ここまでの話で、一見すいているように見えるキャリアショップが、思っている以上に“いっぱいいっぱい”であることが分かった。
予約なしで訪れた客に対応したくても、対応できない――このような状況だが、それでも来店予約のない客に来てもらいたいのだろうか。最初に質問した店員はこう語る。
本当は予約なしの来店をもっと受け付けたいです。予約をしていただいた方が用件も分かるので準備を整えやすく、楽なのは事実です。ただ、困って来店したお客さまを(受け付けられないと言って)帰してしまうのも、心苦しいんですよね……。
もう1人の店員はこう語る。
アフターサポート業務だけでなく、飛び入りで入ってきたお客さまにスマートフォンを売ったり、料金プランを提案したりする“余裕”がほしいです。端末の販売やプランの獲得の実績も見られるわけですが、アフターサポートに忙殺されてしまうと、業績面ではつらいのが正直なところです。飛び入り来店に対する営業や提案が決まったときの気持ち良さは、もっと日々の対応の中にほしいなって考えてしまいます。
コロナ禍を経て多くの手続きはWeb、または電話を通して行えるようになった。しかし、今でもキャリアショップまで出向かないと手続きは存在する。キャリアショップを頼ってやってきた客に対応できない状況に、スタッフも申し訳なさを感じている。
一方で、キャリアショップには「販売店」としての役割もあり、契約の獲得が求められる。予約客“だけ”を対応しているとその目標達成も危ういという実情も明らかとなった。だからこそ「予約なしでの来店歓迎!」という掲示もなされるのだろう。
以前の連載記事でも少し触れたが、今回2人のキャリアショップ店員に話を聞いて、筆者はキャリアショップの“在り方”を抜本的に見直す時期が来ていると改めて感じた。
そもそもの携帯電話販売店が少ない地域では、キャリアショップが販売店として担う役割は非常に大きい。逆に、都市部のように携帯電話を取り扱う家電量販店や併売店が多く存在する地域では、キャリアショップは販売店というよりもサポート窓口としての役割が大きくなる。
同じキャリアショップでも、所在地によって求められる機能が異なる以上、一律の基準で評価することから見直した方がよいのではないだろうか。立地する地域の実情に則した評価ができるようになれば、人員不足の改善が進み、カウンターの回転率を改善しやすくなるかもしれない。
最後に、キャリアショップが予約なしの客を帰してしまうのは、決してスタッフによる怠慢ではないということも覚えておいてほしい。
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