船乗りの視点で「G'zOne TYPE-XX」をレビュー 船上でどこまで使える?勝手に連載!「海で使うIT」(1/3 ページ)

» 2022年03月08日 10時30分 公開
[長浜和也ITmedia]
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 2021年12月の登場以来、「G'zOne TYPE-XX」は多くの媒体やSNSで紹介されている。G'zOneブランドの人気とアウトドアでの使用に耐えうる道具に対する関心の高さを改めて示しているといえる。

 この記事では、G'zOne TYPE-XXに対して、これまでの一連の連載と同様にアウトドア、特にパワーボートやセーリングクルーザー(この記事では日本で主に使われている「ヨット」という単語を用いる)で操船操帆しながら使用する状況を想定して使い勝手を評価する。なお、これまでの多くの記事が言及してきたデザインや製品コンセプト、G'zOne TYPE-XXの世界観とブランドイメージに込めた開発と商品企画当事者の思いについては、他の“まっとうな”レビュー記事やKDDIが用意したG'zOne TYPE-XXの公式Webページを参考にされたい。

G'zOneレビュー タフネスデバイスはこの船にやってくる。G'zOne TYPE-XXも例外ではない

ボタンを使えば荒天でも確実に操作できる

 G'zOne TYPE-XXの存在価値は、「3G版G'zOneシリーズをほぼそのまま4Gとして使うために登場したモデル」という表現に尽きる。KDDIの3Gサービス(正しくは3G通信サービスの「CDMA 1X WIN」)が2022年3月31日に終了するにあたって、3G世代のG'zOneユーザーを救済する必要があった。KDDIの自社調査の結果でもあるように、3G世代のモデルを使い続けているユーザーの中でもG'zOneシリーズユーザーはその98%が3Gモデルと依存度が突出している。

 これらのユーザーに3Gモデルから4Gに乗り換えてもらうのが(KDDIは製品発表会でいろいろと理由は述べているものの)、G'zOne TYPE-XXを“この姿”で投入した最も直接的で切実な理由だろう。

 3G時代に購入してそのまま使っているユーザーの多くにとって、G'zOneを使い続ける理由は、どんな環境条件でも“連絡手段”として使える堅牢(けんろう)性だ。3G世代G'zOneで使ってきた連絡手段、すなわち音声通話とメール(キャリアメール)が従来のモデルと同じように使えればまずは十分となる。

 雨に降られる、もしくは、波浪をかぶってぬれた状態でも使うことがあり得る“全天候型”ハンディデバイスとしては、タッチパネルを搭載せずにボタン操作で完結することも使い勝手に大きく影響する。ディスプレイのタップ、フリックが必須のスマートフォンではディスプレイ面がぬれると、タッチパネルが指の動きを正確にトレースできなくなり、最悪の場合、誤動作まで起きてしまう。いくら本体が堅牢であっても唯一のマンマシンインタフェースデバイスが使えなくなっては、いざデバイスに頼りたい荒天航海で頼れないという事態に陥ってしまう。

 その点、G'zOne TYPE-XXは「物理ボタンを押す」という動作で確実に操作できる。アプリのメニュー構成などデバイス全体としての使い勝手はソフトウェアの作りにも依存するので、これだけで最強最適なアウトドアデバイスとは評価できないが、少なくとも荒天航海でも確実に操作を認識してくれるという視点において、G'zOne TYPE-XXは4G LTEに接続できる最強最適なアウトドアデバイスの1つといえるだろう。

G'zOneレビュー 日光下におけるディスプレイの視認性もアウトドアギアの重要な要素だ。最大輝度ならば晴天下で問題なく視認できる。ただし、光沢タイプなので周辺反射には注意したい

結局のところ、頼れるのは内蔵アプリ

 いま述べたように、アウトドアの道具としての評価では、ハードウェアだけでなく導入しているソフトウェアも重要になる。特に使い方が特殊なアウトドアでは、それぞれの目的に最適化した機能と操作方法を備えていることが望ましい。Androidを導入したスマートフォンとなったG'zOne、そしてその後継たる京セラのTORQUEでは、ユーザーがアプリを導入することで、利用局面に合わせて特化することが可能だった。

 G'zOne TYPE-XXはAndroidベースのOSを採用しているが、AndroidスマートフォンのようにGoogleのPlayストアからユーザーが自由にアプリをダウンロードして利用することはできない。世の中にはPlayストアに対応していない端末に導入するためにapkファイルをまとめているサイトもあるし、G'zOne TYPE-XXにも開発者モード的なソフトウェアインストール許可設定を用意している。加えて、“apkファイルをまとめているサイト”には「C-MAP」をはじめとする電子海図&航法支援アプリがそろっている。

 だが、公式なアナウンスとしてはKDDIが公式に設けているauスマートパスで提供している4Gデバイス対応アプリもしくやWebアプリ以外の導入は認めていない(それに“apkファイルをまとめているサイト”から件のapkファイルをダウンロードしてユーティリティーなどもろもろ設定したPCからインストールを試みたものの、エラーを吐いてできなかった。てか、やってみたんかい)。

 auスマートパスで提供している4Gデバイス対応/Webアプリにはアウトドア利用に特化したものは現時点でない。そのため、G'zOne TYPE-XXをユーザーサポートが受けられる範囲内で使おうとすると、既に組み込んであるアプリの機能をアウトドアシーンでどうしたら活用できるか工夫することになる。なお、組み込んであるアプリはカシオ計算機時代のG'zOneと異なり、G'zOne TYPE-XXは京セラが開発したOUTDOOR APPSを導入しているので、その操作手順や機能は以前レビューを掲載した3G世代のG'zOne TYPE-RG'zOne W42CAと異なる。とはいえ、携帯電話に組み込んだアプリをアウトドアの道具として使う“苦労と手間”という意味では大きく変わらない。

G'zOneレビュー Playストアからアプリを導入できないG'zOne TYPE-XXのアウトドア機能は京セラが開発した汎用(はんよう)のOUTDOOR APPSに依存することになる
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