JR西日本のe5489は、インターネットのe、御予約の「5489」を語呂合わせしたという、いかにも関西に本社を構える企業らしいネーミングだ。
先述のえきねっとと同様、駅に行かなくても、自宅やスマートフォンで座席などをゆっくりと選べることをセールスポイントにしている。JR西日本は「IC(交通系ICカード)やチケットレス乗車であれば、乗車前のきっぷの発券も不要となり、スムーズにご乗車いただけます」と強調している。
さらにえきねっとと大きく異なるのは、予約できる範囲が広いこと。山陽・九州新幹線新大阪―鹿児島中央間、西九州新幹線武雄温泉―武雄温泉間、北陸新幹線東京―敦賀間をはじめ、JR西日本・四国・九州エリアの特急列車(一部の快速列車含む)、JR東海・東日本の一部エリアの新幹線・特急列車などにも対応している。
ログインしない、購入しない形でJR西日本のe5489にアクセスする。新規予約にクリックすると、「リストから選択」「駅名を入力」の2種類がある。
「リストから選択」をすると、10種類の中から選択する。試しに「奈良/加茂⇔天王寺/新大阪/大阪[通勤特急/うれシート等]」を選択し、乗車駅を新大阪、降車駅を奈良(駅名は快速停車駅のみ表示)、乗車日を2024年10月28日(月曜日)、出発する時間帯を19時00分に選択すると、いくつかの候補が表示される。
新大阪19時43分発、全車指定席の通勤特急〈らくラクやまと〉奈良行きには、きっぷは6種類表示され、全て「〇」表示なので購入可能を表す。JR西日本はチケットレス系の特急券を選択すると、通常期および繁忙期のA特急料金を割引した価格で購入できる。
【訂正:2024年10月23日10時40分 初出時、「e5489」のサービス名に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
主ななものを取り上げると、「通常のきっぷ」は新大阪―奈良間の乗車券950円、指定席特急券1730円を合計した2480円で発売。
特急券のみ購入できる「eチケットレス特急券」(J-WESTカード会員専用の特急券で詳細は後述)は1090円、「チケットレス特急券」はA特急料金の閑散期と同額の1530円で発売。特に前者は大幅割引をアピールすることで、会員の増加や列車の誘客につなげたいのだろう。
きっぷを決めた後、会員登録しなくても、名前、電話番号、メールアドレスを予約すれば購入できる。ネット予約に不慣れな方、ネットの操作に戸惑う場合がある方にとってはありがたい。
「駅名を入力」では、乗車駅から降車駅までの乗車券を購入する。試しに2024年10月27日(日曜日)5時00分出発、新大阪から下関までを選択。さらに「詳細な検索方法」をクリックし、乗換駅を指定する。
ここで困ったことに直面する。えきネットと同様、最大3つまでしか表示しないのだ。例えば、新大阪から山陽新幹線に乗り、新下関で山陽本線に乗り換える場合は簡単に買える。しかし、経路は割愛するが、最長片道きっぷなみのジグザグルートの乗車券が買えないのである。
考えられる理由は2つある。1つ目はジグザグルートの乗車券を買う人がめったにいないこと。2つ目はみどりの窓口でも発券に時間がかかることだ。経由地も全て印字できず、係員が手書きで補筆する。
なお、JR西日本の「Aシート」「うれしート」の指定席券には「通常の指定席券」「チケットレス指定席券」があり、通常の指定席券はe5489、みどりの券売機、全国のみどりの窓口で購入できる。チケットレス指定席券はe5489でのみ購入でき、みどりの券売機とみどりの窓口で購入できない。
近年はJR西日本もチケットレスサービスに力を注いでいる。
「J-WESTチケットレス」は関西圏の特急を中心に展開しているもので、スマートフォンの画面が指定席特急券代わりとなる。
例えば、米原―新大阪間の通常期は2390円を要するが、チケットレスサービスを利用すると1450円で、大幅に割り引かれる。ちなみに同区間の新幹線指定席特急料金の通常期は3060円で、時間がかかる分、低廉な料金でカバーする。
「eチケットレス特急券」はJ-WESTカード会員専用の特急券で、会員外でも購入できる「チケットレス特急券」とは、かなり差をつけている。
例として、新大阪―和歌山間を挙げると、普通車指定席のeチケットレス特急券は1090円、チケットレス特急券は1530円となる(右記の閑散期料金と同額)。通常期は1730円なので、割り引いていることが分かる。
新幹線接続の重責を担う快速〈マリンライナー〉にも適用され、eチケットレス特急券だと指定席210円、グリーン車470円。チケットレス特急券だと指定席330円(きっぷだと通常は530円、日によって330円)、グリーン車1000円(きっぷと同額)である。
いずれも乗車日当日の購入も可能で、急用などでの利用が容易にできる。
気になる点を2つ挙げよう。
1つ目はチケットレス特急券がほとんど割り引いていないこと。JR西日本はコロナ禍による大減収で、廉価なB特急料金を全廃して、A特急料金に一本化した。さらには一部の特急で全車指定席化に踏み切った。せめてeチケットレス特急券並みとはいかずとも、B特急料金に値引きにしてもよいのではないだろうか。
2つ目は山陽新幹線と在来線特急の乗り継ぎに関したチケットレスサービスがない。今後はえきねっとなども含め、チケットレスサービス限定で乗り継ぎ割引(2024年3月16日〔土曜日〕のダイヤ改正で全廃)を復活させるなど、より利用しやすい体制の構築を願いたい。
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