ただ、決済手数料を切り出し、5%に設定したことで、外部決済サービスのアプリ内決済は導入の難易度が高くなった。仮に外部のサービスが5%の手数料を課した場合、App Storeの決済を使うのと変わらなくなってしまうからだ。1、2%の差をつけたとしても、開発者が手間をかけて対応するメリットは薄くなる。
逆に外部サイトへ誘導すれば、ストア分の手数料を15%まで抑えられるため、決済サービスの手数料が5%だとしてもトータルで20%になる。全てApp Storeを使った場合の26%よりは手数料を抑えられるものの、現在でも、リンクを張らない外部サイトでの決済自体は提供されているため、開発者がどこまでこの仕組みに乗ってくるかは未知数だ。
一方で、Apple自身も合計での手数料を値下げしている他、特定の開発者向けプログラムに参加していたり、サブスクリプションサービスで2年目以降に突入したりすると、手数料はどの方法を使っても10%と一律になる。これによって、App Store自体の競争力も以前より高くなったといえる。競争促進を目的としたスマホ新法施行直後にいきなり成果が出た格好だが、Appleに挑む相手にとっては、より条件が厳しくなってしまった。
代替アプリストアの提供や外部決済サービスの導入が進んでいたGoogleは、こうした変更が少ない。とはいえ、Googleも「パブリックコメントの提出や数百ページに及ぶ製品情報やデータの提供、さらには幹部を招いて直接説明する機会を得て、新法に準拠するために必要な変更を特定、実装してきた」(デイ氏)。
これによって、Androidにもデフォルトブラウザやデフォルト検索サービスを設定する「チョイススクリーン」が導入される形になった。検索やそれに伴う広告を主力にするGoogleにとって、より影響が大きいのはこちらになる。その反面、この機能はGoogleにとっての武器にもなる。iOS上でChromeのシェアを高め、検索につなげていくことができるからだ。
実際、GoogleはChromeやGeminiのテレビCMを大々的に展開しているが、これはiOSユーザーをターゲットにしたものとみられる。代替アプリストアや決済サービスを既に導入していたGoogleにとって、スマホ新法は“iOSのGoogle化”を狙える追い風にもなるといえる。
iOSにも2020年に登場したiOS 14でデフォルトブラウザを変更する機能は搭載されていたため、機能自体は目新しいものではないが、スマホ新法の規制により、OSアップデート時にSafariを起動するとブラウザの候補が表示されるようになったことで、変更可能なことに気付くユーザーは確実に増える。Androidのシェアを上げていくだけでなく、iOSのGoogle化を狙う動きも、より活発になりそうだ。
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