楽天モバイルの代表取締役社長、矢澤俊介氏は「離脱(解約)に関してはもちろんゼロではないが、ほとんどが残っていただけるのではないか。データ利用料が少ない方でも、楽天市場でのお買い物がものすごくあれば、ポイントを6倍(楽天カード契約などを含む)にしたのでトータルでのメリットがある」と語っていたものの、ポイント還元を理由に低容量のユーザーが本当にとどまるのかは未知数だ。先に挙げたように、3GB以下の場合、他社の方が金額的には安価になるため、楽天モバイルが草刈り場になる恐れもある。
楽天モバイルへの対抗としてpovo2.0を基本料0円にしたKDDIにとっては、ユーザーを奪い返すチャンスが到来したといえそうだ。同日開催されたKDDIの決算説明会では、代表取締役社長の高橋誠氏が「povoでも0円スタートをやっているが、あの0円と楽天モバイルの0円では意味合いが違う」とコメント。「今のところ(0円を)やめる理屈がない」と継続的に提供する意向を表明した。
povo2.0は基本料0円だが、そのままの状態だと通信速度は128kbpsに制限される。高速通信を利用するには、有料のトッピングを購入したり、「ギガ活」と呼ばれるキャンペーンを行っている店舗で決済をしたりして、クーポンコードを取得する必要がある。「0円から始まるが、その上でトッピングによる価値を提供している」(同)ため、楽天モバイルの1GB以下0円とはビジネスモデルが大きく異なる。サブ回線としてもしもの時のために無料で回線を維持したいユーザーは、ここに流れる可能性が高い。
楽天モバイルのUN-LIMIT VIでユーザーを奪われたMVNOも、少なくない。例えば、mineoを運営するオプテージは、11日に開催された総務省の有識者会議で、同社からの転出先として最も多いのが楽天モバイルだとしつつ、「MVNOにとっては大きな脅威」だと語った。価格にセンシティブな低容量のユーザーが、この1年でMVNOから楽天モバイルに移ってしまったとみられる。こうしたMVNOにとっても、UN-LIMIT VIIの導入はユーザーを取り戻すチャンスといえる。
一方で、収益性が改善されることなるため、楽天グループの株価は上昇している。同社の契約者数は、500万に拡大しており、収益基盤が固まりつつある。コスト面で重石になっているKDDIのローミングも自社エリアの拡大とともに減りつつあるため、黒字化を達成できる確度は上がったといえる。0円で利用していたユーザーをどの程度つなぎとめておけるのかにもよるが、もともと、コストにしかなっていなかったため、解約されても収益面ではプラスになるからだ。ただ、もう少しスマートに料金プランを移行する術はなかったのか。信頼を取り戻すには相応のコストがかかるだけに、今回の料金プラン変更のやり方は禍根を残しそうだ。
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