NTT東日本とNTT西日本が9月29日、今後の固定電話サービスの移行計画について発表した。
現在、NTT東西が提供している、メタル設備を利用した固定電話サービス(以下、加入電話)は、設備の老朽化によって2035年頃にはサービスの提供が困難な状況を迎える。また、メタル設備にかかわる技術者の不足も懸念され、コストをかけたとしても現在のサービスレベルを維持するのは困難になるという。
加入電話の契約数は減少の一途をたどっており、ピーク時の1998年度と比較すると、契約数は80%減少。通話の回数や時間は、ピーク時の2000年度から96%減少している。
こうした加入電話を取り巻く環境を鑑み、NTT東西は2035年度までに、光回線やモバイル回線を利用した電話サービスへの移行を促進していく。移行先のサービスは、NTT東西が提供する「光回線電話」「ワイヤレス固定電話」「ひかり電話」の3種類が対象になる。
光回線電話は、光ファイバーを活用した固定電話サービスで、NTT東西が2025年10月1日に全国の「フレッツ光」対応エリアで提供開始する予定。ブロードバンドサービスは付帯しておらず、加入電話からの移行を主目的としている。
ワイヤレス固定電話はNTT東西が2024年4月から提供しており、携帯電話網と接続したターミナルアダプターを介して固定電話を利用できる。こちらはメタル回線での提供が困難なエリアを対象としている。
ひかり電話は、光ファイバーによるブロードバンドサービスとセットで利用できる固定電話サービス。NTT東西は、光ブロードバンドサービスも積極的に提供することで、ブロードバンドの普及拡大を推進する。
2025年10月1日以降、加入電話の契約者が光回線電話とワイヤレス固定電話に移行する際の初期費用(合計2万2880円)を無償とする。月額料金はいずれも、現行の加入電話と同じ1870円(いずれも税込み)。
フレッツ光とひかり電話の初期費用も無償化する予定だが、詳細な時期は追って案内する。また、加入電話からフレッツ光に新たに契約すると、月額料金を一定期間割り引く施策を展開する予定だ。
今後の流れとして、現在加入電話を契約しているユーザーに書面(DM)で電話サービス移行について周知を図り、代替サービスへの移行を提案する。法人ユーザーに対しては、加入電話で使用している端末の交換タイミングを踏まえつつ、移行の提案をしていく。
設備の老朽化が進んでいる一部エリアや、災害によってメタル設備の再敷設が必要なエリアについては、2026年度から、先行して代替の電話サービスへ移行する。都市部においても、光回線が中心で相対的にメタル回線の少ないエリアでも早期以降に努めていく。先行して移行するエリアは、2年間で東西合わせて数万規模での対応を予定している。
加入電話の移行促進に便乗した詐欺も想定されるため、国民生活センターや自治体などとも連携し、詐欺被害を防ぐための注意喚起も行う。NTT東西はユーザーに留意してほしい点として「代替サービスでも現在の電話機はそのまま使えること」「移行にあたっては申し込みが必要だが初期費用は無償になること」「エリアごとのサービス終了時期はNTT東西から書面で知らせること」を挙げる。
NTT東西以外が提供する、モバイル回線を用いた固定電話サービスについては、今後の制度検討状況などを踏まえ、代替サービスとしての提供を検討する。こちらは「特定事業者というよりは、公募をかけていく」(NTT西日本 取締役執行役員 経営企画部部長 黒田勝己氏)見通しだ。グループ会社ではNTTドコモが「homeでんわ」を提供しているが、こうしたサービスが候補になるだろう。
一方で、モバイル回線も万能ではないので、光回線との合わせ技が必要な場所も出てくるだろう。ビルの高層階や地下など、電波の入りにくい場所については「都市部なら、光ファイバーでの対応を進めたいが、光回線も工事的に通りにくいビルもあるので、ワイヤレスも含めた対応を検討したい。レピーターなど、モバイル事業者とも協力しながら、どの階でも疎通できるような環境を確保していきたい」(黒田氏)
公衆電話については、「モバイルを用いた代替サービスを使って提供を維持することの検討を進めていきたい」(NTT東日本 取締役執行役員 経営企画部部長 城所征可氏)とのこと。城所氏は「国民負担を伴い、機器の開発が必要になるので、最小限のコストにとどめる必要がある」との考えを示す。テレホンカードについては「使用できる方法を模索する」とのこと。
NTT東西は、現在1000万ほどに上る加入電話の契約者を、約10年かけて巻き取っていくことになる。移行完了時期は「2036年3月」を見込んでいるが、連絡がつかなかったり移行を拒否したりする契約者も想定されるため、「どのお客さんが残るかは見通せない」(黒田氏)のが実情だ。ただ、メタル回線の保守物品は「2035年頃には不足するとシミュレーションしている」(黒田氏)ため、取りこぼしはできない状況でもある。移行に向けて、NTT東西は難しいかじ取りを迫られているといえそうだ。
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