドレンジモデルで足場を固めながら、メーカーの顔となるフラグシップモデルではソニーの技術を惜しみなく注ぎ込む。それらの端末を幅広い販路で取り扱うことで、より多くのユーザーに届けられる。ソニーのスマホ事業は、これまで足りなかったピースがはまり、回復基調から好調に転じたといえるのではないだろうか。

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