このように、ソニーのXperiaは紆余(うよ)曲折をへて、現在に至っている。では、ソニーがスマートフォン事業を縮小しても、撤退しないのはなぜだろうか。
理由の1つは、自社で通信技術を持ち続けるためだ。ソニーは以前から、5G時代にはモバイル通信の重要性が高まると見ており、そのためにスマートフォン事業を続けると説明している。
実際、2024年には「PDT-FP1」という、5Gでカメラなどと高速通信できる機器を発売しており、スマートフォン以外でもモバイル通信の技術を活用している。Xperiaシリーズが、そうした開発の基盤になっているのは間違いない。
もう1つの理由は、Xperiaがカメラの技術をアピールするツールでもあるからだ。複数のピクセルを束ねて感度を向上させるピクセルビニングは、2022年の「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」で採用され、イメージセンサーはソニー製だった。
Xperiaのカメラにピクセルビニングを採用したのは、2023年発売の「Xperia 5 V」からだった。ソニーは他社製品でカメラの技術を世界にアピールし、それをフラグシップモデルのXperiaに実装する、という逆輸入の流れを作った。
ソニーグループの2024年度のイメージング&センシングソリューション分野は、売り上げが1963億円(12%)の増収、営業利益が676億円(35%)の増益となり、好調を維持している。モバイル機器向けのイメージセンサーも増収増益となり、同分野の成長を支えている。
イメージング&センシングソリューション分野は好調であり、Xperiaはその最先端センサーのショーケース的な存在となっている。実際、Xiaomiをはじめとする他社もソニー製センサーを採用していることを前面に押し出しており、Xperiaが高性能カメラの技術力を市場にアピールする役割を担っている。
では、新モデルXperia 1 VIIは、出荷台数シェア回復の起爆剤になり得るだろうか。動画撮影時に被写体を捉え続けるなど、目玉の新機能はあるが、この1モデルのみで状況を一変するのは難しいだろう。鍵を握るのは「Xperia 10」シリーズの新モデルだ。
例年なら、1シリーズと同時期にミッドレンジモデルのXperia 10シリーズも発表していたが、「市場動向や社内開発状況を総合的に判断した」とし、2025年秋頃に投入する予定としている。中価格帯でいかに魅力的な選択肢を提供できるかに注目したい。
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