―― 一方で、トクトクプランからは節約モードがなくなってしまいました。
長谷川氏 トクトクプランになじまなかったからです。1GBであれば割引をさせていただく形にはなっていますが、節約モードで使ったぶんはどっちになるのかという話になると、ややこしくなってしまいます。条件が複雑になるので、使わなかったときのお得を優先させるため、節約モードは入れられませんでした。ただし、ミニミニプランには残っています。
―― コミコミもないですよね。
長谷川氏 これはコンセプトがahamo寄せだったからです。あまり考えず、音声とデータがある程度たっぷり使えるというのがコミコミプランのコンセプトです。ミニミニにあって、トクトクになく、コミコミにはあるとなると、何でトクトクにはないのという話にもなる。
福澤氏 ただ、社内では議論もありました。
長谷川氏 あの機能をいいと思ってくださるお客さまはいたので、これを捨てていいものかどうかは悩みました。
―― 節約モードでずっと使われてしまうと、ARPUも上がらなそうですが、その点はいかがですか。
福澤氏 確かに動画も見られる速度ではあるものの、画質は妥協しなければなりません。5Gが浸透しているなか、コンテンツもリッチ化しています。スマホの小さい画面でも、キレイな動画を見たいニーズは大きい。確かにうまく使っている方は料金を抑えられるかもしれませんが、そこまでARPUに大きな影響があるわけではありません。
長谷川氏 容量を超えてしまい、速度が1Mbpsや300kbpsになってもそれはそれとして、そのまま使う方も多くいます。節約モードは、低速でいいアプリは低速で、高速で使いたいときには高速でと制御できる仕組みですが、そういったことをよく分かっていないと、低速のまま使って「何か画質が汚い」となってしまいます。ある意味よく分かっているお客さま向けのもので、あれがないからといってプランが選ばれなくなるわけではありません。
福澤氏 実際、中学の息子がそうで、LINEが全然動かないと言われたので、たぶん節約モードだなと思ったら、案の定そうでした。知らない人からすると、分かりづらいのかもしれません。
―― 節約モードのまま使い放題になってしまうと、一部の人がネットワークを占有して公平性の問題も出てくるような気がしています。そのレベルにはなっていないという理解でよろしいでしょうか。
長谷川氏 全体のトラフィックを見たとき、他のお客さまにご迷惑をおかけするレベルかというと、そうではありません。ただ、金額として2000円お支払いいただいているお客さまと4000円お支払いいただいているお客さまで公平かというと、確かに不公平なところはあります。
―― もう1つ、くりこしがありますが、これはコミコミプランも対象です。先ほどからahamoを引き合いに出していますが、くりこしがあるのも対ahamoとして見たときの強みですね。
長谷川氏 こんなにahamo、ahamoと言っていると、僕がahamoを好きなように見えてしまうかもしれませんが(笑)、ahamoにはこれだけで済むという完成度があったのは事実です。ただ、まったく同じだったら、もっと早くやれと思われてしまう。何年もたっているので、ご不便だと思われているかもしれない点は強化しています。
―― 今回、プランLがコミコミになったことで、これまでだったらauを選んでいた人がUQ mobileに流れてしまうようなケースもあるような気がしました。プランに特徴を出した結果、auへのアップセルがしづらくなっているということはないですか。
長谷川氏 UQ mobileをご利用の方にauをお勧めすることはありますし、前のプランM、プランLや今回のトクトク、コミコミの方が容量を超えてしまうこともあります。そういった方には、auの使い放題を紹介することもあります。OTTのサービスやマネ活のような金融サービス連携、auならではの至れり尽くせりなサービスも用意しています。こういうものが面倒くさくなくていいと思っていただければ、auも1つの選択肢になり、日常的に移っていただけています。今の金額差やデータ容量の差で、auを選びにくいということにはなっていないと思います。
―― 金融連携ですが、auマネ活プランが発表された際に、UQ mobileでの導入も示唆されていました。
長谷川氏 まずはauでやらせていただいているのは事実で、今後どういった方にマネ活プランをお選びいただけるのか(を見ていきます)。マネ活の素材となるサービスは他にもあるので、分析も含め、他のブランドにどう広げていくかはこれから考えていきます。
コミコミプランは、もともと選択率が低かったプランLをテコ入れするのと同時に、勢いのあるahamoや楽天モバイルに対抗する狙いがあった。割引なしで音声通話定額が込みなのは、そのためだ。結果として、コミコミプランを選ぶユーザーの数は数倍レベルで増えたという。一方で、依然として主流なのは、15GBのトクトクプラン。割引前提だが、主流といえる15GBの中容量でコミコミプランより料金が安くなるのは大きい。S/M/Lの3本立てより分かりづらくはなっているが、ユーザーニーズはきちんと満たせているようだ。
ただ、10月にはUQ mobile最大のライバルともいえるY!mobileが料金を改定する。同社の「シンプル2」では、Mプランが15GBから20GBにデータ容量を拡大。トクトクプランと同額ながら、データ容量では5GBもの差がつけられている。データ使用量が少なかった月に割引がある点も、キャッチアップされた。コミコミプランで対ahamo、対楽天モバイルを明確に打ち出したUQ mobileだが、このままだとシンプル2に対しての競争力を失う恐れもある。データ容量の改定など、対抗策にも期待したい。
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