ディスプレイのアスペクト比の変更理由について話す市野氏。この判断は「Xperia 1 VI」でアスペクト比を変更した際と同じ理由によるもので、スマートフォンで縦動画や縦向きのSNSを見る機会が増えている現状を踏まえ、縦方向での視認性を高め、現在主流となっているコンテンツの視聴体験を最大化することを狙ったという―― ディスプレイについてですが、アスペクト比が従来の21:9から19.5:9に大きく変わりました。
市野氏 理由は「Xperia 1 VI」で変更した際と変わりません。よりスマートフォンで縦動画や縦SNSを含め、縦のままコンテンツを見る機会が増えています。その中で縦での視認性を上げること、そして今の時代のコンテンツの主流になっているものの視聴体験を最大化するという意味で、アスペクト比を変更しました。
もちろん21:9の細さが持ちやすいという強みもありますので、1シリーズ、10シリーズ共に慎重にお客さまの反応を見ながら検討しましたが、幸いXperia 1 VIでもポジティブに捉えていただいた方が多かったため、10シリーズのお客さまに対しても同様の魅力になると判断しました。
―― デザインについても、カメラレンズの配置などがガラッと変わりましたね。この理由を教えてください。
市野氏 従来のXperia 10シリーズは、お客さまのライフスタイルになじむシンプルなデザインを心掛けてきましたが、今回はさらにその考え方を推し進めました。造形としてはすごくパキッとした、直線と直線が連なるような形状を目指しています。
カメラと本体をよりなじませる、シンプルさを強調するために、カメラ周りの段差を目立たせず、本体のパネルとなだらかに合わせ込むような処理にしています。また、要素を減らすために背面のロゴなどもあえてエンボス加工にして、主張しすぎないようにしました。
また、横向きにして持ったときに指をカメラの横に置けるようにスペースを設けています。
―― 純正ケースのデザインも変わりました。こだわったポイントはあるのでしょうか。
市野氏 カバーを使われるお客さまが非常に多い中で、カバーと組み合わせたときにもシンプルなコンセプトを実現したいと考えました。また、昨今のトレンドとして、スマートフォンの背面に好きなものを挟んで自己表現するというニーズがあります。推し活だけでなく、お子様やペットの写真、好きなブランドのステッカーなどを挟む方が増えています。
そこで、本体と一体感のあるデザインにしつつ、下半分を少し透過処理にしてグラデーションをかけることで、挟んだものが本体色に溶け込みながら自然に浮かび上がってくるような、自分色に染めていただけるような形を目指しました。
―― 内蔵ストレージが128GBですが、これでも十分とお考えでしょうか。
市野氏 お客さまが実際に使用された後、どれくらいの期間でどれくらいの容量を使われているか弊社でも調査しており、その中では128GBでも現状ある程度収まるというデータは見ています。ただ、アプリの肥大化などのトレンドもありますので、将来的には検討していきます。
また、XperiaはmicroSDに対応しています。他社メーカーでは搭載機種がほとんどなくなっていますが、逆にそれが評価されており、購入の決め手の上位にmicroSD対応が来ています。いざというときにSDがある安心感、データ移行のしやすさも含めて、評価されています。
市野氏によれば、ユーザーが実際に端末を使った際、どの程度の期間でどれほどの容量を消費するのかをソニー側でも継続的に調べており、「現状であれば128GBでもおおむね収まる」ことが分かったという。ただし、アプリの肥大化といったトレンドも進んでいるため、将来的なストレージ拡張については検討していくとしている―― イヤフォンジャックも先代から継承されています。これもニーズがあるのでしょうか。
市野氏 ワイヤレスイヤフォンが普及しているものの、「いざというときに有線でパッとつなげる利便性」を求めるお客さまはいます。5シリーズなどから乗り換える「音にこだわる」お客さまもいますので、無線だけでなく有線のヘッドフォンを使いたいというニーズもあると考えています。
とXperia 1 VII(写真=右)。ワイヤレスイヤフォンが普及している近年でも、依然として有線接続のニーズはあるという
今回の取材を通して、ユーザーの日常に寄り添う実用的な体験価値を磨き上げたXperia 10 VIIが、7〜8万円台という価格帯ながら高い支持を得ていることが分かった。発売直後から品薄が続いた背景には、ユーザーがスペックの数字よりも、価格に見合う便利さや安心感を重視している事情がある。特に、即撮りボタンの搭載や画面比率を19.5:9へ変更した点は象徴的で、縦持ちのまま素早く撮影したり、SNSや縦型動画を快適に楽しんだりする現在の利用スタイルに最適化されている。
プロセッサ性能や8GBメモリ、長期サポートなどの安心感もユーザーの評価につながり、単なる消極的な買い替え需要ではなく、「この機種だから選ぶ」という積極的な支持を獲得しつつある。過剰なスペック競争とは距離を置き、日々の使い勝手と体験の質を高め、ミッドレンジ市場における新たなプレミアムスタンダードを確立しそうだ。
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