携帯電話ショップの複数の店員によると、iPhone 16eが発売された後“意外なこと”が起き始めたようだ。
iPhone 16e、予約がからっきしダメだったので発売後も売れないのかなと思っていたんです。しかし発売すると、じわじわと売れ始めました。春商戦期という“追い風”もあるとは思いますが、当初の想像よりは数が出ています。
最新のiPhoneを求めている人は、それこそ毎年秋に発売される新型iPhoneを「1分1秒でも早く手するんだ」と発売日に手に入れられるように頑張ります。しかし、iPhone 16eってそういうニーズに応えるための機種じゃありません。
iPhone 16eを店頭に並べてみると、お客さまから「このiPhoneは何?」と聞かれることが増えました。そこから説明してみると、販売につながることが意外と多いです。
「できるだけ長く使えるやつ(スマートフォン)が欲しい」というお客さまの希望に対して、「iPhone 16eなら、充電端子がUSB Type-Cで、これから始まる『Apple Intelligence』にも対応しているので、長く使えますよ」と説明すると意外と“刺さる”ことが分かりました。
もちろん、「常に最新を求めている人」「買い替え頻度が高い人」「さらに先の買い換えまで視野に入れている人」には響かない説明ではあるのですが、そこまで考えていないお客さまはとにかく長く使えて手頃という点を前向きに捉えて買って行く傾向にあります。
予約が不調だったことから冷ややかな印象を抱いていたという店員も多かったが、ふたを開けてみるとiPhone 16eの販売台数が徐々に増えていることは共通しているようだ。販売につながった際のトーク例を店員で共有したら、売れ行きがより良くなったとの声もある。
だが、以下のように“厳しい声”もある。
全く売れてないというわけではないのですが、「やっぱり他のiPhoneと比較して……」ということでiPhone 16eが選ばれないことも結構あります。
「とにかく安く!」といったコストパフォーマンス重視なお客さまにとっては、旧モデルだったり、iPhone 15/16向けのキャンペーンの方が魅力的に見えてしまうんですよね。店としては昔と違って「1台売るのも大変な時代」なので、iPhone 16eだけを持ち上げるわけにもいきません。
「将来的にApple Intelligenceみたいな革新的な機能が使えるようになる」というように、iPhone 16eは長く使える1台としてお勧めはしやすいんですよね。ただ、日本での対応は4月以降となる予定でまだ使えません。“予定”なので、さらに延びる恐れもあります。ゆえに、iPhone 16eのメリットとして訴求しづらい面があるんですよね……。
そうなると、訴求ポイントはどうしても「価格」が強くなってしまい、ゆえに旧機種の特価販売の方がお客さまには魅力的ということになるのです。
意外と「MagSafeに対応していない」「カラーバリエーションが微妙」といった声が寄せられるんですよね。
最近は「iPhone 12シリーズ」「iPhone 13シリーズ」からの買い換えを検討するお客さまが増えているのですが、これらのシリーズでMagSafe対応の充電器やアクセサリーを使っているというケースも多いのです。「一応、対応するケースを付ければ使えますよ」とは案内しますが、それなら同時に「非接触充電は遅くなる可能性があります」ということも一緒にお伝えする必要もあります。そうなると「それならiPhone 15(16)にするよ」ということにもなりがちです。
あと、カラーバリエーションも白黒の2色だけというのも案外マイナスです。これも「ケースをつければ」とは言いますが、それでも「好みのカラーの本体を選びたい」というお客さまは案外多く、結果として他のiPhoneを買うパターンも多いです。
iPhone 16eが発表されて以来ずっと言われてきたことだが、機能や仕様において「なぜそこを削った?」という部分や「まだ使えない(生かせない)もの」が販売面で“足かせ”になっている様子が伺えた。
販売面では複数のキャリアで「より安くなる施策」が用意されているものの、既存モデルの特価販売を提案しないわけにもいかず、それを考慮に入れるとiPhone 16eの「手頃な価格」というメリットを生かせないという課題もある。
iPhone 16eの販売は、このような“悩ましさ”を多く抱えている。
iPhone 16eに対する店員や来客の反応を見聞きする限り、iPhone 16e自体は最新モデルを求めない層には十分に売り込めるポテンシャルがあると感じた。予約はパッとしなかったのに予想以上に売れて、いまだに売れ行きが伸びているというエピソードがその証左といえる。
しかし、複数の店員から指摘があったように、現時点でApple Intelligenceが使えないことがマイナスの影響を及ぼしていることも明らかだ。店頭で「前の機種よりも、ここがすごいです!」と言い切れないことによる販売機会の損失は、それなりにある。
新機能をアピールできないとなると、残されるは価格勝負ということになる。しかし、「今使える機能での比較」で比べてしまうと、販売施策も含めてると、他機種に比べコストパフォーマンスが悪く映ってしまう。
iPhone 16eは、事前に言われた「売れない」という状況は現時点でも覆せているが、さらに売れるには足かせもある。Apple Intelligenceが4月に予定通り日本国内でも利用できるようになれば、Appleの狙い通り「AI機能を十分に使える、新世代のiPhoneのスタンダードモデル」と訴求しやすくなる。そうすれば、iPhone 16eはたちまち人気モデルになるだろう。
「iPhone 16e」の価格が出そろう Appleと4キャリアで最安はどこ? 一括価格と実質負担額を比較
「iPhone 16e」にまつわる7つの謎 「e」の意味は? LTE対応バンドはなぜ減った? Appleキーパーソンに聞く
「iPhone 16e」発表、A18チップ搭載、128GBモデルが9万9800円から 廉価なiPhone SEの“実質的な後継モデル”に
新しいPixelやiPhoneは“売れていない”? 店員が語るその理由
売れた? 売れなかった? ショップ店員に聞く2022年の「新型iPhone商戦」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.