2025年3月5日、Opensignalは、KDDIに対して通信品質世界1位のトロフィーを手渡した。同調査は6部門に分かれているが、そのうちKDDIは3部門(音声アプリ・エクスペリエンス、ゲーム・エクスペリエンス、信頼性エクスペリエンス)でトップを獲得していた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年3月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
トロフィーを受け取ったのは松田浩路次期社長。松田氏は「ユーザーにいかによい品質を届けるかということをこれまでもずっと取り組んできた」と語った。
ここ数年、Opensignalが各キャリアのネットワーク品質を調査し、評価を公開。メディアがこぞって取り上げたことで、Opensignalの結果を各キャリアが意識するようになった。
そんななか、MWCの会場では「Opensignalってどうなのよ」という声が他キャリア関係者から聞こえてきた。調査方法は「公平なのか」という指摘だ。
関係者によれば、Opensignalの調査は、実はキャリア単位ではなく「ブランド別」なのだという。KDDIの場合、「au」と「UQモバイル」は別のブランドとして調査対象となっている。確かに今回の世界1位の表彰は、KDDIではなく「au」として受賞している。ただ、「つながる体感No.1」の広告を見ると「UQモバイル/povoもau回線を使用」という表記になっている。
「ブランド別」という調査ということで、NTTドコモの場合はeximo、ahamo、irumoはいずれも「料金プラン」なので、すべてまとめて調査対象ということになる。irumoの場合、0.5GBや3GBといった小容量ユーザーが多く、自ずと大量にデータ通信を利用しない人ばかりとなる。結果として、体感調査で好成績が出にくいということが生じているようだ。
また調査の対象となるスマートフォンはAndroidがほとんどだとされている。iPhoneであれば、4キャリアで公正性は保たれるが、Androidばかりだと、らくらくスマートフォンやエントリーモデルの比率が高いと、やはり通信速度が出にくいということになりがちだ。
結果として、どんなにネットワークを強化しても、Opensignalでいい成績が獲れないというわけだ。
一方で、Opensignalがもてはやされることで、キャリアの中には「Opensignalの調査でいい結果が出やすくなるネットワークチューニング」をするところもある。もはや、過去問を徹底的に解いて受験に臨むような状況になっている。
一度、Opensignalの担当者に「Opensignalの調査方法に合わせた対策を打っているキャリアがあるようだが、それでいいのか」と質問したことがあったが、「結果として、ユーザー体験が向上するのは素晴らしいことだ」との回答であった。
KDDIは9.4万局の5G基地局があるなか、そのうち3.9万局がSub6であり、すべて5G SAでの運用となっている。Sub6も2ブロック、かなり近い場所にあるため、通信速度の向上につなげやすい。周波数帯的にはしばらくKDDIの天下が続きそうなだけに、他キャリアがOpensignalとの距離をどうしていくのか、見守っておくとよさそうだ。
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