赤迫氏は、日本語に関連して、サムスン電子の音声アシスタント「Bixby(ビクスビー)」も例に挙げ、一見単純に見える動作でも、複雑な処理を行っていることや、他の音声アシスタントにはない「Bixbyの強み」を説明した。なお、日本語には2025年2月12日から対応しており、既に日本語による指示と回答が可能だ。
音声アシスタントでは、ユーザーの発話を認識し、その意図を理解した上で適切なタスクを実行し、最後に結果を音声として返すという一連の流れで動作する。このプロセスを実現するために、音声認識、言語理解、タスク実行、言語生成、音声合成といった複数のコンポーネント(≒構成要素)が連携して機能している。
ユーザーが「ランニングの記録を返して」と発話した場合、音声アシスタントはまず音声認識エンジンを用いて、その発話をテキストに変換。次に、このテキストを言語理解(Natural Language Understanding, NLU)が処理する。テキストの意味を解析し、ユーザーの意図をくみ取り、ユーザーはランニングの状況を知りたいのだろう、とシステムが理解する。
次は、いよいよタスク実行フェーズへと進む。ここでは、指示の内容から適切なタスクを選択し、実行する。今回の例では、「Samsung Health(サムスン ヘルス)」を起動し、その中の「ランニング記録を表示する」という機能を実行する。
さらに、その結果を言語生成(Natural Language Generation=NLG)のコンポーネントが処理する。ここでは、実行結果をBixbyの回答としてふさわしい形に変換し、「ランニング記録は何キロで、タイムは何分です」というように、ユーザーにとって分かりやすく、指示に適したテキストとして整える。
最後に、言語生成されたテキストを音声合成エンジンで音声に変換し、ユーザーへ返答する。こうした流れをへて、音声アシスタントBixbyは適切な応答を提供する。
Bixbyの開発チームは2023年11月に発足し、それと同時に日本語対応の開発が本格的に始まった。実は、このBixbyでも「通訳機能と同じ音声認識エンジンと音声エンジンが使用されて」おり、同じ技術を活用することで「開発の効率化」が図られるという。ただ、オンデバイスAIである通訳機能などとは異なり、クラウドベースで動作し、多くの処理がクラウドを介して行われている。
Bixbyがサポートするタスクは「大きく分けて2つある」と赤迫氏は説明する。1つは、デバイスの機能を活用するもの。電話の発信、メッセージの送信、設定の変更といった基本的な機能に加え、サムスン電子のアプリ(サムスンヘルスなど)との連携も含まれる。もう1つは、クラウドサービスを利用するもので、天気やニュースの取得、Netflixの操作など、インターネット上のサービスと連携するタスクに当たる。
Bixbyは、単なる音声アシスタントではなく、具体的なタスクを実行することに重点を置いていることがうかがえる。赤迫氏は、「人がノートに何かを書いて、それを誰かにメッセージする流れ」に似ていると説明し、ただ単にスマートフォン向けのアプリを起動するだけでなく、各アプリが持つ細かい機能まで直接呼び出せる点が大きな特徴だと強調した。
サムスン電子に関連するサービスとの密接な連携が可能な点もBixbyの強みだという。赤迫氏は「Samsung Walletとの連携を終えたばかりだ」と、直近の具体的なアップデート内容を紹介した。サムスン電子のGalaxyデバイス(ハードウェア)とソフトウェアの双方に最適化されており、ひいてはサムスン電子がハードウェアとソフトウェアの両方のエコシステムを保有しているからこそ、複雑なタスクでも実行できるといえる。
Bixbyは既に「Samsung Wallet」と連携するためのアップデートを完了している。Samsung Walletは、2015年に一部の国/地域で「Samsung Pay」として提供が開始され、2022年にデジタルパスサービス「Samsung Pass」を統合して現在の名称となり、2024年時点で30カ国で利用できる。日本では、2025年1月から利用可能になった
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