クラウド処理で運賃を確定して、処理を1日分まとめて確定するというやり方によって、「柔軟な運賃設定ができる」と高田社長。
クラウド上で運賃計算をするため、運賃や割引の設定が簡単に変更でき、一斉に適用できる。まとめて1日分を確定させるため、乗車後に特定の条件で運賃割引をするといった設計もできる。
例えば南海電鉄と南海フェリーでは、1日の間に鉄道とフェリーの乗車をした場合に、鉄道の料金を無料化する「スマート好きっぷ」サービスを提供。大阪のなんば駅から和歌山港駅までの乗車料金は930円だが、その日のうちに南海フェリーに乗船すると、鉄道運賃が0円になり、フェリー料金の2200円だけが翌朝に確定する。
他にも、例えば観光路線で、周辺エリアにおける買い物などの利用額によって運賃の割引をするなどの連携が可能になる。こうした設計が可能なため、「いつものクレジットカードで乗車できる」というクレジットカードのタッチ決済が強みとなる。
こうした点も、三井住友カードの大西社長がstera transitを推進する理由だ。「公共交通を起点として、周辺消費の促進や観光地の活性化などの幅広い効果を期待できる」と大西社長。
もう1つの柔軟な運賃設定が上限運賃制だ。これは、1カ月、1週間、1日といった具合に特定期間内に一定の利用額に達したら、その後は運賃を徴収しないというもので、海外では比較的一般的な仕組み。周遊券や1日乗車券、定期券のような使い方ができる。
定期券や周遊券を事前に購入する必要もなく、現金での支払いもないことから、利用者の利便性だけでなく、事業者側のコスト削減にもつながることが期待できる。stera transitでは2022年秋に、神戸市内で運行する神姫バスにおいて「上限運賃適用サービス」の実験を行う予定だ。上限があれば旅行者の回遊性が増して、クレジットカードの購買による周辺加盟店の利用増も期待されている。
こうした利用増によって、クレジットカード会社が持つ決済データがさらに拡充されることもメリットとして挙げられている。交通事業者はこれまで乗車動向しか計測できなかったが、周辺の消費データを合わせて観光施策を打ち出したり、観光地が交通との連携施策を検討したり、決済データを生かした取り組みが可能になるとしている。
三井住友カードでは、利用者の属性と乗降・購買データを統計処理して提供し、交通を含めた地域の横断的なマーケティングに活用するなどの活用ができるように開発を続けていく考えだ。
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