スマホの「バッテリー交換」を簡単にする動きは“良しあし”両面ありMobile Weekly Top10

» 2023年11月18日 11時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 ITmedia Mobileにおける1週間の記事アクセス数を集計し、その上位10記事を紹介する「ITmedia Mobile Weekly Top10」。今回は2023年11月9日から2023年11月15日までの7日間について集計し、まとめました。

バッテリー交換 「バッテリー交換しやすい設計」にも“良しあし”があります(写真はXperia 1 Vの分解モデル)

 今回のアクセス数の1位は、EU(ヨーロッパ連合)が進める指令に基づく「バッテリー交換の容易化」がもたらす影響を考察した記事でした。

 EUに加盟する国は現在27カ国あり、加盟国は独立を保ちつつも「共通政策」を実施しています。その共通政策の1つとして2020年に定められたのが「電池(バッテリー)規則」です。この電池規則は主に「バッテリー類の生産からリユース/リサイクルまでのライフサイクル」について細かく定めているのですが、規制の中に「バッテリー駆動に対応するデバイスにおける交換の容易化」も盛り込まれています。

 この命令に基づき、EU加盟国で販売されるバッテリー交換対応デバイスは、2027年までにバッテリーの交換を“簡単に”できる設計にする必要があります。EU加盟国は27カ国ですが、ヨーロッパのEU非加盟もこの規制を準用するため、この規制に対応できないと「ヨーロッパ市場を失う」ことになってしまいます。

 EU指令に基づく仕様変更というと、Appleが「iPhone 15シリーズ」からメーカー独自のLightning端子を廃止して汎用(はんよう)規格であるUSB Type-C端子に移行したのも、EUが定めた「無線機器指令」に対応するためです。

 このUSB Type-C端子の“強制”も、バッテリー交換の容易化の“強制”も、消費者保護の観点で行っているものです。ただ、この“強制”が技術的な革新を妨げるのではないかという意見がないわけでもありません。

 スマートフォン(あるいはタブレットやPC)においてユーザーによるバッテリー交換に“対応しない”モデルが増えたのは、スリム(薄型)化とバッテリー容量の拡大という「二律背反」なニーズに応えるためという側面があります。ユーザー(≒素人)に交換させないことで、ある種の技術革新が進んだともいえます。

 バッテリー交換を容易な設計にするということは、ユーザーが“安全に”交換できることが大前提です。簡単そうに思えるのですが、安全性を確保しようとするとバッテリーモジュールに一定の強度が求められるため、厚みがどうしても増してしまいます。また、本体内の配線や部品配置にも一定の制約がかかるので、設計の自由度が低くなってしまいます。

 いわゆる「SDGs」あるいは「サスティナビリティー」を重視する場合、EUの命令は良いことなのですが、一定のデメリットもあります。本当に悩ましいですね……。

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