最近では、Googleが当初「Pixel 8 Pro」にのみ搭載するとしていたGemini Nanoを、Pixel 8に拡大した事例もある。同社は当初、Pixel 8にGemini Nanoを搭載しない理由としてメモリ容量の違いを挙げていたが、ユーザーの声を受け検証を開始。最終的には、Pixel 8への対応を決定している。これも、当初は費用対効果を踏まえて搭載のための検討を見送っていた可能性がある。
Galaxy S24/S24 Ultraに搭載されたGalaxy AIは、1年前のハイエンドモデルに適用されたものの、ミドルレンジモデルの対応はスペック的な理由でかなり厳しくなりそうだ。仮にGalaxyのブランド力を向上させる観点で何とか対応したとしても、クラウドでの処理が中心になり、リアルタイム性を求められる機能は除外されるだろう。Gemini Nanoを使うようなオンデバイスAIは、その傾向が特に強い。
実際、GoogleもGemini NanoをPixel 8 ProからPixel 8に広げる方針を打ち出した一方で、「Pixel Fold」を含むPixel 7シリーズ以前のモデルには一切言及されていない。また、Pixel 8 Proのみが対応している「動画ブースト」も、他の端末は未対応。この機能は、動画の処理にクラウド側のAIを活用しているが、GoogleはTensor G3の処理を掛け合わせていると説明している。こちらも、Gemini Nano同様、端末の処理能力が一部影響しているとみていいだろう。
これまでスマホは、カメラやディスプレイによって差別化を図ってきたが、オンデバイスの生成AIの登場により、その構図が徐々に変わりつつある。日本市場でPixelがヒットを飛ばし、シェアを急上昇させた一因も、AIで既存のスマホとの違いを全面に打ち出したからだ(価格戦略や取り扱いキャリアの拡大という要因も大きいが)。Galaxyがその土俵に乗ってきたことで、Geminiの採用がウワサされるiPhoneも含めた“AI競争”がさらに進む可能性は高い。
ここで重要になってくるのが、端末の処理能力だ。最新のハイエンドモデルの方が、使い勝手のいいAIが搭載されていたり、その処理が圧倒的に速かったりすれば、端末の買い替えを促せる。やや持て余し気味だったプロセッサの処理能力を引き出し、いかにAIで新しいユーザー体験を生み出していけるかが重要になるというわけだ。一方で、最適化の手間やコストもかかるため、最新機能を適用する端末を最新機種に限定するメーカーも増えてくるだろう。PixelやGalaxyの事例は、それを示唆している。
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