マイナンバーカードでチケット不正転売の抑止へ デジタル庁やぴあなどが実験

» 2023年09月06日 15時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 デジタル庁、ぴあ、ドリームインキュベータは9月5日、マイナンバーカードをエンタメ領域で活用する実証実験を行うと発表した。3者はイベント会場での本人確認や、酒類の提供時における年齢確認などにマイナンバーカードを活用する。他にもマイナンバーカードの活用でイベントチケットの不正販売の抑制につなげる意向が示された。

マイナンバーカード エンタメ活用 マイナンバーカード

 同日の会見には河野太郎デジタル大臣、大串正樹副大臣、ぴあ取締役の東出隆幸氏、ドリームインキュベータの三宅孝之社長が登壇し、概要と狙いを語った。

マイナンバーカード エンタメ活用 左からドリームインキュベータの三宅孝之社長、ぴあ取締役の東出隆幸氏、河野太郎デジタル大臣、大串正樹副大臣

 実験の内容は次の3つに分類される。

  • イベントの特設エリアへの入場時にマイナンバーカードを活用
  • 酒類などの提供時における年齢確認にマイナンバーカードを活用
  • チケット不正転売防止にマイナンバーカードを活用

イベントの特設エリアへの入場時にマイナンバーカードを活用

 チケット販売大手のぴあが9月30日と10月1日に東京江東区で開催する「PIA MUSIC COMPLEX 2023」などではマイナンバーカードでの本人確認を行う。イベントの特設エリアマイナンバーカードで本人確認を行い、特設エリアの利用対象者を識別する実験が行われる。

 デジタル庁によると、初回入場時にのみ機械にマイナンバーカードをかざしてもらい、特設エリアへの入場を許可することを示すリストバンドを配布する予定という。そのため、利用者がエリア入場ごとにマイナンバーカードを提示せずに済み、提示の手間と負担を極力減らせるという。

マイナンバーカード エンタメ活用 特設エリアへの入場時にマイナンバーカードを活用
マイナンバーカード エンタメ活用 「PIA MUSIC COMPLEX 2023」の概要

酒類などの提供時における年齢確認にマイナンバーカードを活用

 新規事業の創造を支援するドリームインキュベータが9月16日に福島県南相馬市で開催する「Surf in MUSIC」や、PIA MUSIC COMPLEX 2023などでは酒類の提供時にマイナンバーカードで購入者の年齢を確認する。

 酒類の提供対象者は20歳以上となる。Surf in MUSICではチケット購入後にマイナンバーカードによる年齢確認を行い、チケットの情報と年齢情報をひも付ける。PIA MUSIC COMPLEX 2023ではイベント会場への入場時に年齢確認後、手の甲にスタンプが押され、酒類が提供されるという。マイナンバーカードはあくまで持ち主と酒類提供に必須となる年齢確認に活用される。

マイナンバーカード エンタメ活用 酒類の提供時における年齢確認などにマイナンバーカードを活用する
マイナンバーカード エンタメ活用 「Surf in MUSIC」の概要

マイナンバーカードでチケット不正転売の抑止を

 イベントのチケットについては昨今課題とされる不正転売の抑止につなげるべく、マイナンバーカードによる本人確認が実施される予定だ。大串副大臣によると、実験を行う事業者は9月5日時点において未定となっており、契約候補者と調整を行っているところだという。

 デジタル庁は体調不良や急な予定変更など、やむを得ぬ事情でチケットを第三者に転売できるよう、公式2次流通サイトを整備する方針だ。大串副大臣によると、転売者と購入者の双方にマイナンバーカードでの本人確認を実施する他、転売チケット購入者がイベント会場に入場する際にも通常レーンとは別にレーンを設けて、マイナンバーカードによる本人確認を必須とする。

 この仕組みとした理由について同氏は「1人1枚しか転売チケットを購入できないようにするため」と説明。他にも「偽名や複数のアカウントを用いた複数枚購入や、大量転売などの抑止につながる」とした。

マイナンバーカード エンタメ活用 マイナンバーカードでチケット不正転売の抑止を図る

マイナンバーカードの利用シーンを広げる狙いも

 今回の実験の目的は「マイナンバーカードのメリットを実感してもらうこと」に加え、「利用シーンの拡大を図りたい」というデジタル庁の意図もある。

 河野大臣は「まずはエンターテインメントの分野でマイナンバーカードを活用してもらい、マイナンバーカード活用の効果が実証できれば、エンタメ分野にとどまらずさまざまな民間企業での活用も期待できる」とのコメントを述べた。

 大串副大臣は「実験結果を踏まえた上でさまざまな分野でマイナンバーカードを活用してもらうべく尽力していく」との意向を示した。マイナンバーカードの申請枚数は8900万枚を超え、交付枚数は人口の70%を超えたことから、デジタル庁としてはマイナンバーカードの利活用によるメリットや、利便性の認知訴求に努めたい考えのようだ。

 ぴあが今回の実験に参加した理由について、同社取締役の東出隆幸氏は「われわれとしてはお客さまの利便性の向上だけでなく、イベント主催者の業務効率化にも寄与するのではないかと考え、実験に参加することを決めた」と説明した。加えて、「何が有用性があるのか、有効活用できるのかを実験を通して見極めていきたい」と期待を寄せた。

 ドリームインキュベータの三宅孝之社長は「今後、地方創生を目的とした町おこしや、観光のイベントにマイナンバーカードの活用が広がっていくと見込み、地域のイベントを中心に実験場所を決めた」と話し、「自治体や事業者の負担をなるべく減らせるようにするため、実験を通してデジタル化がマイナンバーカードで進むかどうかを見極める」とした。

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