―― 先ほど事例としてJALモバイルのお話が出ましたが、モバイルにノウハウがない企業にとっては、あの形の組み方の方が気軽に参入できるような気がします。
谷脇氏 そうだと思います。ありそうでなかったのがJALモバイルですが、ああいった形の方が入りやすいと思います。
―― JALモバイルのような座組を増やせる体制を作っていくというお考えはありますか。
谷脇氏 新しく体制を作ってということではないと思っています。JALモバイルも含めて、今までそういったお話がなかったところからも相談をいただいています。JALモバイルが出てくるのであれば、もっと違う形もあるのではないか。これは今の体制の中で考えていきます。
―― あのサービスが呼び水になっている側面もあるということですね。
谷脇氏 そうなってくれることを期待しています。そこは本当に期待しているところです。
―― “素のIIJmio”については、どのように位置付けているのでしょうか。
谷脇氏 もし音声の携帯電話の世界がずっと続いていたら、IIJmioはなかったかもしれません。インターネットの会社で、かつ携帯電話がスマホというコンピュータに変わり、インターネットの世界にどうアクセスするかという中で、アクセス手段を持ってもらうために生まれたのがIIJmioです。
つなぐことはもちろん大事ですが、つながった上にどういったサービスが提供されるのか。いろいろなものが、クラウドのようなネットワークの“向こう側”にどんどん移行しています。データの流通だけでなく、コンピューティングやパブリケーションも向こう側に行っている。そういったものへの橋渡しとして、IIJmioをやっている意味があります。
実務的なことでいえば、法人向けと個人向けは使われる時間が違いますので、設備効率としては2つを合わせると高めに捉えることが可能になります。(個人用を頑張るのは)経営効率上も、非常にいいことだと思っています。
eSIMや端末の多様性など、ご意見はなるべく丁寧に拾っています。それを評価していただけた結果として伸びているのだとしたらうれしいですね。こういったことは、なお続けていきたいと思います。
―― 波がある個人向けに対して、法人向けは安定して伸びています。ここはどのようなニーズを捉えているのでしょうか。
谷脇氏 秘訣(ひけつ)はIoTです。私が総務省にいたころからIoTははやっていましたが、ここまでニーズが伸びてきたことにはちょっとビックリしています。もちろん、携帯回線以外のものを使うこともありますが、実際には携帯が非常に多い。建設現場での建機の管理や農業での資材管理、工場での機器管理など、非常に多くの利用シーンが出てきています。以前は、「そういうこともあるかもね」という話でしたが、実際に引き合いが出てきている。それが法人モバイルのニーズを高めています。
―― 一方で、IoTにはMNOも取り組んでいます。IIJならではの強みはどこにあるのでしょうか。
谷脇氏 1つあるのは、複数回線を使えることです。ドコモ回線がダウンしたときにau回線に切り替えることができる。それも強みにはなりますが、もう1つ申し上げたいのが協業のパートナー作りです。インターネットがバックグラウンドの会社なので、協業については積極的にやっています。自分たちだけでは通信の外の世界が分からないところがありますが、協業によって通信の世界にとどまらず、ソリューション系の仕事にもアップセルできる形につながっています。入口から出口まで伴走できるのがIIJのIoTビジネス、法人ビジネスの1つの大きな特徴になっています。
料金競争というより、技術的な検証ができるところも強みです。例えば「トライアングルエヒメ」という事業では、かんきつ類の水をどうコントロールするかということをやっていますが、これも県には喜んでいただけました。水の管理で収穫量がこんなに違うのかということは知らなかったので、新鮮な驚きがありました。われわれはベンダーではないので、どの機器を使うかは極めて中立です。お財布の具合と相談しながらこれを使ったらという提案ができますし、Do It Yourself的にお試しもできます。
―― フルMVNOであることも、他のMVNOと比べて強みになっているのでしょうか。
谷脇氏 一定の設備投資は必要になりますが、フルMVNOをやることでサービスの作り込みを自分たちでできるところが相当程度あります。MVNOといえども、シンプルなリセールのような形ではなくなり、他のサービスとの連携も考えられるようになる。そこに差別化や付加価値をつける要素が出てきます。
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