―― ファミリーシェアからの移行を促進する狙いもありそうですが、今どのぐらい残っているのでしょうか。
亀井氏 プランごとの細かな内訳は出していませんが、旧プランがまだ10数万ほど残っています。その3割、4割ぐらいがファミリーシェアプランです。既に受注停止にはしていますが、SIMの追加やプラン変更はできます。クローズしたい気持ちはあるものの、ファンもいてそれもなかなか……。
―― でも、金額的にはギガプランを複数回線持った方が安いですよね。
亀井氏 安いです。ただ、お手続きが面倒というだけなのだと思います。実際、私の友人でもいますが、「何で変えてくれないの?」と聞いたら、最初に手続きしたときで十分安かったから……と言われてしまいました(苦笑)。
矢吹氏 自分自身もそうですが、電気が自由化したときに、調べれば調べるほどよく分からなくなってしまい、結局、今でも東京電力から変えていません(笑)。果たしてそれに変えると、自分の家の電気代が安くなるのかが分からなかったからです。多分、これは業界全体の問題なのかもしれませんが、携帯電話も結局どれだけ安くなるのかが、分かりづらいのではないでしょうか。MVNOの場合、昼の品質問題はありますが、料金は確実に安くはなります。その中での比較となると、結局どれがいいのとなってしまうのかもしれません。
―― 最後の長期利用特典は、ガイドラインで昨年までできなかったことですね。
亀井氏 はい。ただ、ギガを配れと言っても、3GB、4GB、5GBと出すわけにはいかないので、ちょっと足りないときに使ってもらえるようなものを考えました。これをきっかけに上のプランにしてもらいたいと欲を出してもよかったのかもしれませんが、それはないかということで今の形になりました。
オプションサービスの割引も以前はありましたが、これも今回はなしにして、手数料の割引やギガの付与に絞っています。
―― 初期費用の割引というのは、これをフックにして家族での契約につなげるという狙いもあるのでしょうか。
亀井氏 はい。まだまだ複数回線契約は少ないですからね。契約を家族内で分けているのかもしれませんが、ギガプランの4分の1程度しかいません。ちょっとずつ増えてはいて、アプリでシェアしやすいようにもしていますが、長期利用特典が切り替えるきっかけになればと思っています。今後は、訴求の仕方も変えていきたいですね。
―― 大手3キャリアでは家族で契約があると解約を抑止できるという話がありますが、これはMVNOも同じでしょうか。
亀井氏 ありますね。IIJmioでも、光回線をご契約している方の解約率は低くなっています。
―― SIM交換や再発行手数料も無料ですが、これはeSIMへの機種変更を想定しているのでしょうか。
亀井氏 はい。再発行時のSIMプロファイルの発行手数料は220円や433円かかりますが、音声通話SIMから音声eSIMへ形状変更するようなときの2200円が無料になります。これがあると機種変更のときに、他社に行ってしまうきっかけになるからです。eSIMに変えたいという人から2200円取るのはちょっと違うのではないか。こういうものがあれば、長く使っていただけると思います。
―― 既に端末の優待は実施中ですが、家族割引は秋、長期利用特典は冬と、時期がずれています。これはどのような理由でしょうか。
亀井氏 家族割引は4月からキャンペーンをやっていたのですが、すぐに始めるとかぶってしまう人が出てきます。キャンペーンからサービスへと切れ目なく続くようにしたかったので秋になりました。これが家族割引の事情です。
手数料無料やギガの付与は、開発の順番的なことが関係しています。家族割をするにあたっては、矢吹が申し上げたように名義変更をきちんとできるようにしたいということもありましたが、プロモーションの観点で、先にお伝えしています。
矢吹氏 開発の関係もあってリリースのタイミングは異なりますが、お客さまにどう還元していくかをストーリーでしっかり見せたいことが背景にあります。長期特典は慎重に作らないと誤ったルールを適用してしまうミスもありうるので、そこはしっかり時間をかけて作ることにしました。
既存契約者への優遇が可能になったことを受け、端末割引や家族割引を3点セットとして打ち出したのがIIJmioご愛顧感謝特典だ。端末割引や家族割引は以前のガイドラインでも実現可能だったが、あえて長期利用特典の再導入とタイミングを合わせて認知度向上を図っていることがうかがえる。新規契約の獲得を増やすほどの大きなメリットはないものの、ユーザーの定着を促進し、解約率を下げる効果はあるはずだ。
ただ、家族割引が同一支払いのグループだけという点はやや気になった。共働きの家庭などで、同居しながら携帯電話代の支払いを分けているケースもある。矢吹氏も話していたように、この点は課題の1つといえそうだ。クーポンに関しても、対象者のみで額も一般には公開されていないため、やや盛り上がりに欠ける印象を受けた。ユーザーに認知してもらうためには、プラスαの仕掛けも必要になりそうだ。
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