―― 音声接続の準備も進んでいます。日本通信は既にドコモと合意が取れ、準備を進めていますが、IIJではいかがですか。
谷脇氏 どうですかね(笑)。ただ、われわれの基本はデータ通信だと思っています。何とも申し上げられないところですが、他社と同じことをやるかというと必ずしもそうではありません。
―― 音声にはあまり興味がない、と。
谷脇氏 ないとは言いません。ただ、私自身もほとんど携帯で電話をしない。どちらかと言うと、皆さんメッセージやビデオ通話になっているのではないでしょうか。
―― ただ、もしものときのために電話番号を維持しておきたいというニーズはあると思います。
谷脇氏 自分のトラストアンカーとして音声通話できるデバイスを持っていれば、非常時も使える。それはありますし、その重要性を否定するものではありません。一方で、IIJは、Dittoという会社にも出資をしていますが、この会社は携帯電話のネットワークが完全に遮断されてしまったときでも、端末間でデータ通信ができる技術を開発しています。災害時であっても、データがすぐにシンクロされる。こうした新しいものへの挑戦は引き続きやっていきます。
われわれ自身でやっていることでいうと、PS-LTE(IIJ公共安全モバイルサービス)もやっています。災害時に行政などの役所の人たちや、警察、消防の人たちとつながる回線で、ドコモが切れたらau回線というように、複数回線を利用できます。災害時は音声接続が大事で、優先通話ができなければなりませんが、それも確保しています。能登半島地震でも使っていただけたので、これも広げていきたいですね。
―― 4月に社長に就任されましたが、改めて経営方針をお話しいただけないでしょうか
谷脇氏 これは社長就任前から申し上げていたことですが、前の体制におけるコアビジネスには一切変更がありません。ネットワークビジネスとシステム、ソリューションを車の両輪としてやっていきます。SIは開発事も運用をしていくストックビジネスなので、ネットワークと合わせてどんどん積み上げていきます。これは引き続き大事にしたいと考えています。
ただ、今までのビジネスモデルだけではダメで、新しいことをやっていかなければなりません。だからこそ、データ流通だったり、経営層に響くセキュリティだったりと、もう一度イノベーティブなものを作るためのプロジェクトチームを発足しました。事業者は、必ずどこかで転換点を迎えますが、そのときになって慌てるのではなく、事業モデルを変えなければいけないときのために成長点を作っておく必要があります。データビジネスがすぐにもうかるかどうかは分かりませんが、チャレンジしていかなければいけないと考えています。
―― モバイルに関してはいかがですか。
谷脇氏 まだまだ新しいものを掘り起こしていきたい。そこに尽きます。ようやくそういう芽が見えてきた気がしているので、モバイルのマーケットをもっとにぎやかにしていきたいですね。一般のユーザーも含めて選択の幅を広げていきたいと思います。ただし、繰り返しになりますが、それはわれわれのアイデアだけではダメで、コラボレーションをどうやってモバイルの世界に持ち込んでいくかです。
大手通信事業者の料金値下げに押されている感もあったがMVNOだが、JALモバイルのヒットは、掘り下げ方次第でまだまだユーザーに響くモバイルサービスが作れることを証明した。谷脇氏によると、むしろこれからが本番。法人向けだけでなく、個人向けでもコラボレーションを強みに挙げていたように、今後、IIJから続々と新サービスが出てくるようになる可能性もある。MVNOの制度やビジネスを熟知した谷脇氏が社長を務めているだけに、そこへの期待感はいやが上にも高まりそうだ。
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