ドコモは4期ぶりに増収増益 ギガホ/ahamoの拡大で通信事業も増益を目指す

» 2023年05月12日 21時35分 公開
[田中聡ITmedia]

 NTTドコモが5月12日、2022年度通期の決算を発表した。売り上げは6兆590億円で前年比3.2%増、営業利益は1兆939億円で前期比2%増。2018年度以来、4期ぶりの増収増益を果たした。

NTTドコモ 2022年度は4期ぶりの増収増益となったドコモ

 好調の事業を支えたのが、法人とスマートライフの2領域だ。法人の売り上げは1兆8057億円(+5%)、営業利益は2826億円(+12.3%)、スマートライフの売り上げは1兆1145億円(+16%)、営業利益は2053億円(+3.8%)と増収増益だった。

NTTドコモ 法人とスマートライフの事業が好調な業績をけん引した

 一方、コンシューマー向け通信事業は、モバイル通信サービスの減収が響き、売り上げ3兆3874億円(−1.4%)、営業利益6060億円(−2.8%)の減収減益となった。ただし、「ギガホ」や「ahamo」などの中大容量プランを拡大したことで、減少幅は抑えられており、「業績の見通しは上回っている」と井伊基之社長は手応えを話す。販売チャネルやネットワークなどのコスト効率化も図っていく。

NTTドコモ ドコモの井伊基之社長

 2023年度は、中大容量プランのユーザーを増やすことでモバイル通信サービスは2022年度と同水準の売り上げを目指して減収幅をさらに縮小させ、「増益の転換を狙う」と意気込む。小容量プランはエコノミーMVNOでカバーしていくが、具体的な追加戦略が決まっているわけではなく、井伊氏は「これからも激しい競争が続くと理解している。単純に値段だけの競争ではいけない」と述べるにとどめた。

NTTドコモ ギガホやahamoの中大容量プランを拡大することで、モバイル通信サービスの収入減少を抑える

 成長ドライバーである法人とスマートライフの領域では、子会社のNTTコミュニケーションズとNTTコムウェア(通称、コムコム)の総合力を駆使し、対2020年度で1670億円の増益を目指す。

NTTドコモ DCC(ドコモコムコム)の総合力で、法人とスマートライフは2020年度比で1670億円の増益を目指す

 スマートライフ事業では金融・決済サービスと映像サービスを柱とする。金融・決済サービスでは刷新した「d払い」アプリを起点に、投資や融資など、ライフスタイルに合った金融サービスを提案していく。金融決済取扱高は11兆円に伸び、2023年度もさらなる拡大を見込む。5月にはdTVをリニューアルして新たな映像サービス「Lemino」を提供。早期に2000万MAU(月間アクティブユーザー)を目指し、映像サービスを起点とした経済圏や広告ビジネスの強化を図る。

NTTドコモ 金融・決済サービスと映像サービスを軸とするスマートライフ事業

 5G契約数は2023年度末までに2820万を目指し、5Gの人口カバー率は2023年度末に90%を達成する見通し。2022年度のARPUは年間3940円の予想だったが、好調に推移して4050円まで上昇。2023年度は年間4030円となる見通しで、中大容量プランの比率が増やすことで下げ止めを目指す。その中大容量プランの拡大に向けて、ドコモは4月から、ahamoやギガホのユーザーが対象コンテンツを契約すると、dポイントを還元する「爆アゲセレクション」を提供している。現在はNetflixやYouTube Premiumなどが対象だが、「対象サービスは要望を踏まえて順次拡大していく」(井伊氏)とのこと。

NTTドコモ ARPUは2022年度を底として上昇を目指す
NTTドコモ ジュニア層、若年層、シニア層に顧客基盤を拡大しながら、中大容量プランの拡大を狙って爆アゲセレクションを提供する

 チャネル運営について、ドコモショップは、生活やビジネスの関心や困りごとに寄り添う「スマートライフショップ」を目指す。並行して、オンラインで相談したりショップの手続きをしたりできる「ドコモのオンライン窓口」も提供していく。

NTTドコモ ショップ運営はリアルとオンラインのハイブリッドで展開する

 通信障害や品質低下などで何かと話題のネットワークの戦略についても、井伊氏は改めて言及。ネットワークを安定運用すべく、装置を単体で監視する従来の方法から、通信サービスを構成するシステム群を監視する手法を導入する。7月には開発と運用一体の体制を確立し、サービス品質マネジメント組織も設置する。局所的に4Gの通信速度が低下している現状に対しては、2023年夏頃までにエリアのチューニングを実施し、長期的には新周波数を用いた「瞬速5G」の基地局を拡大していく。

NTTドコモ ネットワークの安定運用と通信品質の向上に向けた取り組みも改善する

 一方、中大容量プランの契約者が増えると、それだけ使用するトラフィックも増大する。4Gネットワーク品質低下の背景の1つが、トラフィックの増加であることを考えると、難しいかじ取りを迫られている。

 加えて、「お客さまの使い方が以前から変わってきている」と井伊氏。「特に10代が相当使っていることが、モバイル空間統計で調べると分かる。今まで以上に映像コンテンツを街の中でご覧になっている」

 「だからといって、ネットワーク全体を増量すると無駄になるので、いかにマイクロマネジメントをして、どのへんで容量が不足するかをいち早くキャッチして対応していく」との方策を説明した。

 Opensignalが4月に発表したネットワーク品質調査では、5Gの品質はソフトバンクが最も優れており、ドコモが逆転されるという結果になった。この点については「具体的には数点の差。しかも高いレベルで。ここの差で勝った負けたと言うのがいいのかなというのが気持ち。日本のキャリアが高い水準にあることを示しているのではないか――と都合よく解釈している」とコメントした。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年